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魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~

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Epico47楽を嬉で返す

 
前書き
楽を嬉で返す/意:楽しかった思い出のお返しとして嬉しい思い出が作られる、というたとえ。 

 
†††Sideはやて†††

4月8日。今日は新学級が始まる日で、わたしももう5年生や。ホンマに早いもんやねぇ。聖祥に編入して1年かぁ。リンドヴルムとの戦いの印象が強烈過ぎてホンマにあっという間やったわ。朝ご飯を作りながらそう過去を思い返して、そんで未来に思いを馳せてると「おはようございます、はやてちゃん!」シャマルが起きて来た。

「おはようや、シャマル。とゆうことはもう7時か」

平日は基本的に7時起きのシャマル。そんで朝食当番の手伝いをしてくれる。シャマルは自分のエプロンを身に付けて「フライパンとか、洗っちゃいますね」シンクに置かれたフライパンや皿を洗い始めてくれた。

「ただいま帰りました、主はやて」

「我が主。ただいま戻りました」

ジャージ姿のシグナムと狼形態のザフィーラが日課の早朝ジョギングから帰って来たから「お帰り!」シャマルと一緒に挨拶を返す。それからわたしとシャマルとシグナムの3人でテーブルに朝食を用意してると、「はよ~」ヴィータがフラフラな足取りで起きてきた。

「(リインはやっぱり遅起きやな。用意が終わったら起こしに行こ)おはようや、ヴィータ」

「ヴィータちゃん、おはよう」

「さっさと顔を洗って眠気を覚ましてこい」

「判ってんよ、うっせぇな~・・・って、あれ?」

ヴィータがキョロキョロとリビングダイニングを見回すから「どうした?」シグナムが訊いた。そしたら「ルシルが起きて来てないんじゃね?」ヴィータはそう答えながらも洗面所に向かった。普段ならもう起きて、ソファに座って新聞や管理局広報を読んでるはずのルシル君が居らへん。

「そう言えばルシル君、珍しくお寝坊さんですね~。ヴィータちゃんに様子を見て来てもらいましょうか?」

「あ、わたしが行くわ! シャマル、あと任せてもええかな?」

「ふふ。はい、お任せを♪」

シャマルの含み笑いに見送られながらわたしはリビングを出てルシル君の部屋へ。ルシル君の普段の寝顔を見れる機会なんて結構なレアやからな。それに、男の子を起こすなんて、アイリがよく観てるアニメの幼馴染設定みたいや。そうゆうのにもちょう憧れもしてたんは秘密や。

「(失礼の無いようにノック3回して、っと)ルシル君、もう朝やよ~」

そっと扉を開けて部屋を覗き込むと「んなっ・・・!?」一番に目に入った光景にビックリ。仰向けで寝てるルシル君に、アイリがキスしてた。頬ならまだ許す。そやけどガッチリ口にしてた。

「な、な、なな・・・何しとんの!」

「あ、はやて、おはよ~」

アイリを引き剥がしにかかると何とも呑気な挨拶をされた。一応「おはよう、アイリ」挨拶は返したけど「そうやなくて!」両手で、それは横に置いておいて、ってポーズをしながら「寝てる人に勝手にキスするんはアカンよ!」そう言い放った。

「でも昔からよくやってるし・・・」

「昔から!? それっていつからなん!?」

「ベルカの時からだよね」

「ルシル君やなくてオーディンさんやんか、それ!」

確かに今のルシル君はオーディンさんっぽい。何故ならルシル君は大人モードに変身してるから。雪合戦で勝利したアイリはルシル君へのお願いでこう言うた。

――2人きりの時だけでいいから、ずっとじゃなくていいから、大人モードに変身して――

そうゆうわけでルシル君は今、大人の姿になってるわけや。

「あ、あー、うん、そうだね。あはは、間違えちゃった♪」

「もう! もう2度としたらアカンよ」

「えー、別に良いと思うけどね。だってアイリの愛の証だし❤」

アイリはそう言うて人差し指を自分の唇に当てて、その人差し指をルシル君の唇に当ててわたしにウィンク。むぅ、アイリはわたしと同い年くらいの身長やのに中身が大人過ぎる。下手に攻撃すると思わぬしっぺ返しがありそうで怖い。そやけど・・・

「それでもルシル君が寝てる間にするんは、ルシル君の意思を考えてへんと思う・・・!」

「だけどこういう時じゃないと出来ないし。ルシルってガード堅過ぎて、頬にキスすることも出来ないんだよね。こうしてキス出来たのも今日が初めてだしね」

今日が初めてってことに僅かな安堵が生まれた。ホッとしてると「はやてもせっかくだからやってかない?」アイリがとんでもないことを言うてきたから「ひゃいっ!?」声がひっくり返ってもうた。

「はやてもルシルが好きなんでしょ?」

「っ! それは・・・その・・・うん、好きや」

「・・・。アイリはね、はやてに感謝してるの。ルシルに居場所を与えてくれたこと。はやてがルシルをこの家に招き入れなかったら、きっとルシルは今でも独りぼっちだったと思うから。だからね、はやてなら良いよ」

アイリはそう言うてわたしに手招きした。わたしはその甘い誘惑に抗おうとするんやけど、シャルちゃんやアイリにも先を越されてるってゆうちょっとした焦りがそれを邪魔してくる。手招きに誘われるままにベッドに歩み寄る。

「ほら、せっかくの記念に、はやてもルシルに愛の証(チュー)しちゃいなyo♪」

すごいドキドキして心臓の音しか聞こえへんくらいや。さっきまでアイリに説教してた自分を棚に上げて、ルシル君の眠るベッドの上に腰かけて顔を覗き込む。ホンマに綺麗な寝顔で、あまりの緊張に目の前がグルグルしだした。徐々にルシル君に顔を近付けてったその時・・・

「・・ん・・・んん・・・」

「っ!?」

ルシル君が少し身じろぎしたと思うたら寝返りを打って「ひゃん!?」その腕でわたしを抱き込んで来た。それはもう早業で、気が付けばわたしはルシル君に抱きしめられてて、目の前にルシル君の顔がある。顔どころか全身が熱くなって頭の中が真っ白になる。

「・・・あ・・ぅ・・あの・・・う・・・」

「はやてだけずる~い!」

「・・・ぅ・・・ん・・・ゼフィ・・姉様・・・」

ルシル君がなんか寝言で誰かの名前を言うた。それは女の人の名前で、「ゼフィ姉様って確か・・・」亡くなられたルシル君の家族やったはずと思いだす。寝言でお姉さんの名前を呼んで、代わりとも言えるわたしを抱きしめるルシル君。ルシル君の新たな一面を垣間見てしもうた。

(でもしゃあないよな・・・。どれだけ大人びててもルシル君もまだ子供なんやから・・・)

そう思うと恥ずかしさとか照れくささとかが全部なくなった。緩んだルシル君の腕を離して、今度はわたしがルシル君を抱きしめた。とにかく胸の奥から生まれてくるんは愛おしさで、ルシル君の頭をそっと撫でる。ずっとこのままで居りたい衝動やったけど・・・

「はやてちゃん? そろそろ朝ご飯を食べないといけな――って、あら♪」

シャマルに呼びかけられてハッとした。遅れて「・・・ん・・ん? はやて・・・? えっ!? はやて!? 一体何を!?」ルシル君が目を覚まして、目を丸くしてわたしを見た。また生まれる恥ずかしさと照れくささ。

「な、なな、な、ななな、なんでもあらへんよぉぉぉーーーーーーッ!!」

ルシル君のベッドから飛び出してそのままリビングへダッシュした。テーブルにすでに着いてたヴィータが「ビックリしたぁ~」目を丸くしてわたしを見て、「どうしたですか? はやてちゃん・・・」起きてたリインがそう訊いてきた。

「な、なんでもあらへんよ、うん。さ、ルシル君もアイリも起きたし、待ってよか」

「「???」」

わたしは自分の席について、ルシル君たちが来るのを深呼吸しながら待つ。それからしばらくして「すまない、寝坊した」ルシル君と、「おはよ~」アイリ、そんで「お待たせしました」シャマルが来て、それぞれ席に着いた。そんで「いただきます!」して朝ご飯を頂く。

(うぅ・・・、メッチャ顔を合わせづらい・・・)

それから、朝ご飯を食べてからの通学までずっとドキドキしっぱなしやった。ルシル君もどこか気まずそうやったし、少しは意識はしてくれてるみたいで嬉しいやら恥ずかしいやら。

†††Sideはやて⇒すずか†††

正門側で待ち合わせをして、みんなで一緒にクラス替えの結果を見に行くことに。小学校生活最後のクラス替えで、これで決まったクラスは卒業まで変わらない。ドキドキしながら掲示板に向かってると知らない男子たちが、クラス替えで騒ぐ女子が邪魔、とか、うるせぇ、とか、そんな話をしているのが聞こえた。

「同じ男の子としてのルシル君はどう思う?」

なのはちゃんがそう訊くと「言い過ぎだとは思うけど、そこまでこだわりはないかな」ってルシル君はそう答えた。これに「さすがにそれはない」アリサちゃんや、「一度くらい一緒になりたい!」シャルちゃんや、「同じクラスで騒ぎたい!」アリシアちゃんが猛反発。私も「最後の2年は一緒になりたいかな」って答える。

「そういうものか。休み時間にならないとどうせ喋れないし、弁当の時もどうせ集まるし」

「解ってないなぁ、ルシルは! 授業を一緒に受けることにも意味はあるのだよ!」

「そうは言っても授業中は喋れないだろ?」

「喋れる授業もあるじゃん。体育とか理科の実験とか音楽とか図工とか」

「喋ってばっかじゃダメだけど、でも一緒だからこそ授業が共有できて嬉しいかな」

アリシアちゃんはこれまでの授業を振り返ってるみたいで満足そうな笑顔を浮かべて、フェイトちゃんがそう付け加えた。ルシルは「言いたいことは解った」小さく頷いて、クラス替え結果の張り紙が貼られてる掲示板を見た。そう、あとは結果を見るだけ。1歩1歩と掲示板に向かうと・・・

「よう、ルシル! 俺たち同じクラスだな! 卒業までよろしくな!」

「ぼくも同じクラスなんだよね」

「本当か、亮介、天守! はは、それは良いな!」

綺麗な赤い髪と金髪をした男の子たちがルシル君の両脇に陣取って、「ほら、行こうぜ」そう言ってルシル君を連れて行こうとした。だから「ちょっ、ルシル君!? 一緒に見る約束は!?」はやてちゃんが引き止めようとしたけど、「悪い、はやて、みんなも! 俺、男だから♪」満面の笑顔を浮かべた上で親指を立てた。

「信っじらんない! チーム海鳴の友情より男の友情を取ろうってわけ!? ねえ、はやて!」

「・・・えっと、ルシル君にはルシル君の付き合いもまぁあるしなぁ。男の子やもん。男の子の友情も大切にせえへんと・・・。もしいつかルシル君から男の子の友達がみんな離れてって、周りには女の子しか居らへんくなったら、・・・終いにはライバルがわんさか・・・とか」

「絶対嫌それ! むぅ、しょうがないか。わたし達だけで見よう!」

ルシル君たちを見送った私たちはとうとう掲示板の前に立って、「せぇ~ので見ようね!」目を閉じて合図を確認し合う。そして「せぇ~の!」目を開けて張り紙を見る。自分の名前を必死に探して「あった!」指を差した。なのはちゃん達もほぼ同時に指を差したんだけど、みんなで「ん?」って小首を傾げた。そして遅れて「きゃぁぁぁぁぁ♪」みんなで歓声を上げて抱き合った。

「みんな同じクラスや!」

「すごい、すごい!」

「何か信じらんないわね。もう1回確認しましょ!」

「やっぱりみんな4組だよ、5年4組!」

「ていうかルシルも一緒じゃん!」

チーム海鳴全員が同じ4組っていう奇跡を目の当たりにしちゃった。スキップしちゃいそうな勢いで正面玄関に入って5年4組の靴箱に向かうと「げっ、咲耶!」アリサちゃんが身を引いた。

「あら、アリサさん、それに皆さんも。おはようございます。今年からは同じクラスですわね。卒業までどうぞよろしくお願いしますわ。では」

いつもは口ゲンカに発展しちゃうのに、今日の咲耶ちゃんは大人な対応でアリサちゃんに突っかかることなく挨拶だけをして校舎に向かった。アリサちゃんも呆気にとられてて、でも「気色悪・・・!」そう言って身震い。

「もう、アリサちゃん。せっかくちゃんとしてくれてるのにそんな事言っちゃダメだよ」

「そうは言うけどさ、なのは。普段のアイツの態度知ってんでしょ? それが急にあんなしおらしくなって。うわ、鳥肌立っちゃってる!」

「咲耶ちゃん、そんなに悪い子やないんやけどな~」

「ま、とりあえず今は新しい教室に行こうよ♪」

張り紙に名前と一緒に書かれてた出席番号のシール張られた靴箱に靴を入れて、上履き袋から上履きを取り出して履き替える。そして4階の第5学年教室エリアに上がる。クラス替えで別れることになった元クラスメイトと挨拶しながら新しい教室に到着。教室ではすでにルシル君が複数の男子と女子と楽しそうにお喋りしてた。

「ん? なんだ、みんな揃って。早速この教室でお喋りか?」

「ううん。わたしらみんな4組なんよ♪」

「え、本当なのか!?」

ルシル君が私たちにも視線を移したから「うんっ!」頷き返した。ルシル君は「こんな偏ったクラス分けで良いんだろうか?」って唸るけど、卒業まで一緒に過ごせるわけだからすごく嬉しい。ルシル君も「ま、いいか」納得して、お喋りを再開。私たちも自分の席に鞄を置いてお喋りを始めた。5年と6年には林間学校、臨海学校、それに修学旅行もある。今から楽しみで仕方ないねって。

「ねえねえ、学校終わったらなんだけど、午後から本局行かない? 確か今日からだったでしょ、花祭♪」

「本局式のお花見だよね。もちろん行くつもりだったし、みんなを誘おうと思ってたよ」

花祭っていうイベントが今年から本局の第1居住区で開催されることになった。去年、局員も一緒に参加したお花見が大盛況で終わって、参加者から本局でもお花見を楽しみたいって意見が多かったことからリンディ提督、レティ提督、リアンシェルト少将やその知人の将校たちの連名で居住区にイベント専用の区画が整理された。

「それにしてもドクターもすごいよね。桜の種を植えて1年も経たずに満開になるまで成長させちゃうんだから」

なのはちゃんの言うようにたった1年で種から満開状態にまで成長させたドクターはすごいと思う。そして、バレンタインデーやホワイトデーに続いてお花見まで本局に定着することになるかもしれないっていうことで、チーム海鳴の影響もまたすごいねって話になっって・・・。

「――じゃあ、今日は午前だけで学校終わるし、家に帰ったらそのまま本局に行きましょ。チーム海鳴って今日、全員休みなんだし」

進級したお祝いの日だってことで今日と明日をまるまる休みにしてもらったから、ゆっくりのんびり花祭を楽しめる。

「シグナム達も今日1日休みやし、みんな連れてくつもりやよ」

「おーい、ルシル~! 放課後は開けておいてよ~!」

「ああ、判った~!」

そういうわけで、放課後は本局の花祭に参加することをみんなで約束した。

†††Sideすずか⇒フェイト†††

「おお、やってる、やってる!」

花祭が開催されてる本局・第1居住区にやって来た私たちチーム海鳴は、花祭の大盛況さにかなりビックリしてる。日本のように出店もあるし、何より制服姿の局員や一般市民の人たちが一緒になって楽しんでいる姿が本当に良い。

「にしても・・・デカいわね~・・・」

「ホント大きいね~」

「アイリ、CMかなんかでこんな大きな樹、観た気がする」

「あ~、あの有名な歌もある大きな樹のことだよね。確かにそれくらい、もうちょっとあるね~」

「モンキーポッドという樹のことだな。俺もあのCMの歌は好きだなぁ~」

花祭の会場である円形状の公園のど真ん中に堂々とそびえ立っている大きな桜の樹を見上げる。全長はどれくらいだろう・・・、25メートル以上はくらいはあるかな。幅なんてその倍くらいはある。改めて1年でここまで成長させたドクターには驚きだ。
そんな巨大桜から舞い降る無数の桜の花びらに子供たちはもちろん、大人の人たちも「綺麗!」って楽しんでる。メインの桜の樹の他には花壇が公園を囲っていて、花の香りもすごい。正しく花の祭りって感じがする。

「とりあえずぐるっと回ってみるか。屋台巡りはその後で良いだろう」

ルシルからの提案に「賛成~♪」して、花壇に植えられた百数種類の花々を眺めながら公園をのんびり歩く。綺麗だね、っていろいろな花に目を奪われていると「んん? アリサ嬢ちゃんじゃないか」渋い声でアリサの名前を呼ぶ声がした。

「?? あ、ナカジマ一尉! お疲れ様です!」

アリサが私たちの前に姿を見せた男の人に敬礼した。ラフな格好だけどアリサの様子、そして階級からして局員なのは間違いないから「お疲れ様です!」チーム海鳴みんなで敬礼した。

「ナカジマってもしかして・・・」

「ああ、クイント准陸尉の知り合いじゃねぇか?」

そんな中でなのはとヴィータがボソボソ話してるのが聞こえた。クイント准陸尉って、私たちに避難誘導の指示を出してくれた首都防衛隊・分隊長の1人だったよね。ナカジマなんて次元世界には珍しい名字だし、たぶんクイント准陸尉の関係者じゃないかなって私も思った。
ナカジマ一尉は「おいおい。今は互いに非番だ。堅苦しい敬礼はナシにしようや」って笑ったから私たちも「はいっ」敬礼している腕を降ろした。そして「アリサ。紹介してよ」アリシアがアリサの脇腹にそっとひじ打ちした。

「そうね。えっと、あたしが捜査官としてお世話になってる陸士108部隊の副隊長を務めてるゲンヤ・ナカジマ一尉よ」

「おう。ゲンヤ・ナカジマだ。アリサ嬢ちゃんやウチの女房から話は聞いているし、クラナガンの悪夢やリンドヴルム壊滅のニュースとかで知ってる。会えて光栄だよ、チーム海鳴」

会えて光栄だとか言われたのは初めてだったから思わず頬が緩んじゃっていると、「あの、ナカジマ一尉はクイント・ナカジマ准陸尉の・・・」なのはが小さく挙手した。

「ああ。旦那だ。今、女房と娘2人で遊びに来てんだよ。そうだ、どうせなら会っていてくれ。もうトイレから帰ってくるはずなんだ。・・・お、来た来た」

ナカジマ一尉が大手を振る方を見ると、クイント准陸尉と小さな女の子2人が仲良く手を繋いでこっちに向かって来ていた。そしてクイント准陸尉も私たちに気付いて「あ、久しぶり!」笑顔で挨拶してくれたから「お久しぶりです!」お辞儀した。

「また会えて嬉しい! あー、でもすずかちゃんとは4日ぶりね」

「あ、はい! こんにちは、ギンガちゃん、スバルちゃん」

クイント准陸尉と手を繋いでいた2人の女の子と目を合わせるために、すずかは少し体を屈めた上でその子たちに挨拶した。すると髪の長い子は「こんにちは」綺麗なお辞儀をして、小さい子は「・・・こ、こんにちは」ちょっとおどおどして挨拶を返してくれた。

「さ、ギンガ、スバル。すずかお姉さんだけじゃなくて、お姉さん達みんなに自己紹介して♪」

「はいっ。姉のギンガ・ナカジマです。9歳です」

髪の長いお姉ちゃんがギンガ。落ち着いた雰囲気でとっても礼儀正しい。そんなギンガの背中に隠れようとしている女の子・スバルはどうやら人見知りが強いみたい。ギンガが「ほら、スバル、ご挨拶」って自分の前にスバルを押し出すと・・・

「スバル・ナカジマ、です。7歳・・・です」

ギンガとスバルに私たちも自己紹介を返した後、「銀河と昴、良い名前ですね」って、ルシルが2人の名前を褒めた。

「ありがとう、ルシリオン君! 夫と2人で考えたの♪」

「俺の遠いご先祖様はお嬢さん達の世界の出身らしくてな。だから俺の名前もお嬢ちゃん達のような感じだろ? 中島源也ってな」

グレアム元提督も元は地球はイギリス人だったってことは知ってるから、ナカジマ一尉のお話しはそんなに驚くようなことはなかった。それからクイント准陸尉やナカジマ一尉と話をしていると・・・

「む? 我に触りたいのか?」

「喋った!」

「うん、喋ったね!」

狼形態のザフィーラにそろそろと近付いて手を出しては引いていたギンガとスバルに、ザフィーラが声を掛けると2人して驚きを見せた。私は子犬フォームのアルフに目線をやると、「あたしを喋れるよ!」2人に声を掛けた。

「わっ!? こっちのわんちゃんも喋った!」

「もしかして使い魔さんですか?」

スバルはまた驚いて、ギンガはすぐにその正体を察した。管理局員の両親を持っているからかな。

「そうだよ。あたしはフェイトの使い魔なんだ! あたしの綺麗な毛並みにも触れても良いよ♪」

「我は八神家の守護獣だ。我の毛並みも負けてはいないぞ」

「えっと、じゃあ失礼して・・・」

「ふわふわぁ~♪」

ギンガとスバルはアルフとザフィーラを交互に触っては笑顔を浮かべている。アルフとザフィーラも撫でられて気持ち良さそうにしている。と、そんなところに「なぁ、2人とも。ザフィーラに乗ってみぃひん?」はやてがそう提案した。

「え、いいんですか?」

「乗りたい!」

スバルは即答で、ギンガは少し躊躇いを見せた。ザフィーラは「構わぬ」そう言って伏せて、2人が乗りやすいようにした。ナカジマ一尉が「おいおい、良いのかい?」ってはやてやザフィーラに確認すると、「かような小さな少女2人を乗せて走ることなど造作無い故」ザフィーラは即答した。するとスバルは真っ先にザフィーラの背に乗って、遅れて「よろしくお願いします」ギンガは乗った。

「振り落とされぬようにしっかりと掴まれ」

ギンガとスバルはしっかりとザフィーラの毛を掴んで、それを確認したザフィーラは「では行くぞ」私たちの周囲を駆けると、アルフも一緒になって駆け出した。その様子に2人は歓声を上げて、クイント准陸尉やナカジマ一尉に手を大きく振った。

「楽しそうで本当に良かった。ありがとう、はやてちゃん、フェイトちゃん」

「悪いな。お前たちも花祭を楽しんでいたのに」

「そんな気にせんでください」

「私やみんなも今この時間を楽しんでますから」

なのは達も頷くことで同意してくれた。こうして管理局の中で新しい知り合いを作るのは良いことだと思うから。それから5分くらいアルフ達を見守りながら話していたら、きゅ~、ってお腹が鳴った音が聞こえた。しかも3人分。

「はやてちゃん、お腹空いたです~」

「そろそろ何か食べたいよね~」

リインとアイリだった。そして最後の1人は「おとうさん、おかあさん、おなか空いた・・・」スバルだった。3人揃って同じようにお腹を擦るその様子に私たちは「あはは!」思わず笑ってしまった。

「よし。なにか旨いもんでも食べに行くか! またな、嬢ちゃん達」

「それじゃ、みんな。またどこかで!」

「とっても楽しかったです、ありがとうございました!」

「バイバイ、おねえちゃん達! アルフとザフィーラもバイバイ♪」

一家団欒なナカジマ家とお別れして、私たちも空腹を満たすために出店巡りを始める。1品目のハンバーガーを買ってみんなでベンチに座って食べていると、「きゃあ!?」背後から悲鳴とずざざっていう転ぶ音、最後に「わぁぁ~~ん!」泣き声がした。慌てて振り返ると、とても小さな女の子(たぶん1歳ちょっとくらいだと思う)がうつ伏せになって泣いてた。

「あらあら、大変! 大丈夫!?」

「っ!! レヴィヤタン・・・!」

誰よりも早く行動してたルシル・・・は転んだ女の子を見て驚いて立ち止まって、「もう。早く起こしてあげてルシル君!」そんなルシルを叱りながらシャマル先生が女の子を抱き起した。

「すみません!」

そこに切羽詰まった女の人の声が聞こえてきた。声のした方を見れば、転んだ女の子と同じ1歳くらいの小さな女の子を抱きかかえた「メガーヌ准陸尉!?」が居た。メガーヌ・アルピーノ准陸尉は、クイント准陸尉と同じように首都防衛隊の分隊長だ。

「あ、あなた達は! あの、ごめんなさい、うちの子なんです!」

シャマル先生の治癒魔法・癒しの風で擦り傷を治してもらってる女の子を見る。まだ小さいから似てるかどうかは言い難いけど、メガーヌ准陸尉が抱きかかえている女の子の方は髪型のクセがそっくりだから、メガーヌ准陸尉の子供だってすぐに判る。シャマル先生が「はーい、もう大丈夫~♪」治癒を終えた女の子を地面に降ろすと「ありがとうございます」メガーヌ准陸尉は深く頭を下げた。

「メガーヌ准陸尉にもお子さんが居たんですね。クイント准陸尉と同じ、女の子2人♪」

「ええ。双子なの。長女のルーテシアと次女リヴィア。2人とも元気いっぱいで、もう大変」

ルーテシアとリヴィアという名前の女の子と一緒にベンチに座ったメガーヌ准陸尉がそう言って微笑んだ。大変って言っているけど、決して翳りの無い優しい表情で、これが母親の顔なんだってすぐに判った。
PT事件でのプレシア母さんの最期、“闇の書”の欠片事件でのプレシア母さんの最後の表情を思い返す。どちらも優しい表情を向けてくれていた。短い時間だったけど、確かに私とプレシア母さんが母娘だった・・・と思う。

「フェイト」

「アリシア・・・?」

アリシアが私の手を握って微笑みかけてくれた。だから私も微笑みを返して、キュッと繋いだ手に少し力を込めた。

「あの、お父さんと一緒ではないのですか?」

「・・・夫は、この子たちが生まれる前に・・・天国に行っちゃったの」

質問したリインが「あわわ、ごめんなさいです!」とても焦って、半泣きになって謝った。その様子にメガーヌ准陸尉も「あー、良いの、気にしないで、泣かないでね!」慌て始めた。反面、ルーテシアとリヴィアは「すぅ、すぅ・・・」夢の中に旅立っちゃった。
可愛い寝顔に私たちはもうメロメロで、半泣きだったリインすらも泣き止んで、ずっと見てたい気持ちになってた。けど起こしたりするといけないから、「失礼しま~す」メガーヌ准陸尉と小さく手を振り合いながら別れた。

「ルーテシアとリヴィア、可愛かったなぁ~」

「うん。ギンガちゃんとスバルちゃんも可愛かったよね♪」

「みんな可愛かったです~♪」

「あら。リインちゃんも生まれてすぐはリヴィアちゃんのように泣き虫で可愛かったわよ?」

「きゃぁぁぁ! そんなこと言わないで良いですよ、シャマル!」

ポカポカとシャマル先生を叩くリインに微笑ましくなる。そんな中で「ルシル。将来、わたしとあなたの間にもあんな可愛い子供作ろうね❤」シャルがまたそんなことを言いだした。はやては少しむっとして、ルシルは「バーカ」一言で斬り伏せた。
それから私たちは出店巡りを続けて、夕方くらいまで花祭りを見て、食べて、喋って、今日という日を精いっぱい楽しんだ。
 
 

 
後書き
サェン・バェ・ノー。
新学期・花見イベントをお送りしました今話。現実ではまずあり得ないクラス分けですけど、二次という言い訳を使ってチーム海鳴全メンバーを同じクラスにしました。上手くこの設定を使えたらいいなぁ、とは思いますけど、日常編執筆に飽きましたらそんな設定はすぐに吹っ飛ぶことになるでしょう。毎回同じことを言う馬鹿な作者でございます。

後半は本局式お花見。そこでナカジマ家とアルピーノ家を登場させました。すずかとナカジマ家の出会いも後で書いておかないとですね。スカリエッティ家も出す予定でしたが、大半がシリアスになる会話をするので、この回では没としました。話の内容も後で書きます。
で、新たなオリキャラなリヴィア・アルピーノ。ルシルの驚きの通り、前作のレヴィヤタンでありレヴィ・アルピーノの生まれ変わり、という設定です。名前もレヴィヤタンをもじって付けました。STRIKERS編のエピソードⅣはかなりオリジナル(事件というよりは、もはや戦争)が入りますからね。リヴィアもきっちり動かしたいと思います。
それにしてもメガーヌさんの旦那さんはどうしたんでしょう。原作にでも出て来ないんですよね。しかも全く触れられていない。ですから私は勝手に病死か事故死かと考えています。

「離婚? あり得んでしょ! あんな美人さんと別れるようなくそ野郎なんて絶対に居ない!」

もし離婚なら元旦那の頭を疑うわ!! 私が貰うぞ、メガーヌさん!
 
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