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FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~

作者:山神
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誤算?

 
前書き
先月のマガジンSPに乗ってた『妖精たちのクリスマス』いずれやってみたいと思った今日この頃。
やるなら今日だけど、まだ大魔闘演舞終わってないからやりませんよ。
もしかしたら夏場とかにやるかもね(笑) 

 
「しゃー!!トップに返り咲き!!」
「このまま順調に頼むぜ!!」

ジェットとドロイは現在の順位表を見てそう言う。

「一勝あげたが、気は抜けねぇよな」
「セイバーはまだ4人無傷だしな。ジュラとリオンもの残ってるしよ」
「むしろこっからか本番ってとこか」

マカオとワカバは湧いているシャドウ・ギアの横で険しい表情をしている。

「ナツたちの方も気になりますが・・・」
「少し時間がかかっているようですね。ということは、やはり何かあったと考えるべきでしょう」

マカロフとメイビスがルーシィの救出に向かったナツたちについてそう話している。ルーシィの奪還に成功したら彼らから信号弾が挙がることになっているのだが、いまだにそれがないため心配しているようだった。
その頃彼らは奈落宮にて出口を見つけることができず、さらには王国最強の処刑人『餓狼騎士団』の襲撃を受け、戦闘をしていた。








「試合、動かなくなったな」

ナツたちが餓狼騎士団と散り散りになって戦闘している頃、大魔闘演舞の応援をしているロメオがなかなか対戦が起きなくなった試合を見てそう呟いていた。

「王都は広いし、残った人数も少ないからね」
「強いのばっかり残ってるし、当たる相手によっては急に不利になるかもしれないから、慎重になってるんじゃない?」

アルザックとビスカがそう言う。

「しっかし、初代の作戦すごいよな」
「あっさり1位に返り咲いたもんな」

ジェットとドロイはメイビスの計算能力の高さに感嘆の声を出していた。

「同じギルドマスターでもこうも違うもんかね」
「おめぇがいうか?」
「色々失礼なコメントだな」

マカロフのことを言っているであろうマカオに対し、ワカバとアルザックがそう言う。

「感じます」
「どうかしましたかな?初代」

何かを感じた様子のメイビスにマカロフが問いかける。メイビスは自分が感じているものをより感じやすいようにと目を閉じる。

「このクロッカスの地下、奥深くから伝わってくるのです。わずかですが震動と、ぶつかり合う魔力を」
「ガキ共・・・ですかな?」
「おそらく。そして分散して戦っているようです」

メイビスはナツやウェンディたちが餓狼騎士団と戦っていることを感じ、アクシデントに見回れたことを確信していた。
しかし彼らはむやみに動くということができないため、ただひたすらナツたちが無事に帰ってくることを祈ることしかできなかった。















それからしばらくして、ナツを中心としたルーシィ救出チームが餓狼騎士団を全員倒し、リーダーの鎌使いから出入り口を聞き出した彼らが奈落宮から抜け出そうとしていた頃、大魔闘演舞にもようやく動きが見えてきた。

妖精の尻尾(フェアリーテイル)はいまだ脱落者0!!これは強い!!』
「当たり前だ。何と言っても俺のラクサスがいるからな」
「あんたのじゃなくて雷神衆のでしょ」
「何でもいいからさっさと片付けちまえよ、ラクサス」

フリードとエバーグリーン、ビッグスローの雷神衆は今日の大魔闘演舞で唯一脱落者を出していない妖精の尻尾(フェアリーテイル)が誉められているのを聞いてそう言っていた。だか実はラクサスはルーファスの『星降ル夜ニ』を受け止める以外の活躍をしていないことを彼らは覚えていないようである。

「このまま優勝は堅いな、さすがラクサス!!」
「気が早いって・・・」

フリードがラクサスのおかげで優勝できると確信をしていることにエバーグリーンが呆れたように突っ込みを入れる。

「ラクサス!!その勇姿を見せてくれ!!」
「「「GO!!ラクサスGO!!ラクサスGO!!」」」
「やかましいのぉ!!」

テンションが上がりすぎている雷神衆にマカロフが魔水晶(ラクリマ)ビジョンを見たまま怒ったような態度を取る。

「ところで初代、次はどうなるの?」
「ラクサス以外のメンバーも移動を続けているようだが」

急に真面目になったエバーグリーンとフリード。メイビスはそれに対して自分の計算を答える。

「私の計算が正しければ・・・」



















クロッカスの街の中を流れる川にかかっている橋の付近。そこにはニット帽を被り、太もものところまで切れ目が入った厚手のドレスを着ている水髪の女性が歩いていた。
彼女は目印になる橋を見つけると、その場で足を止める。

(ジュビアが指定されたポイントと時間はここ)

自分の周りに意識を集中させるジュビア。すると彼女に向かって強い風が吹いてくる。

「!!」

ジュビアはその風が吹いてくる方向を見上げる。そこには彼女よりも幼く、胸のところにハートとバツのワッペンを付けた服を着ているビックテールの少女がいた。

「ジュビアとシェリアがぶつかります!!」
「天神の・・・北風(ボレアス)!!」
(初代の読み通り!!)

シェリアの両手から放たれた黒い風。ジュビアは事前にそれをメイビスより伝えられていたため難なく避けることができる。
シェリアは自分の魔法を回避したジュビアを見下ろすように近くの街灯の上に乗る。

『シェリアたんキターッ!!』
『はいはい』

チャパティのロリコン心をくすぶる3人の天使1人、シェリアの登場に彼は鼻息を荒くしている。その隣のヤジマは「わかったから少し黙ってろ」と言わんばかりに適当な相づちをする。

「あなたはリオンの“愛”する人!!」

シェリアはジュビアを指さしそう言う。彼女は好きな人の1人であるリオンが想いを寄せているジュビアに対し、敵対心を持っているらしく彼女の元まで勝負しに来たのだ。

「愛されたくなんかありません!!」

それに対しジュビアは、リオンではなくグレイのことを愛しているため、激しくアプローチしてくるリオンのことを鬱陶しく思っている節があり、そう答えた。

「だったら・・・消えて!!」

シェリアは両手をクロスさせるように前に押し出し、ジュビアを黒い風で吹き飛ばそうとする。ジュビアはそれになんとか耐えてやり過ごす。

滅神魔導士(ゴッドスレイヤー)のシェリア。確か、自分の傷を回復できるのよね?」
「どうやって倒しゃあいいんだよ!!」

エバーグリーンとビッグスローは3日目のバトルパートにてウェンディと戦った時の彼女の魔法を思い出し、どうやってシェリアを倒せばいいのかメイビスに問う。メイビスはそれに対して「フフフッ」と笑ってから答える。

「足止めでいいのです。その間に、エルザがミネルバと、シリルがタクトとぶつかります」
「「ちょっとドヤ顔になった!?」」

ここまですべての戦略を的中させているメイビスは得意気に、次に起こる展開を答えていた。

「初代。ミネルバとは、あのセイバーの女か?執拗にルーシィを痛め付けた・・・あの・・・」

フリードは4日目の競技パートのことを思い出し、目を細める。

「危ねぇ相手だぜ?」
「エルザと1対1(サシ)なら心配ないんじゃない?」

ビッグスローは心配しているようだったが、エバーグリーンはエルザの強さをよく知っているので何ら心配する気はない様子。

「それにしてもシリルとタクトか・・・」
「身長差が一番大きい対決かもしれんな」
「あんたもしれっと失礼なこと言うわよね・・・」

メイビスが予測したもう1つのバトル。今大会№1長身魔導士のタクトと逆に一番小さいと思われるシリルの戦い。タクトもエルザと五分に渡り合える実力者ではあるのだが、シリルの現在の安定度を考えると勝てない相手ではないと皆判断しているようで、誰も心配を口にすることはない。
彼らがそんな話をしているうちに、エルザはメイビスに指定されたある建物へと向かっていた。

「ここか」

エルザは博物館のような巨大な建物を見つけると、その屋上へと足を進める。
屋上に着くと、そこには周りを転落防止として囲っているのか、たくさんの木々が生えている。
エルザは辺りを1度見渡すが、まだそこには誰の姿もない。

(初代の作戦によれば 、ここにセイバーの・・・!!)

エルザは後方から人の気配を察知し、素早く体を反転させて敵に備える。しかし彼女は自分の目に映るその人物を見て驚いた。こちらに向かってきているのは剣咬の虎(セイバートゥース)のミネルバではなく・・・
『カグラだぁー!!!』
「え?」

人魚の踵(マーメイドヒール)のカグラ・ミカヅチだった。メイビスは自分の計算していた人物とは違うものが現れたことに目を疑う。

(初代の読みが外れた?)

表情こそ崩してはいないものの、これにはエルザも動揺していた。しかし、すぐに自分に迫る相手の攻撃を防ぐために別空間から小太刀を2本取り出し、納刀されたままのカグラの刀から身を守る。
先手を防がれた格好のカグラ。彼女は2本の刀を持っているエルザの剣筋をすべて見切り、ただ1本の・・・それも鞘に納められているままの刀で攻め合っている。

カァンッ

激しくぶつかり合う2人の剣。カグラは1度先程までの連打よりも引きを大きくし、エルザに一太刀入れようとする。エルザもそれに瞬間的に反応し、互いに様子を見ようとしてか距離を取る。

(強い!!)
(噂通りの武人か、見せてもらおう。妖精女王(ティターニア)

2人は1ミリの隙もない構えで相手を見据え、しばしの膠着状態に入る。

「しょ・・・初代、これは一体?エルザの相手はセイバーのミネルバだったのでは!?」

マカロフはかつて妖精軍師と言われるほど戦略家であるメイビスの読みが外れたことに驚愕していた。

「妖精軍師と言われた初代でも、計算をミスすることがあるのか」
「「シー!!」」

顎に手を当てて冷静にそう呟いたフリード。そんな彼のその言葉を聞いていたエバーグリーンとビッグスローは口の前に人差し指を持ってきて静かにするように彼に促す。

「ん?」
「「ん!!」」

フリードはなぜ2人がそんなことをするのかわからずにいると、彼らはメイビスの方を見るように彼女を指指す。

「私の・・・計算が・・・ふぇ・・・どこで・・・」
「しょ・・・初代!?」

自分の計算が間違っていたことにメイビスは責任を感じ、目からポロポロと涙をこぼす。

「な・・・泣いてなんかないです・・・全然・・・泣いてなんかぁぁぁん!!」
「だ・・・誰か!!全力で初代をあやせ!!」
「あんたのせいよフリード!!」
「え!?え!?」

否定しているもののその間もメイビスは涙を流し、ついに耐えきれなくなった彼女は号泣モードに入ってしまう。慌てたマカロフが誰かにメイビスを泣き止ませるように求めたが、誰もそんなことなどできるはずもなく、ただただ妖精の尻尾(フェアリーテイル)にしか聞こえないメイビスの涙声が響いていた。
その間もエルザとカグラの激しい戦いは続いており、観客たちは2人の剣士の戦いに大興奮だった。

『これは面白い戦いとなった!!最強女剣士決定戦だぁ!!』
『これはすごい山場だね』

実況席も2人の美しい実力者対決になったことに大盛り上がりである。
メイビスのよそうできなかった2人の戦い、実力が均衡していた彼女たちは剣と剣を合わせたまま、動きができない状態へとなっていた。

(納刀したままでこれほどか?)

エルザは目の前の強敵の実力に驚いている。

『ああっと!!鍔競ったままの膠着状態だぁ!!』

互いに相手に押し負けないようにと力を入れ、隙が生まれるのを待っている状況。歯を食い縛り、気を抜けない押し合いを続けていると突然、2人の目の前に丸い球体が現れ、その中から伸びてきた腕が2人の顔面を掴んだ。

「うっ!!」
「くっ!!」
「フッ」

魔力の球体から出てきたのは最初にメイビスが予測していたエルザの対戦相手、ミネルバ・オーランド。ミネルバは球体の中でエルザたちの顔を掴んだまま体を回転させ、2人の剣士を投げ飛ばす。

「妾も混ぜてはくれまいか?」

ミネルバは2人が視界に入るように地面に降り立つと、すぐに立ち上がって自分を見ているエルザとカグラを見据える。

『ミネルバ乱入!!』
「予測・・・不可能です」

まさか過ぎる展開にメイビスは目に涙を浮かべて震えている。

『なんとなんとなんと!!三つ巴戦になったぁ!!今大会屈指の女魔導士対決!!生き残るのは誰だぁ!?』

シリルと共に100体切りをしたエルザ。トリプルバトルで1対3の状況から相手を圧倒し、結果的には引き分けだったが実力者のリオンと渡り合い、レオンの弱点に気づいたカグラ。そして最強ギルド剣咬の虎(セイバートゥース)の魔導士であり、海戦(ナバルバトル)で圧勝したミネルバ。
3人の女魔導士がそれぞれを視野に入れている。
その映像を見ている者は皆この激戦必須の3人の戦いに大興奮。だが、こちらのギルドではそれどころではない。

「そんな・・・なんでここで三つ巴に・・・」

指を何度も何度も折り、頭の中で計算し直すメイビス。しかし、どう計算してもこのような展開になることがなく、目にいっぱいの涙を溜めていた。
エルザの応援もしたいがこんな状態のメイビスを放っておく訳にもいかず、困り果てていた妖精の尻尾(フェアリーテイル)の面々。するとロメオがエルザたちが映っているのとは別の魔水晶(ラクリマ)ビジョンを見て元気を取り戻させる作戦を思い付いていた。

「ま・・・まぁまぁ初代、エルザ姉のはたまたま外れたんだろうし、あんまり気にすんなよ」
「そうですが・・・」
「ほら!!あれ見てみろよ!!」

ロメオが指さすビジョンに映っているのは男物の服を身に纏っている少女・・・のような少年シリル。
彼は目印になっているものを探しているらしく、キョロキョロしながら歩を進めていた。

「シリル兄とタクトが当たんだろ?それが当たればいいじゃん!!」
「そうだよ。私たちじゃあ誰がどこに来るかなんて全然わかんないからね!!」

ロメオに乗るようにカナもメイビスを持ち上げる。メイビスはそれを聞き、少しだけではあるが表情が明るくなる。

「そ・・・そうですね!!今回のはたまたまです!!ここからは私の計算通りに・・・」

そこまで言うとメイビスの表情が固まる。しばらく動かなくなっているかと思ったら、メイビスは突然先程よりも大粒の涙を流し始めた。

「初代!?」
「どうしたんだい!?」
「ふぇ・・・なんで・・・」

メイビスが涙を流す原因となったビジョンに視線を移すロメオたち。そこにいるのは因縁のあるルーファスとの戦いを終えたグレイと・・・

「1日目以来ですね、グレイさん」
「なっ・・・」

シリルとぶつかる予定だったタクトの姿だった。

『あぁっと!!女魔導士たちの三つ巴も気になりますが、こちらではグレイ選手とタクト選手が接触しているぞぉ!!』

ルーファスと同じように『隠密(ヒドゥン)』に参加しており、順位こそ4位であったがスタートダッシュを決めるきっかけを作ったタクト。グレイは彼を見て驚いたものの、気を取り直して体を向き直り、彼を見る。

「おめぇ・・・なんでここに?」
「俺もルーファスさんを倒そうと思って王立図書館に行ってたんですよ。でも、グレイさんに先を越されちゃいました」

タクトはグレイと同様に1日目の競技で借りのあるルーファスを仕留めようとしていたらしく、この周辺にやって来ていたのだった。

「でもまさかグレイさんに取られちゃうとは・・・」
「思わなかったってか?」

失礼なものいいのタクトに対し不機嫌そうにするグレイ。しかし、タクトはそれを否定するように首を横に振る。

「いえ、むしろこの方がよかった」
「あぁ?」
「俺は妖精の尻尾(フェアリーテイル)にも借りがあります。というか、こっちの方が俺的には大きい」

2日目のバトルパート、エルザと対決することになったタクトだったのだが、彼は彼女の換装の速度に終盤対応しきれず、完成させたばかりの大技さえも繰り出して勝利をもぎ取りにいったのにも関わらず、惜敗してしまったのだ。

「本当はエルザさんと戦いたかったんですが、まぁいいです」

タクトは長い足を片方後方へと引き、拳を構える。

「1日目の再戦といきましょう、グレイさん」
「上等だ。返り討ちにしてやるぜ」

1日目にしのぎを削りあったものたちが再び交わる。2人の間に緊張が走っていた。





















「え?あれ?」

グレイとタクトが対峙している丁度その頃、初代マスターメイビスの指定したポイントに到着していたシリルは魔水晶(ラクリマ)ビジョンから見える光景を見て何が何だかんだわからなくなっていた。

「俺・・・もしかして場所間違えた?」

周りを見回して確認するシリル。しかし、そこには目印となっているパン屋があり、ここで間違えないのだと確信したシリルはボリボリと頭をかく。

「初代の計算が狂ってるのか?それともカグラさんやタクトさんがおかしいのか?」

予定と大分変わってしまった対戦カード。いつもならそんなことは気にすることもないのだが、ここまですべての展開を当ててきたメイビスの策だったゆえに動揺が隠せない。

「とりあえず・・・これからどうするか・・・」

シリルはタクトと戦うつもりだったのでそれなりにイメージを持ってきていたのだが、その相手が違う相手としているとなると話は変わってくる。
ここでただボーッと待っていては点数は取れないし、強い相手がやって来ても困ると思ったシリルは場所を移動してみることにした。しかし、その判断は少し遅かった。

ゾワッ

背中に寒気が走る。今日は7月6日、天気は快晴、気温も決して低くない平均的な気温。空から何かが降ってきた訳でもないのにいきなり背中に走る嫌な感じ。シリルはその感覚を受けてすぐさま後ろを振り向いた。
彼が振り向いた先からは何かが次第に大きくなってきているのが確認できる。そしてよくその迫ってきているものが何なのかを見ようとした彼は「げっ!!」と言葉を漏らした。
銀色の長い髪、エルザやジュビアのような巨乳体型ではないがバランスよく育った細い体。クリクリとしたつぶらな瞳、そして・・・

「シリルちゃ~ん!!」

綺麗だけど絶対に聞きたくなかった透き通るような声。

「ぎゃああああああ!!」

シリルはその人物を目視したと同時に反対方向へと全速力で走り出す。

「待ってよシリルちゃ~~ん!!」
「こっち来んな変態!!」

いつでもシリルを抱き締められるようにと両手を広げて追いかけるソフィア。対して誰かに助けを求めるように両腕を開いて逃げていくシリル。本来はあまり早くないはずの2人の速度。しかし、この時は2人とも違っていた。まるで陸上選手なのではないかと言うほどの速度で逃げるシリルと何とかして捕まえようとするソフィア。2人は街で遭遇したら即バトルなどというルールはとんと頭から抜け落ちているようだった。

『ソフィアだぁ!!おじさんたちの強い味方ソフィアが妖精の尻尾(フェアリーテイル)のシリルたんを追いかけているぅ!!』

見た目的にはシリルやシェリアと同じように天使扱いされても良さそうなソフィア。だが彼女はウェンディたちとは違い可愛らしさよりもエロさが売りなため、チャパティのロリコン心はあまりくすぐらないようである。

「シリルちゃん逃げちゃダメ~!!」
「無理!!絶対無理!!」

どこまで逃げていくのかというほど走っているソフィアとシリル。2人とも足の速さはほぼ同等らしく、なかなか差が縮まらない。
しかし・・・こういうときに限って降りてくるものなのである・・・





















ドジッ娘の神様は!!

ガッ

「おっ!!」

迫ってくる変態(ソフィア)からとにかく逃げていたシリルは足元が完全にお留守になっており、小さな小石につまずき3日目のウェンディやシェリアのように転倒する。

「ダーイブッ!!」

ソフィアはそんなシリルを見てこれ見よがしに飛び付いてくる。しかもお尻に。

「ふぎゃっ!!」

ソフィアがお尻に顔からダイブしてきたために声をあげるシリル。ソフィアはそんなことなどお構い無しにシリルのお尻を頬擦りし始める。

「んん~!!シリルちゃんのお尻やっぱり柔らか~い!!」
「ふざけんな!!」

状態をできる限り捻らせて下半身に抱きついているソフィアを剥がそうとぐいぐいと頭を押すシリル。しかしソフィアは離れまいとしがみつき全然引き剥がせない。

「いいお尻だなぁ・・・これでスカートだったらなおいいんだけどなぁ」
「誰がそんなもん履くか!!」

シリルは今はジーンズを履いているのだが、ソフィア的にはシェリアやエルザのようなスカートを履いていた方が嬉しいらしい。

「離せ!!」
「ぐはっ!!」

シリルはいい加減鬱陶しくなってきたため、足を折り曲げてソフィアのお腹に踵で蹴りを入れる。それによりようやくソフィアが離れたのを確認したシリルは大急ぎで彼女との距離を開ける。
その映像を見ていた観客たちはせっかくのお楽しみタイムが終わってしまい、ガッカリしていたのは言うまでもない。

「むぅ・・・シリルちゃんのけち!!」

ソフィアはすぐに立ち上がると口を尖らせてプンプンしている。シリルはズボンを直しながら彼女を警戒している。

「減るもんじゃないんだからいいじゃん!!」
「減るわ!!俺の精神力とかすり減るわ!!」

気付かれないようにジリジリと詰め寄ろうとしているソフィアと同じようにジリジリと離れていこうとしているシリル。実は2人とも相手が自分と同じように気付かれないようにと動いていることに全く気づいてなかったりする。

「あ!!そうだ!!」

するとソフィアは何かいい考えが浮かんだのか、ポンと手を叩く。

「シリルちゃんがソフィアと戦わなくちゃいけない状況を作ればいいんだね!!」
「・・・は?」

シリルはソフィアがいきなりそんなことを言い出したのでキョトンとしている。
ソフィアはそんなシリルなど気にすることなく、両手の親指と人差し指でひし形を作り、まるでキャンパスにどのようにシリルを描くのかを決めるかのように覗き込む。

「イメージイメージ・・・よし!!」

何かをぶつぶつと唱えていたソフィアは右手だけそのままの体勢にしたまま、その前を左手を振るうようすると、

プワァン

いきなりシリルが煙に包まれたのだった。








 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか。
今回の話の終盤は皆さんお待ちかねソフィアのセクハラタイムでした!!
え?待ってない?そう言わないでくださいね。ソフィアの見せ場はもう今後あるのかわからないんですから。
ソフィア「え?」
次は前からさんざん言っていたソフィアの第二(セカンド)魔法の登場です。
次回もよろしくお願いします。 
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