リリカルな正義の味方
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2話
彼らの攻撃の光が収まり、その場に立っていたのは満身創痍ではあったが、白夜であった。いや、お互い立ってはいるが、すでにどちらも攻撃などできる状態ではなかった。
「…負けちゃった。やっぱり強いね、白夜くん。」
「いや…、オレの負けだ。撃ち合いは引き分け、体は限界、そちらにはほかに動けるやつが何人もいる。誰が見ても、オレの負けは揺るがない。」
「じゃあ…」
「しかし、あきらめるわけにはいかない。限界とはいえ、この体はまだ動く。手は剣を握れる。足もまだ動かせる。ならば…」
彼は二本の剣を投影する。白と黒の剣を。
「オレはまだあきらめるわけにはいかない!」
彼は魔力も尽きかけているのだろう。形の定まっていないその二本の剣を持つ。かろうじて剣と思える形をしたそれで、彼女たちに向かっていく。振りかぶった干将を受けとめる人がいた。真ソニックフォームになったフェイト・T・ハラオウンである。
「どうしてそんなに…」
「オレには…、オレには意地がある!!なんとしても成し遂げると、あの子達に誓ったんだ!!!!」
そのボロボロの体で、形もなっていない剣でまだ抗い続ける彼の姿はまるで正義の味方そのものだった。そしてその彼の意志と同じだと示すかのように彼の剣もまた、その形もはっきりしていく。そして彼はそのまま、まだ戦えると、その少ない魔力を持って、『強化』する。
「―――鶴翼、欠落ヲ不ラズ
―――心技、泰山ニ至リ
―――心技黄河ヲ渡ル
―――唯名別天ニ納メ
―――両雄、共ニ命ヲ別ツ!!!!」
干将莫邪を強化し、オーバーエッジに変えた彼はその二刀流で、フェイトの二刀流を相手にする。干将を振りぬき、莫邪で防ぎ、回転しつつ、干将で薙ぎ払う。剣技などと呼べるものではない。だがそれでも、意地が彼を動かしていた。だが体がついてこれず、彼に大きな隙ができてしまった。そこを彼女に斬り飛ばされる。
「がぁっ!!!」
その次の瞬間彼が見たのは二刀流を大剣に変えた彼女。瞬間理解する。ここであれを止めなければオレは負けると。彼は空になりつつある魔力を振り絞り、さらに投影を行う。
「―――投影、開始
―――投影、装填
―――全工程投影完了
―――是、射殺す百頭!!!」
それは、彼に迫っていた大剣よりも早く、彼女に当たった。その目に見えない速度の九閃は彼女を吹き飛ばし、自らもボロボロの体を酷使したことにより、倒れこんでしまう。
「グ…ガハッ…オ、オレは…、まだ…」
「くっ…やっぱり強い…。そんなボロボロなのに…」
彼に残された魔力は剣を一本投影できるかどうかの魔力。しかし彼は状況をなんとか整えていた。なのはは永久に遥か黄金の剣により動けず、フェイトは射殺す百頭により動けない。管理局本部は視界に入っている。
「この勝負、オレの負けだが…管理局は破壊させてもらう!!!
―――投影、開始
―――全行程、破棄
―――虚・千山斬り拓く翠の地平!!!!」
彼が最後に投影した剣が管理局へと向かう。だが…それはビームによって防がれた。彼の虚・千山斬り拓く翠の地平はラグナロクによって粉々に壊されてしまった。やはり彼にも限界が来ていたのか、それを見届けた後、彼はその場に倒れてしまった。
「…さすが、白夜くんやったなぁ。まさか一人で私らの最強魔法を全部使わせるなんてな…。しかもそれを突破するなんて…」
最後においしいところだけを持って行った八神はやてであった。
「なんか今DISられた気が…」
ところ変わって、ここは医務室。先ほどの戦いが終了し、彼女たちとともに彼も運ばれていた。もうすでに彼女たちは目を覚まし、仕事に戻っている。彼女たちが復帰してから三日後、彼は目を覚ました。
「…ここは…」
「目が覚めた?ここは機動六課の医務室よ。」
「…シャマルか。そうか…オレは…」
負けたのか、という言葉が続く。彼は窓から見える海を見ながら、己に諭すようにつぶやいた。
「今、あいつらはどうしてる?」
「彼女たちなら、あなたより早く目が覚めて仕事に戻っているわよ。誰かさんが攻めてきてくれたおかげで怪我人が沢山出たからね。」
シャマルは笑いながら言った。彼は笑い事じゃないだろうにと心の中でつぶやいた。しかしながらそれをしたのが自分なので何も言い返せない。
彼はこれから自分がどうなるか理解している。管理局への襲撃者として、牢獄で過ごすことになるだろう。彼はそう考えていたが、現実はそうではなかった。クロノが手を回してくれたらしく、観察処分という、昔の彼女達と同じ処遇になっていた。それを聞いたのは、彼のお見舞いに彼女達やクロノ、ユーノが一堂に会した時だった。その処遇の決め手には当然、彼女達の擁護も加わっており、彼は許されたようだ。しかし彼は当然反発した。
「そんなもので済むような事じゃない!」
彼は自分がしたことを許してはいけないと語る。何か罰を与えなくてはならないと。しかしそ?な彼にクロノは言った。
「6年間、離れ続けた彼女達の側にいる事が、君に対する罰だ。今後はどこかにいったりせず、ちゃんと彼女達に寂しい思いをさせない事だ」
特に、なのはとフェイトはな。という言葉を隠してだが。
そして彼は怪我を治し、ミッドチルダから離れた場所に店を構える事にした。といっても、カフェのようなもので、定食屋のような店ではないが、夜になればバーにもなる店だ。そして料理が評判を呼び、コーヒーや紅茶も美味しいということで、ミッドでも有名な店になった。
そして今日も彼は『罰』を受けている。彼女達の話を聞いたりするという簡単な罰だが、彼にとっては後ろめたさがある故に、複雑になっているが…今日も彼らは顔をあわせる。
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