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殺戮を欲する少年の悲痛を謳う。

作者:Ax_Izae
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1話 最初で最後の幸福感(ユーフォリア)

 
前書き
はじめましてこんにちは。アクス、アンダー、アイザです。
戦争物を書いてみました。
この作品は、数々のゲーム、小説にハマった私が感覚だけで書いたダークストーリーです。少し残酷な描写を加えました。気に入っていただけると嬉しいです。

それと、未成年に飲酒、喫煙をさせているシーンが有りますが、法律で禁止されているため、マネをしては行けません。 

 
目を閉じれば嫌でも脳裏によぎる。あの耐え難い激痛と異常なまでの殺意。死を願ったあの瞬間を…
 僕は奴隷だった。普通の子なら小学校に通っている年齢の頃だっただろう。僕は死体処理の仕事をしていた。奴隷として、当たり前に。
 僕を救ったのはほんの一握りの殺意だった。その殺意は、夏場、蚊に向けたものと同じく、痒みの原因を叩き潰す程度の…。

 僕は飼い主を殺した。一瞬の隙だった。本当に一瞬の…。

 僕は毎日のように拷問を受けていた。理由は適当。死体処理が雑、埋める場所が1メートル地点ずれている、仕事が遅いなど…
 拘束具を手摺椅子につけられ、電流の弱いスタンガンを浴びせられる。気絶すると水を被せられ再び目を覚ます。それを毎日50回はやられた。3年耐えぬいた頃…僕の手首を締め付けた枷が壊れたのだ。
 どっちの腕だったか、今は思い出せない。取り敢えず、飼い主は新しい枷を用意した。
 それが隙だった。ほんの一瞬…。
 僕は呻くような高笑いが止まらなかった。枷は腕だけについていたのが救いだった。立ち上がり、木椅子を蹴り壊す。若干、木片が腕に張り付いていたが、僕は気にせず、飼い主の腕を叩きつけた。スタンガンを持った手は関節と逆方向に曲がる。
 叫び声を上げる太った女。僕はその女の鼻を指で摘みとった。
 血飛沫を上げ泣き叫ぶ。
 死体処理をやらされていたため、人間の肉はどうしたら壊れるのか知っていた。しかし、それを生きた人間でやるのは初めてだ。僕と飼い主の立場は逆転した。
 一度、飼い主が趣味でやっている拷問を見たことがある。それを…見様見真似でやった。その時の飼い主の絶望の顔と言ったら。もう最高だった!



 「やなこと思い出した…」
 2キロ先、戦車3台が林から砂漠へと出てきた。僕は高台となっている岩の壁から対戦車ライフル、ゾロターンSー18/100のスコープから覗く。
 「こちらレッド1。敵戦車3台補足」
 無線で現状を報告する。
 僕たちはSRA第三部隊カラーズ。SRAは軍ではなく、ゲリラの集団。言わばレジスタンスで、僕達の部隊はお金の関係で上から武器を調達してもらったことがない。人数も20人弱でものすごく少ない。
 で、今の敵もゲリラだが、向こうはテロ組織だ。
 そして僕は矢渕カリヒ。18歳。
 『こちらブルー2。了解した。目的は散開させて各個撃破、または戦車の捕獲だ』
 ブルー2、カイ・フーさんが応答する。彼は戦車の装填手で、30年くらい前に軍に所属していたらしい。今は65歳なので装填手をさせているが、昔はバリバリ戦車を操縦していたため、ブルー1、リーナ・カーミ、17歳に操縦の指導を行っている。
 そしてカイさんとリーナを含めるコードブルーは1台の軽戦車の部隊なのだ。
 「了解。レッド2。応答せよ」
 僕が無線で問いかけると、アーシャ・K(ケー)・(あがり)が正常に反応する。
 『こちらレッド2』
 「こちらの合図で発砲求む」
 『了解』
 敵戦車が一斉に2時の北方向へと動く。僕の今いる位置だ。
 「こちらレッド1。敵戦車2時へ移動を確認。想定3分後に地雷地点に到達する。爆発と同時に合図をだす」
 先ほど、戦闘前にしかけたものだ。
 『こちらレッド2、了解』
 無線からでもアーシャの緊張感が伝わってくる。
 彼女は16歳という年齢なのに、狙撃の腕はかなりすごい。ただし、実戦経験が少ないため、今回の大掛かりな任務に緊張しているのだろう。
 「レッド2。落ち着いて。目的は牽制。別に弾を当てなくても良いんだ。いくら対戦車ライフルと言っても、当たったって、こんなに離れてたら大したことないし、問題は敵に索敵をさせて囮になることだから。まぁ、囮になると言っても、すぐに離れてもらうから安心して」
 優しい先輩をイメージして無線を送る。
 『は、はい』
 1台が地雷に引っかかった。
 「コードレッド!発砲!」
 僕らはライフルの引き金を引く。
 僕の弾丸は戦車の砲塔をかすめ、地面にめり込む。アーシャの弾道は的確に1台の燃料タンクに当たり、爆発を起こし、大きな煙を上げた。地雷に引っかかり、履帯が外れた戦車からは搭乗員3人が修理のために出てきた。燃料タンクから発火している戦車は消火や、応急修理を行っているだろう。煙で先が見えづらいが、もう一台は履帯を180度回転させ、アーシャの方向へと向かうところが確認できる。
 距離は1・5キロ。僕は弾を切り替え、スコープを覗く。スコープの中でも人は小さく見える。
 僕は狙撃が苦手だ。大雑把な性格で、離れた位置から的を射る事に嫌悪を覚えるほどに下手くそだ。しかし人員が足りていないため、今回は狙撃をして、すぐに白兵戦を行えばいい。
 「レッド2。応答せよ」
 『こちらレッド2』
 「こちらレッド1。敵戦車がレッド2の狙撃位置に移動開始」
 『目視できます』
 「即刻避難せよ」
 『了解』
 「コードイエロー。応答せよ」
 イエローは軽トラックで援護や回収を行う部隊。後ろのトランクの屋根が開いているのでそこから無反動砲を打ち込む事がよくある。
 『こちらイエロー1』
 「こちらレッド1」
 『対戦車砲弾を所持。いつでも攻撃できるわ』
 「いや、レッド2を回収してくれ」
 イエロー1ことミレーナ・ホイッスル。彼女は多少横暴で攻撃的な性格なため、非常に扱いが困難。しかも22で、僕より年上な所が…
 『えー。いいじゃん!戦車と戦わせろよ!』
 「文句言わないでくれよ。僕的には戦車を1台くらいは無傷で回収したいんでね」
 『わあったよ。後でビールおごりな』
 「ビールは高いから獨酒で勘弁して」
 『おい、お前ら。戦場に私情を持ち込むなよ』
 カイさんからお叱りの言葉をいただく。
 「すません」
 陽気な言葉で返答する。ふと思い出すように僕は続ける。
 「と、ついでにコードブルー。主にブルー3に、敵戦車の前3メートル地点に主砲落とせるか?」
 『俺を誰だと思ってる?で、目的は?』
 こいつはサジ・レードボルグ。射手なのだが、自信家で、ナルシストなため、会話をしていてだるいと感じる事が多い。僕と同い年の18歳。
 「撃てると認識するぞ。牽制を頼む」
 煙が消え、視界が良くなったと思いきや、タンクを潰した敵戦車の修理と消火が終わったようで、先ほどの戦車についていく。しかし、速力が削られているため、追いつく気配がない。
 「こちらレッド1。コードイエロー、応答頼む」
 『こちらイエロー2。レッド2の回収完了』
 イエロー2は運転手の九重海彦さん。40歳。とても丁寧な口調で、落ち着いた性格。
 「コードイエローに任務通達。無傷の戦車Aから策敵されないように回りこんで。それからタンクが壊れてのろまな戦車Bと戦闘してくれ」
 『お!良いねぇ!最高じゃん!』
 「でも壊しすぎないでね」
 『わあってるって』
 『こちらブルー3。敵戦車に牽制成功。どうする?』
 「戦闘を開始してくれ」
 『は?こっちはアメリカの軽戦車、M3。向こうはアメリカの中戦車、M26パーシングだ。火力的にきつぞ?』
 「戦車の種類なんか言われても困るなぁ」
 『おい!』
 「なに。1台くらい破壊しても問題ないさ。ただ単純に敵を足止めしてくれればいいさ」
 僕は無線を切り替える。
 「レッド1。敵兵を殲滅する」
 履帯の修理をしている搭乗員に向けて、発砲する。
 敵兵はヘルメットをかぶっているが、対戦車ライフル。今は対物ライフルなのだが、それでヘルメットを貫通し、ヘッドショットを綺麗に決めた。初めてスコープ越しから的に命中させたので、少しテンションが上った。敵は弾道を予測したのか、修理を一時やめ、僕から見て、戦車の背後に隠れる。
 「狙い道理」
 設置した地雷5つ。見た感じ、その中で2つほどに敵戦車は引っかかっている様だった。僕はライフルをアタッシュケースに仕舞い、サブマシンガン、ミネベアを取り出す。ミネベア。僕の愛用の銃で、ハンドガンにも装填できる9mm弾を使用する。1999年。日本のミネベア社が作った機関拳銃だ。
 僕はアタッシュケースをオートバイのトランクに載せ、ミネベアを肩ベルトにつけて腰に下げ、運転する。
 「オイルが残り少ないな」
 僕は無線を取り出す。
 「こちらレッド1。敵兵を補足した。ただちに戦闘を開始する」
 『こちらコードイエロー。了解』
 『コードブルー了解』
 僕はバイクを降り、砂漠と林の境界線が広がる木陰から戦車を覗く。音響センサーで確認して、敵の動きは把握できない。
 僕は取り敢えず、3秒ほど、戦車に向けて引き金を引いた。
 「死にたくなければ投降しろ。命まで奪うつもりはない」
 「1人?」
 敵兵が鏡を反射させてこちらを把握しているようだ。
 「ああ。1人だ」
 すると、2人が同時に出てきてこちらへ寄ってきた。僕は地面に9ミリ弾をバラ撒く。すると弾丸に触れた地雷は爆発し、敵は怯む。
 僕は素早くマガジンを取り替え、銃を向けた。
 敵1人はマシンガンを持っているようで、僕に向けてきた。
 敵が引き金を引くよりも速く、ミネベアを打ち込むと、敵兵の足から首まで弾丸が食い込み、血飛沫を上げ倒れた。
 一瞬、それを見て興奮したが、それを必死に堪え、再び説得する。
 「繰り返す。降伏しろ!」
 「殺せ!」
 僕は生きている敵兵の足を打つ。今は人員の確保がしたい。見方になってくれればいいが…
 「あああ!」
 苦しみながら膝をついた敵の顔面に膝蹴りを放つ。
 敵兵の頬に当たり、血のついた歯が出てきた。
 「っく!殺せよ!拷問は嫌だ!」
 僕は彼の首に向けて思いっきり蹴りを入れた。
 「気絶したかな?」
 履帯を見ると、もうすぐ修理が完了しそうな形まで戻っていた。僕は此処に転がっている溶接用具を使い、見よう見まねで戦車を直した。
 修理を終わらせ、敵兵を戦車の中に詰め、僕も入る。
 中には軽機関銃、M60が2丁入っていた。
 「今回の収穫は、この戦車とM60が3丁かぁ。こちらレッド1。敵戦車と捕虜を確保した。これから向かう。戦況を」
 『こちらブルー2。ちょっと危険かな?逃げながら戦っているよ』
 「そうですか。イエローは?」
 『レッド2ですが、敵戦車と交戦中です。ちょっと足場が悪くて…きゃ!』
 「わかった。今向かうよ」
 僕は戦車を転がす。すると敵の無線が入る。
 『こちらティム。敵車両と交戦中。速力が足りない為逃げられそうだ。応援を頼む』
 『こちらライド。敵戦車と交戦中。有利だが、援護まで当分時間がかかる』
 僕は捕虜のポケットを探り、身分証を見つけた。
 「フランカ・ネパール?こいつらはもしかして名前で呼び合っているのか?」
 僕は試しに無線を使ってみた。
 「こちらフランカ。修理が終わり次第向かいます」
 『了解』
 『ついでに終わったらこちらも来てくれ』
 「了解」
 意外とうまく行ったなぁ。僕はそしてフランカの服の中に武器が無いか確認するため、脱がした。
 「嘘だろ…」
 女性で、胸はかなり大きかった。
 「これで晒巻いてたのか…」
 下着姿の女性の手足を縛り、服を投げた。
 「こ、これでいいかな?」
 バイクに在る荷物を全部戦車に移動させ、僕は操縦席に乗る。
 そして全速力で前進した。
 すると敵戦車と、トラックが逃げながら交戦しているのが見えた。敵戦車は砲撃をするが、全然当たらず、速力もない。
 「こちらレッド1。戦車を操縦中。このまま、コードイエローが交戦中の敵戦車に突進します!」
 『了解!来てくれたんだ。ありがとう』
 ミレーナの声が無線を響かせる。同時に敵の無線も騒ぎ出す。
 『こちらティム。援護感謝する』
 操縦席のレバーをフランカのズボンのベルトで固定し、直進。すぐに砲塔へと乗り込む。主砲の位置をずらし、速力のない戦車へ、装甲と主砲を激突させた。かなりの衝撃で気分が悪くなるが、僕は頑張って主砲の引き金を引く。すると敵の装甲に当たる。普通なら分厚く、砲弾を弾き返されるはずなのにもかかわらず、敵戦車をひっくり返すほどふっ飛ばした。
 「こちらレッド1。どうよ?ミレ…コードイエロー?」
 一瞬本名をいいそうになったが、切り返す。
 『惚れ惚れしちゃうねぇ』
 「そりゃどうも」
 僕は戦車を降り、M26を持つ。そして倒れている敵戦車に近づく。
 「おう。お疲れカリヒ」
 「お疲れ様です。カリヒさん」
 ミレーナとアーシャがトラックから降り、こちらに寄ってくる。
 「お疲れ。じゃあ、まずこの戦車を捕獲だ。運が良ければ敵兵を捕獲したいが、うまくいくかな?」
 本当に運がいい。さっきの衝撃で乗組員全員気絶しているようだ。
 僕は慎重に敵兵3人を引きずりだした。
 「アーシャ。海彦さん。僕のバイク、地雷を置いた地点の林と砂漠の境界線においてきたんだけど、回収頼んでいいかな?」
 「え?アタシもですか?」
 アーシャは首を傾げる。
 「敵の部隊と衝突した時、運転手の海彦さんだけだと心配だからねぇ。で、ミレーナは僕が奪還した戦車に乗ってくれ。君は射手をお願い」
 「おいおい。装填手無しで射手が動けるわけ無いだろ?」
 「一発」
 「…」
 ミレーナは最後まで首を傾げた。
 「こちらレッド1、イエロー1の戦車部隊。敵戦車を略奪した。」
 返事はなかった。少し焦った。僕はすぐに主砲を装填した。
 「撃てる?」
 「もしやばかったら、頭乗り出してRPGを打ち込むよ」
 「ああ。任せたよ」
 戦車を走行させると騒音で会話ができたものじゃない。無線を使う必要があるだろう。
 こちらは履帯にガタが来ている。そろそろやばいだろう。しかし、文句も言ってられないな。
 敵戦車をこちらのモニターで確認する。僕は操縦しながら無線でミレーナに指示を出す。
 「イエロー1。少しスピードを緩める。展望台から撃ってくれ」
 『オッケー。RPGなら3発在るよ』
 ミレーナは敵戦車の履帯に砲弾を直撃させた。敵戦車は一瞬怯む。
 「効いたか?」
 僕はそのまま突進する。敵戦車の砲塔がこちらへ向く。
 僕は右側の履帯の速度を落とし、右へ旋回、再び速度を戻した。ロックオンをされにくくするために蛇行する。
 『レッド1!撃ちづらい』
 「未だ撃つな。ゼロ距離で主砲を叩き込むぞ」
 『わかった!』
 敵戦車の正面装甲から火花が確認できる。
 『ブルー1です!レッド1ですね。感謝します』
 おしとやかのリーナのホッとしたような声が聞こえた。さっきの火花の原因はM6 37ミリ砲。コードブルーの戦車の主砲だろう。コードブルーの扱う戦車は最大人数が4人の軽戦車。しかし、3人しか居ない為、この軽戦車の副武装をなくしているのだ。
 「ああ。レッド1だ。突撃するよ!」
 敵と距離を縮める。主砲2個分の隙間だ。こちらもあちらも主砲があさっての方向を向いている。そこで、ミレーナはRPGを撃ち放つ。敵の展望台に当たり、旋回速度を遅らせる。僕は左の履帯を止め、旋回ながら体当たりをする。その御蔭で砲塔が敵戦車の頭と胴の間に向いた。
 「撃て!」
 『あいよ!』
 ミレーナは落ち着いた口調で引き金を引く。燃料タンクに直撃し、戦車は火を炊く。
 「やった!これで敵は蒸し焼きだろうな」
 『その前に出てくるだろ』
 ブルー3、サジの声が聞こえる。
 「出てきたら捕虜にする。だからブルー2。即座に装填をしてくれ」
 『了解』
 奴らは降伏するように出てきた。
 「すげー。武器だけでなく人員も捕獲できるなんて!」
 その後、僕たちは略奪した戦車をSRAの上層部に渡し、多数のお金を受け取った。
 


 聞いた話によると、フランカ・ネパール以外の捕虜は上層部により、奪われてしまった。こちらは人員が欲しいのに…
 「にしてもカリヒさんは凄いですよね。アタシは安全な所からじゃないと狙撃できないのに、前線に立って銃撃戦をしたり、戦車を操縦したり。もうヒーローみたいです」
 アーシャは待機室で僕に話しかけてきた。
 僕は紙タバコを加え、火をつけた。
 「先日の作戦で、僕が殺した人数は2人だ。その意味。わかるかい?人を殺して評価を得たんだ。何れ僕も何か罪を償わないとね」
 「そ、そうですか」
 「今度射撃でも教えてよ。戦場に出た時、極力殺さずに生け捕りにしたいからさあ」
 彼女と話を進めていると、リーナがやってきた。
 「すみません。カリヒさん。カイさんが呼んでいます」
 「ああ。わかった」
 僕が呼ばれた理由は恐らくフランカ・ネパールのことだろう。
 「やぁ。カリヒ」
 「で、カイさん。要件は、捕虜の少女。フランカ・ネパールと面会することでいいのか?」
 「ああ。正解だ。彼女がどうしても君と話がしたいそうでな」
 「…」
 散々痛めつけられたのに…何を考えているのだ?文句でも言うつもりなのだろうか?
 僕は営倉に向かった。この施設は待機室と研究室と
通信室、営倉がそれぞれマンションのような部屋に連なっていて、部屋の形もすべて似ている。しかもそれぞれ1LDKなのだ。
 待機室は雑魚寝をすると5人でいっぱいになるくらいだ。ちなみに営倉は四方を囲う鉄格子の中に捕虜を入れるのだが、脆すぎて素手で壊せるだろう。
 「よ!」
 「ああ。待ってたよ。カリヒ隊長」
 「隊長はよしてくれよ」
 「でも事実上は隊長なんでしょ?」
 フランカが鉄格子の中から上目遣いで僕を見つめる。
 「ああ。そうなるな。足は大丈夫か?それから奥歯」
 捕まえる前はものすごく険しく、男とも見受けられる表情を纏っていたのにもかかわらず、今はものすごく話しやすく、女の子のようだ。
 「大丈夫じゃないけど、恨んじゃいないよ。だって一応警告してくれてたんだし。それに従わなかったアタシが悪いよ」
 「良かった。それで、君に問いたいことがある。うちは確かにゲリラ組織っぽいが、実際はレジスタンスを目指している感じなんだ。君たちの所の情報を提示してくれるとありがたい」
 アーシャは包み隠さずに言葉をつなげた。
 「そうだね。奴らはテロ組織だよ。この世界をあなた達とは逆方向に変革させようとしているの」
 「つまり、僕らは政治権の略奪だが、奴らは現世界を破壊するのが目的と言うわけだな」
 今現在、この世界を取りまとめている、シャルラッハート・ワシントン。アメリカの首相なのだが、はっきり言ってこの世界を裏から支配しているような人間だ。それが見え隠れしているところが、僕らは気に食わない。彼は世界の形を変えた。悪い方向へと変えた。まずは、全世界に三度、四度と奴隷制度を作った。普通なら批判されるのが筋だが、どんな魔術を使ったのか知らないが誘導するように全世界に促した。僕らレジスタンスの半数以上は奴隷だ。
 しかし、敵の敵は味方とも言うのにもかかわらず、僕らゲリラ組織とやつらテロ組織が昨日、戦闘を起こしていたのには理由がある。奴らにはアメリカ軍へのパイプが有ったからだ。短気に暴怒した上官は僕らを派遣して奴らを殲滅せよと任務を与えてきた。
 「カリヒ。もし良かったらアタシ。SRAに入るよ」
 「本当か?それは嬉しいな」
 うちは人手が足りない。営倉に捕虜を入れるのはそれが原因だったりする。
 
 僕は彼女の肩を担ぎ、通信室へと連れて行く。
 「カイさん。終わったよ」
 「フランカ・ネパール。16歳。SRA第三部隊カラーズに所属します」
 フランカは通信室の中にいるカイさんに敬礼をした。
 「そ、そうか。意外と簡単に説得が進んだようだな」
 「あ、アタシ、以前は技術者をやっていました」
 「ああ。じゃあ武器の手入れとかを頼んでいいかな?」
 「はい!」


 
 僕は研究室にフランカを案内した。この研究室は以前博士と呼ばれていた中年男性が取りまとめていたが、上の連中がその腕を見越して第三部隊から第一部隊へと昇格させた。そのため此処は蛻の殻。最低限の筆記用具と最低限のコピー用紙。それから最低限の武器のパーツと弾薬だ。
 「これだけだ」
 「そ、そう。ねぇ。そう言えば、あなた達ってトラック持っていたわよねぇ?」
 「そうだな。トラックから無反動砲を使うんだ」
 「それと、戦車は?」
 「ああ。M3が在る」
 「リー?」
 「違うよ」
 「軽戦車のほうかぁ。副武装外しているの?」
 「ああ。乗組員が足りないからな」
 「それは今ある?」
 「どうだろう?」
  
 3日が経過した。僕は外で、アーシャと射撃の練習をしていた。もしも以前のように僕がスナイプを行う時が来たら少しでも役に立ちたいからだ。
 「目標よりも少ししたを狙ってください」
 「ああ」
 俺は猟銃サイズのライフルで、空き缶を狙う。
 「カリヒ!」
 いきなりフランカの声が聞こえ焦って引き金を引いた。
 すると缶から3センチずれて弾丸が飛んでいった。
 「あ、ごめん。今空気呼んで話しかけなきゃ良かったね」
 「いきなりなんだ?」
 「トラックに機関銃をつけてみた。しかも取り外し可能。どう?」
 「俺に言われても…ミレーナに聞いてくれよ」
 ミレーナは上層部の連中に交渉してRPGを安値で買いに、セリに行っている。
 だから正直今は相談できないだろう。まぁ、ミレーナのことだから、彼女は武器が追加されて起こるか喜ぶかのどっちかだろう。
 「でさぁ、ミレーナって人はどんな性格の人?」
 「横暴、単純、馬鹿」
 僕は冷めた口調で唱えると、頭部に激痛が走った。
 「いってーーーーーー!」
 「誰が馬鹿だ!横暴と単純は認めるけどよう」
 激痛の原因はミレーナだった。ミレーナの右手にはハンドガン、トカレフが有った。
 「ミレーナさん!酷いです!カリヒさんは…」
 アーシャは僕の後ろに隠れる。
 「えっと…ミレーナさんはいつもやり過ぎです」
 ミレーナの睨みで、アーシャはすくんでいる。そのせいで文句が言えない。
 「おいミレーナ。僕は兎も角、アーシャを脅すのはお門違いだろ」
 「っち。カリヒは優しいねぇ。まあ、いいさ。で、なんで私のトラックに機銃が積まれているんだ?」
 フランカは僕の後ろに隠れる。
 「あ、アタシがやりました…」
 ミレーナの睨みの攻撃力はやたら強く、2人の美少女は怯えて僕の背中に隠れる。
 「ありがとうね。牽制に使えるよ」
 唐突に優しくなる声に、フランカは落ち着いたようだ。
 ミレーナは酒と2回連呼して、待機室へ戻っていた。
 仲間が増える瞬間はとてもうれしく、幸福を感じる。今までどおり仲間とワイワイ騒ぎ、僕はこれほど平和を経験したのは最初で最後だった…

                              続く… 
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