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異世界に呼ばれたら、魔法が使えるようになりました。

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倒せたようです

 取り出した魔道書“ニートナ備忘録”をめくっていく。
 歩きながら読んでいる時に見つけた魔法だ。
 土を操る魔法の一種であるらしい。

 それも敵に対しての攻撃系だ。
 こんなピンポイントで使える魔法が会ってよかったと思っているとそこで魔導書がその本体をよじるようにグニッと曲がる。
 字が読みにくい。
 
 なので恨めしそうに僕はその元凶であるエイダを見て、

「本を覗き見するのはやめていただけますか?」
「いいじゃないちょっとくらい。この本はケチね」
「それだけ危険な魔法なのでは?」
「まあ、攻撃魔法は適性を確認するけれども、教育やら何やらするものだしね……って、ちょ、何をするのよ!」

 そこでレイアがエイダの襟首を引っ張りズルズルと僕から離れていく。
 それにエイダが、

「ちょっと何をするのよ!」
「颯太の邪魔をしないでください。今が危機的な状況だと分かっているのですか?」
「う、それは……」

 と言った話している間に、僕はそれをようやく読み力を込める。
 ギュッと握ったその元となるそれが膨れ上がっていくのを感じる。
 やがて四角い棒状のものが僕の手に現れる。

 土系の魔法は緑色のものになるらしいと思いながら、すぐにそれを使うイメージをしてその“魔法結晶石”を発動させる。
 緑色の光を帯びた光の魔法陣が浮かび上がると同時に僕はそれをあの白い生物の前に投げる。
 投げた“魔法結晶石”は地面に転がると、その場所で薄く緑がかった光が走り魔法陣を描いていく。

 少し強めに設定したのと、範囲をあの“白毛玉”くらいの大きさを捕らえられるよう僕が意識したので地面に浮かび上がった魔法陣は今まで見た中で一番大きい。
 これくらいの大きさならば十分捕らえられる。
 そう思った矢先にその“白毛玉”が大きな咆哮を上げて凍るの鎖を引きちぎる。

「あら~、結構自信作だったんだけれど、これくらいしか持たないか」

 リリアが目玉焼きをうっかり焦がしてしまったというような気軽さで、残念そうに呟く。
 その“白毛玉”は再び僕達の方に向かって動き出す。
 そんなに僕達は上等な“エサ”に見えるのだろうかと思ったが、そんな事を考えている内に僕の作り上げた魔法陣に向かってその“白毛玉”は突進していく。
 
 やがてその魔法陣の所に来たのを確認して僕は呟いた。

「“大地の牙(アース・ファング)”」

 小さくつぶやくとそれに反応するように大地から幾つもの鍾乳石のような先の尖った塊が現れて“白毛玉”を突き刺す。
 白毛玉が大きな声でなにか鳴いたかと思うと、即座に塵となって消える。
 あれほど僕達を恐怖に陥れた怪物の最後はあっけないもののきがする。

 それともこの魔法が強いのだろうか。
 よく見るとその変化した大地の先端は細い鏃のようになって鋭く光沢がある。
 しかも薄っすらと緑色の魔法が覆っている。

 その影響もあるのだろうけれど、

「もしかしてこの魔道書に載っている魔法って、はじめの方にあるものでもすごく危険なんじゃ……」
「伝説の魔導書なのでそうかもしれません」

 僕が冷や汗を垂らしながら呟くと、そうレイアが頷いたのだった。





 
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