| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

大蛇

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

5部分:第五章


第五章

「捕まえるとなるとそれこそ軍隊でも連れて来ないと」
「写真を撮るつもりじゃ」
 博士が考えているのはこれであった。
「写真に撮ってそれを証拠にするつもりじゃ」
「成程」
「検証させてもう。それでどうじゃ」
「いいんじゃないですか?」
 ドウモトはこう応えてそれに頷いた。
「それで」
「そうじゃな。ではパンチョ君」
「はい」
「君も写真は常に持っておいてくれよ」
「わかってますよ。それにしても」
「何じゃ?」
「いえ、このビンガですけれど」
 今飲んでいるその酒である。瓶から豪快にラッパ飲みしている。ドウモトもそうしているが博士はガラスのコップに入れてそれで飲んでいる。
「またえらく効きますね」
「はじめて飲んだわけではないだろうに」
 そんなことを言うのかと突っ込みを入れる博士だった。博士も同じものを飲んでいるがこちらは何ともない顔で静かに飲み続けている。
「何を今更言っておるのじゃ」
「このビンガは特別効きますよ」
 しかしそれでも彼は言うのだった。
「何か特に」
「ああ、このビンガは普通のビンガより強いですよ」
 ここでドウモトが二人に言ってきた。
「ちょっとばかりですけれどね」
「ああ、やっぱりそうだったんですね」
 それを聞いて納得した顔になるパンチョだった。
「だからですか。飲んでいて来るものがあるのは」
「そういうことですよ。それでですね」
「はい」
「夜は弟が見張りをしていますけれど」
「後でわしが行く」
「いや、そんなに飲んでですか?」
 ドウモトはそのビンガを飲み続ける博士を見ながら止めようとしてきた。
「危ないですよ。足下がふらふらして落ちたら」
「何、大丈夫じゃ」
 しかし博士は笑ってこう返すのであった。
「わしは酒でふらつくことはないんじゃよ」
「そうなんですか」
「ああ、博士は殆ど酔わないんですよ」
 パンチャもここで彼にこのことを話したのだった。
「ですから大丈夫です」
「だといいんですけれどね」
「アナコンダは夜行性じゃ」
 そのことをよく知っている博士であった。蛇というものは夜行性のものが多いものである。アナコンダは夜のアマゾンを動き回るのである。
「なら夜にこそ見なければのう」
「では出られるんですね」
「酒を飲み終えればすぐに向かうぞ」
 こうまで言うのであった。
「それでよいな」
「ええ、そこまで仰るのでしたら」
 ドウモトも止めはしなかった。
「御願いします」
「うむ」
 こんな調子でドン=キホーテ一行はアマゾンを幻の大蛇を探し求めて冒険をはじめていた。そうして数日経った。そしてある日のことだった。
 朝だった。朝日が昇る中左右のジャングルから鳥や猿の鳴き声が聞こえてくる。それぞれ左右の岸が遠くに見えるような距離だがその声は聞こえてきていた。
「相変わらず凄い鳴き声ですね」
「アマゾンじゃぞ」
 博士はだからだというのだった。
「それこそジャングルの中は様々な生き物がおるからのう」
「サンゴヘビとかパイソンとかですよね」
「蛇ばかりじゃな」
「蛇は鳴きませんですけれどね。それでもですよ」
 そうしたものがいるというのである。
「毒蛇に人を食うのが」
「アナコンダも人を食いかねんぞ」
「ですから実は警戒してます」
 実際にその顔を強張らせているパンチョだった。既にその側にはショットガンを置いて何時でも何かがあれば撃てるようにしている。
 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧