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DIGIMONSTORY CYBERSLEUTH ~我が身は誰かの為に~

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Chapter2「父を探して 山科悠子の依頼」
  Story10:依頼完了 残る謎

 
前書き
 
 取りあえず今回は短く、というか閉めのような感じで。
  

 
 





「ご苦労だったな、タクミ」

「はい…それで、どうでした?」

「あぁ。山科誠のアカウントが解放されたおかげで、アカウント情報をサルベージすることができたよ」


 ということは、それで山科誠さんも見つけられるかもしれないな。


「現住所も既に確認済みだ。その過程で入手した彼の家族構成を調べたところ、面白い事実が浮かび上がった」

「面白い…?」

「依頼人―――“山科悠子”と、サルベージした情報の中にある彼の娘の情報が明らかに食い違っている」

「―――は…?」


 依頼人として来た彼女と、山科誠の娘が“同じ人物ではない”―――そう言うことなのか?
 いや、でも…なんで…?


「やはり…というべきか、あまりにも浅はかというべきか」

「え、暮海さん何かわかってるんですか!?」

「ん? キミにはまだわからないのかい? …ふふ、どうやら我々の主従関係はしばらく安泰だな」


 そ、それってどういう…?


「とにかく、山科誠の現住所へ向かうとしよう」

「で、でも誠さんは行方不明なんじゃ…?」

「ふふ…失踪中の山科誠の住まいに、一体何が出てくるか…確かめてみようじゃないか」
























 インターホンを押すと、扉の奥から男の人の声が聞こえてくる。


「―――はい、どちら様ですか?」


 そう言って出てきたのは、眼鏡をかけた男性だった。少し細身に見えるな…インテリ系だろうか?


「こんにちは、こちらは山科さんのご自宅で間違いないですか?」

「そうですが…あなた方は?」

「いえ、実は、人を探していまして。…失礼ですが、あなたのお名前を伺っても?」

「…え? 私は、『山科誠』だが…」


 ……………え? この人が、山科誠さん? え、行方不明だったんじゃないんですか?


「では、山科誠さん。一つお聞きします。この近くで行方不明者が出たらしいのですが…その人物に心当たりなどは?」

「行方不明になった人物? いや、私には全く心当たりないが…」

「そうですか…ご家族の方にも、お話を伺いたいのですが」

「あ、あいにくだが…妻も娘も外出していて…」

「娘さんは今どこに…?」





「―――パパ? どうしたの?」





 突然聞こえてきた女の子の声。後ろから聞こえてきたその声に合わせて、後ろへ振り返った。
 そこにいたのは、だいたい俺より年下―――高校生? ぐらいの女の子が立っていた。かわいらしい服を着た女の子だ。

 ……って、パパ? まさか…


「あぁ、帰ってきたか。これが娘の『チカ』です」

「チカさん、ですか…?」

「チカ、丁度良かった。お前と話をしたいって人が来ていてね」

「私に…?」


 山科、チカさん……でも、この間依頼に来た“娘”さんは、山科“悠子”さんなんじゃ…?


「…? な、何ですか…?」

「あ、いや、何でもないです…」


 …ダメだ、何も分からん……ここは、暮海さんに任せた方がよさそうだ。
 そう思い、視線を彼女に向ける。それを受け取ったからなのだろうか、彼女は少し微笑んでから口を開いた。


「こちらが山科さんの娘さん、ですか? 他にお子さんは?」

「いや、チカ一人だが…どうしてそんな事を…?」

「……あなた達、一体何なの?」

「それが、この近くで行方不明になった人がいるらしいんだ。お前、心当たりあるか?」

「行方不明? …う、ううん、知らない…聞いたことない」


 尋ねられたチカさんは、少し考える様子を見せてから、そう答えた。


「…だ、そうです。すいませんね、力になれなくて」

「いえ、ご協力感謝します。おかげで、必要な情報を手に入れることができました」


 え、ここまでの質問で!? 必要なもの全部ですか!?


「ところで…山科さん、お気づきでしたか? あなたのEDENアカウントは乗っ取られていました」

「………EDEN…?」

「しかし、ご安心を。既にアカウントは取り返してあります。使用しても問題ありません」


 しかしその言葉を聞いた山科誠さんは、顔を覆いつつ顔を歪めていた。


「ん? 山科誠さん、どうかしましたか?」

「―――か、帰ってください!!」

「え…?」
「ん…?」

「い、いいから早く帰って! 行方不明のことなんか知らないって言ってるじゃない!? 行こう、パパ!」


 明らかに様子が変わった誠さんに、チカさんも焦った様子で声を荒げた。
 そして頭を抱える誠さんを押し、室内へ戻しながら扉を閉めてしまった。


「…ふむ、強引に追い返されてしまったな」

「どうしたんですかね…何であんな風に…」

「しかしその分、得られた情報は大きかったようだ」


 そのようですね、と言いながら頷いて答えた。


「山科誠の本当の娘は、この山科チカで間違いない」

「その、ようですね…となると、あの依頼人は…?」

「あぁ、彼女は山科誠の娘を語って依頼して来た…という事になるな」


 そうだよな~…でもどうして偽ったりしたんだろう。


「騙(かた)った理由について、大して興味はない。だが、依頼人が山科誠の何を探りたいのか…背後関係に、何があるのか……大いに興味をそそられるところだ」


 いや、そう言った理由も俺は気になりますけど…


「そして、気になることはもう一つ…」

「え…? まだ何か?」

「…ま、それは置いておくとしよう。依頼人は、また事務所を訪れると言っていた。お楽しみの到着を、珈琲でも啜りながら待とうじゃないか」


 …げ、コーヒー…それは勘弁して欲しいです。やるなら俺が作りますから。
 というか、もう一つの気になることって…先程の山科さんの反応のことだろうか?


「さぁ、事務所へ戻ろう」

「は、はい…」


 俺、まさ死にたくないな…
























「…どうも」


 静かにそう言う彼女は、ここを去る時に言った通りに事務所に戻ってきた。


「来たか…予想していたより随分早い。やはり優秀な依頼人のようだ。どうぞ、ソファへ。調査は終了しました、結果を報告しましょう」

「………!!」


 暮海さんの口から聞いた言葉に、彼女は表情を険しくする。
 そしてそんな表情のまま、暮海さんに言われた通り依頼人用のソファに座り、暮海さんから今回の調査についての話を聞き始めた。










「―――…と、以上が今回の調査結果です」

「………………」

「アカウント狩りには、ザクソンというハッカーチームが絡んでいました」

「……! ザクソンが…?」


 暮海さんの報告を黙って聞いていた彼女が、ザクソンの名前に初めて大きな驚きを見せた。


「山科誠は行方不明でも何でもなく、普通に生活しています。“娘”のチカと妻と三人、仲睦まじく」

「………」


 そこで暮海さん、あからさまに調査で明らかになった矛盾を提示する。
 彼女はそれに対し、押し黙るだけで特にこれと言った反応は見せなかった。


「…では、今回の調査はこれで終了とさせていただくが、よろしいか?」

「……………はい、問題ありません…ありがとうございました」


 問題ない? 今しがた調査で露わになった矛盾点を言われたのに?


「…君は一体―――“誰”なんですか?」

「………………、“また”来ます」


 そう言うと、彼女は俺の質問に答えることなく、踵を返しそのまま去ろうとする。


「いつでもどうぞ、次は是非本名でいらしてください。―――『神代(かみしろ)悠子』さん?」

「え…!?」

「ッ! …………」


 その後ろ姿へ投げかけられる言葉、それは彼女―――“神代悠子”さんの足を止めた。
 しかし少し沈黙が過ぎるとすぐ、彼女は歩き出し事務所から出ていった。


「…く、暮海さん。彼女―――神代って…」

「あぁ、キミが今考えている通りだ」


 ふふ、さてどうなるかな。
 そんな一言を付け加えて、暮海さんは奥の部屋へと続く扉へと向かっていった。

 …はぁ、やっぱりわかんねぇことが多いな。
 なんで彼女はあんな依頼を? 調査を進めて行けば、自分が山科誠の娘でないことがバレるのは目に見えているのに。
 それに、神代ってことは……


「―――さて、依頼も終わったことだ。少し息抜きと行こう」

「あ、そうです…ね……」


 そこへ戻ってきた暮海さん。その手には……コーヒーが二つ、湯気を立てていた。


「ふふ…飲むかい?」

「…イエス、マム……」


 死刑勧告とも取れる言葉に、俺は肩を落としそう答えた。
 はぁ…死にたくない……
























 ―――ん? コーヒーの味? 意識が飛んだからわからんが…

 意識が飛ぶ前、世にも美しいエンジェウーモンが見えたとだけ、記しておこう。





  
 

 
後書き
 
 世にも美しいエンジェウーモン:まさに、否まさしく天使。





 早く書けたけど、この分量ではな……
 さて次回からはChapter3―――ではなく、その前の本編外(?)の依頼(クエスト)を書こうと思います。取りあえず二本程。それからChapter3に行こうと思います。

 で、小説の方はライダーを更新しようかと。区切りがいいので。
 ご指摘ご感想お待ちしています。ではまた次回、お会いしましょう~ノシ
  
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