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子供でも

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第一章

               子供でも
 不動暁は本屋の中でだ、一緒に本を物色している飛鳥未到に言った。
「間違っても変なコーナーには行けないな」
「変な?」
「ああ、エロ本のコーナーな」
 そこにというのだ、暁はその猛々しいバイオレンスな感じの顔で白い肌に青い目だがアジア系の顔立ちの未到に言った。
「そこには行けないな」
「若し行けばか」
「ここで同じ学校の女の子が来たらな」
 二人が今いる本屋は二人が通っている高校のすぐ傍だ、それでこう言ったのだ。
「アウトだからな」
「俺達はドスケベ認定されてか」
「学校で何言われるかわからないぞ」
 そのワイルドな髪に手を当てつつだ、暁は言うのだ。未到のもみあげのところが直角になった独特の髪型を見ながら。
「ましてやDVDのコーナーでな」
「アダルトのところにいて見付かったらか」
「アウトだろ」
「それはそうだな」
 未到も暁のその言葉に頷いた。
「俺も御前もな」
「ああ、だからな」
「ここはか」
「少なくとも今この本屋さんではな」
「そうした場所には近寄らない」
「そうしような」
 こう言うのだった、未到に。
「普通の漫画とかライトノベルのコーナーに行こうな」
「確かにその通りだな、けれどな」
「けれど。どうしたんだ」
「あれを見るんだ、暁」
 未到はその本屋の中のそうした本のコーナーのところをだ、指差して暁に言った。見ればそこにまだ小学校低学年と思われる子供がいてだった。
 何かと漫画を見ていた、その光景を指差して暁に言うのだ。
「あれはいいのか」
「いい筈がないだろ」
 顔を顰めさせてだ、暁は未到に答えた。
「あんなことは」
「そうだな、しかしな」
「それでもだな」
「俺達はあのコーナーには行けないぞ」
 未到は真顔で暁に忠告した。
「絶対にな」
「ああ、谷崎潤一郎や永井荷風の本を買ってもな」
「学校の女の子に見つかったら言われるぞ」
「どっちの作家さんでもな」
 谷崎も荷風も耽美派だ、三島由紀夫は谷崎の本を読んでいて彼女の叔母に変態小説を読んでいるのかと言われたのだ。
「アウトだからな」
「滅多な本は買えない」
「本当にな、けれどな」
「子供はな」
「何も知らないからな」 
 純真な存在だ、そう思われているからだ。
「許されるんだよな」
「そうだな」
「何も知らないから買える」
「子供だから許される」
「子供はいいよな」
「俺達も昔はそうだったな」
「女風呂にだって入られた」
 銭湯のだ。
「それが今はな」
「女湯には入ることが出来ない」
「そしてあのコーナーにだってな」
「行けない」
「辛いな」
「子供が羨ましい」
「あの子がな」
 切実に思うのだった、二人共。
 しかしだ、ここでだった。 
 ふとだ、暁は未到にこんなことを言ったのだった。
「いいことを思いついたんだがな」
「どうした、暁」
「ああ、子供に頼んでそうした本を買ってもらうってどうだ?」
 暁は邪悪な、そして変態じみた笑みで未到に提案した。 
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