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三十五歳独身が

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第一章

                 三十五歳独身が
 宮村祐加奈は遂にだった。
 三十五歳になった、それで友人達と一緒にお茶を飲んでいる時にこうぼやいた。
「私もね」
「四捨五入して四十歳」
「アラフォー突入ね」
「それも独身彼氏なしで」
「当然子供もいない」
「尚且つ結婚経験なしで」
「彼氏いない歴も七年目突入ね」
 友人達も言うのだった。
「何ていうかね」
「三十四と三十五じゃね」
「全然違うわよね」
「野球選手でもそうだけれどね」
「三十五になるとね」
「松坂がね」
 ここでだ、祐加奈はソフトバンクのピッチャーの名前を出した。
「その歳でね」
「あんたもね」
「松坂みたいにね」
「というか年齢一緒だから」
「三十五に突入ね」
「やれやれよ」 
 そのやや釣り目のアーモンド型の狐を思わせる目で言った。顔の形は面長で頬の辺りはすっきりしていて顎のところは細い。
 唇は紅で小さめで眉は黒く細く奇麗なカーブを描いている。長い黒髪をセットして波立たせている。胸は服の上からもはっきり出ている位に大きい。
「もうね」
「仕事仕事でね」
「総合職でバリバリやって」
「気付いたら遂に」
「三十五歳ね」
「あんた達含めて学生時代の友達は皆結婚して」
 こうも言った祐加奈だった。
「同期もね」
「皆結婚してるのね」
「それか彼氏持ちね」
「どっちにしてもそっちは充実してる」
「けれどあんたは」
「そうよ、独身で彼氏いない歴七年」 
 自分からも言った祐加奈だった。
「やれやれよ」
「気分的にね」
「辛いところよね」
「女も三十五になるとね」
「焦るから」
「実際三十四から三十五になってね」
 一歳だがそれでもその違いはというと。
「焦り方が違うわ」
「そろそろ高齢出産だしね」
「赤ちゃん産むにしても」
「それに老後とかね」
「色々気になりだすわよね」
「仕事は充実してるし」
 祐加奈は溜息と共に言った。
「健康でね」
「顔もいいし」
「爆乳は健在でね」
「あんた脚も奇麗だし」
「声だって可愛いのに」
「それでもね」
「外見はいいの、大事なのは年齢よ」
 自分ではこう認識していて実際に言う祐加奈だった。
「三十五、もうね」
「相手がいないまま」
「それで焦る」
「じゃあ今のあんたの願いは」
「やっぱり」
「結婚よ」
 一言だった。
「結婚したいわ」
「やっぱりそうなるわね」
「結婚して家庭持ってね」
「子供も産んで」
「老後もよね」
「旦那様募集中よ」
 切実な言葉だった。 
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