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呼んで欲しくない者 

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第四章

「確か」
「それはそうだが」
「だからスーパーで買って来たんだけれど」
「肝もか」
「そうだよ」
「それはわかるが」
 しかしというのだ。
「毎度毎度な」
「スーパーの鶏肉じゃ駄目?」
「首を切って血も捧げるとかないのか」
「そんなの売ってないよ」 
 郁夫はここでも平然としている。
「お肉屋さんでも」
「そして菓子だが」
「うん、どうかなって思って」
「捧げものにか」
「ワインもあるよ」
 出してきたのはスーパーで五百円位で売っているものだった。ボトルにすら入っていないプラスチックの容器のものだ。
「ちゃんと赤ワインだよ」
「飲んだら悪酔いしそうだな」
 そのワインについてもだ、アスモデウスは言及した。
「実にな」
「嫌い?」
「余は魔界の大公だぞ」
 このことからだ、アスモデウスは言うのだった。
「大公ならだ」
「いいワインを?」
「所望するがだ」
「けれどお小遣いがね」
「わかっている、そのこともな」
「じゃあいいよね」
「構わん、と言うしかない」
 実に忌々しげに言うアスモデウスだった。
「とにかく御主余と契約してか」
「この娘と付き合って結婚したいんだ」
「そして子を為したいのだな」
「いや、そこまで言うんだ」
「これ位は普通だ」
 アスモデウスの悪魔生経験から言えばだ。
「何でもないことだ」
「そんな、キスだけじゃなくて」
「そんな契約でいいのならこうした供物でもいいが」
 魔界の大公の力を以てすれば造作もないことだというのだ。
「しかし御主も余を見て何も思わないな」
「思うって何が?」
「余を恐れぬのだな」
「怖いけれどね。けれど僕魔法陣に入ってるし」
 自分を守る為のだ。
「契約してもらうだけだから」
「魂を貰うがいいのだな」
「死んでからだよね」
「余の領土の領民になるが」
「いいよ、わかってて契約するんだし」
 ここでもだ、郁夫は平然としている。
「魂のこともね」
「悪魔の世界に入ってもだな」
「全然いいよ、この娘と結婚出来て一生過ごせるのなら」
「天国に行きたくないのだな」 
 確認も取った、無駄だろ知りながらも。
「仏教の」
「地獄に落ちるよりいいんじゃない?」
「消去法か」
「お坊さんに教えてもらった地獄てえぐいから」
「仏教に地獄もそうだな」
「天国に行きたいことは行きたいけれど」 
 それでもというのだ。
「行けそうにもないし。じゃあね」
「魔界か」
「死んでからはそこでもいいかなってね。別に地獄みたいに拷問とかしないよね」
「無闇に領民を虐げる魔神なぞおらぬ」
 そうしたものだというのだ。
「そんなことをしても意味がない」
「魔界で働けばいいんだよね」
「サラリーマンか」
 現代日本の言葉も出した。 
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