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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第五十四話 夜の出来事その四

「悪いところは何もないよ」
「身体のか」
「うん、別にね」
「ならいい、人間健康であることが一番いいことだ」
「親父いつも僕に言ってたね」
「幸福の原点にいるってことだ」
 健康でいること自体がというのだ。
「だからな」
「それでだよね」
「いいことだ、これからも健康でいろよ」
「わかってるよ、健康には気をつけるから」
「それじゃあな」
「うん、またね」
 電話のやり取りは終わってだ、親父は電話を切った。そのやり取りが終わってからだ、小野さんはまた僕に言って来た。
「いい感じでしたね」
「親父と?」
「はい、聴いていますと」
 温かい笑顔での言葉だった。
「そんな感じでした」
「そうでしょうか」
「嫌いならです」 
 若しそうならともだ、小野さんは僕に話した。
「最初から電話を切っておられますね」
「そういえば」
 言われてだ、僕も気付いた。
「僕嫌いな人とは会話しません」
「左様ですね」
「他の人もそうですけれど」
 僕は特にだ。
「嫌いな人とはお話しません」
「それも全くですね」
「あとそうした人見ると顔は変わるとも言われてます」
「表情がですね」
「もう一発で変わるって」
 皆に言われている。
「そんな風に」
「ですが先程の義和様はです」
「表情変わってなかったですか」
「色々と変わっておられましたが」
 それでもというのだ。
「別にです」
「嫌そうな表情はですか」
「見られませんでした」
「そうだったんですね」
「はい、特に」
「そうだったんですか」
「それにです」 
 さらにとだ、小野さんは僕に言って来た。
「目が笑っておられました」
「目もですか」
「はい、とても」
「まあ確かに親父は無茶苦茶な人間です」
 小野さんにもだ、僕はこう言った。
「ですか最低な人じゃないです」
「そうですね」
「借金は作らないですし暴力も振るわないですし」
 それにだ。
「麻薬もしない、お家にもお金を入れてお料理も作ってくれます」
「義和様の為にですね」
「ほったらかしにされたことはないです」
 それこそ一度たりともだ。
「ずっと大事にしてもらっています」
「ですから義和様もです」
「親父のことが嫌いじゃないんですね」
「そう思いましたが」
「まあ。多分大嫌いって言っても」
 そう言ってもだ、自分で思った。
「目も顔も笑っていると思います」
「それでは大嫌いではないです」
「そうですよね」
 僕は思わず笑ってこう返した。
「それこそあからさまに嫌そうな顔で言いますね」
「大嫌いだって」
「はい、ですから」
 それでだった、まさに。 
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