魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~
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Epico43知っても良し経験しても良し
前書き
知っても良し経験しても良し/意:知って学ぶだけでも良い事だが、実際に経験して学ぶのもまた良い事、というたとえ。
†††Sideなのは†††
雪合戦の後は、みんな仲良く雪だるまを作ることになった。場所は雪合戦をしたところとは別の、まだ誰も足跡を付けてない綺麗な雪が残る裏庭。アイリ(呼び捨てで良いってことだから)が期待してたかまくらは、さすがにそこまでの雪は無いから諦めることになっちゃったんだけど・・・
「アイリは1つずつじっくりと思い出を作っていきたいから、今日1日で全部やろうって思わないんだよね」
「お、良いこと言うなアイリ。一気に片付けるよりのんびり楽しむ方が良いよな」
「おい、ルシル、アイリ。しっかり転がさねぇとデコボコになんだろうが」
アイリはそう言って、ルシル君やヴィータちゃんと一緒に雪だるまの頭の部分を作り続ける。胴体を作るのは、はやてちゃんとシグナムさんとシャマル先生とザフィーラの八神家。ちなみに他の私たちは、小さな雪だるまや「ふわぁ♪ 雪で作ったウサギですぅ♪」リンゴで作るようなウサギを作ってリインに見せて喜ばせてる。
「ねぇねぇ、正月だけど今年もみんなでお参りするよね?」
小さな雪ネコ(完成度高いし可愛いでビックリした)軍団を作るシャルちゃんがそう訊いてきた。去年とは違って本格的に管理局の仕事を始めてるから休暇スケジュールも合わない日も当然ある。だけどリンディさんがチーム海鳴のお正月休暇を合わせてくれたから、今年もみんな揃って海鳴市でお正月を過ごせることになった。
「もちろんやよ。今年はリインとアイリがお初やしな」
「お正月ってこの世界のイベントなんだよね? アニメでしか観たことないから今からすっごく楽しみなんだよ♪」
「リインもすごく楽しみです♪」
リインとアイリがうっとりと空を見上げて思いを馳せる。シャルちゃんも去年はあんな感じだったっけ。当時のことを振り返っていたら「きゃあ!?」アイリが悲鳴を上げた。雪ウサギを作る手を止めてそっちを見ると「重い~」アイリが頭部になる雪玉に押し潰されちゃってた。ルシル君とヴィータちゃんとアイリの3人で作った雪玉は結構な大きさで、ルシル君とヴィータちゃんですらも退けるのに少しもたついた。
「おいおい、大丈夫かい?」
「あぅ~、ありがとう、アルフ」
人型形態のアルフが軽々と雪玉を持ち上げてアイリを救出したことで事なきを得た。そして、シグナムさん達が作った子供組の身長を超すほどに大きな雪玉に、今度はルシル君たちとアルフの4人で「せぇーの!」雪玉を持ち上げて胴体の雪玉の上に乗せた。雪だるまの基礎部分がこれで完成。あとは・・・
「アイリ。木の枝を拾って来たよ。使い方は判る?」
「うんっ。コレが手なんだよね」
すずかちゃんが雪だるまの完成に必要な部品の1つである枝をアイリに手渡した。太さと長さがあるから、アイリは迷わず胴体の両側に突き刺すと、「アイリ、俺の手袋を使え」ルシル君が手袋をアイリに手渡した。
「ありがとう♪ ・・・うん、なかなか」
ルシル君の手袋を木の枝の先に引っ掛けることで雪だるまの手は完成した。あとは顔を作るだけ。それに必要な枝は「ちょうど良い細さの見つけたよ」アリシアちゃんが用意済みだった。
「アリシアありがと! それじゃ・・・これで・・・」
アイリが雪だるまの表情を作るために、受け取った枝を引っ付けた。でも(⁻₋⁻)こんな形だから「なんか変・・・」その出来に不満そう。だから「アイリ。こうすると良いよ」私が3本の枝の真ん中を折って曲げるっていう細工をちょこっとだけして(^v^)無表情から笑顔に変えてみる。
「なのは、すごい! とても可愛くなったよ♪」
アイリのキラキラな笑顔には「喜んでもらえて嬉しいよ♪」私も自然と笑顔になる。そして「完成だね♪」アイリが雪だるまの完成に満面の笑顔で万歳して喜んでるから、私たちも微笑ましくなって「おめでとう!」拍手や万歳で喜びを分かち合う。
「よし。写真だ、写真を撮ろう!」
ルシル君が携帯電話を構えて私たちに雪だるまの側に集まるように言った。リインとアイリが一番乗り気で、リインはその小さな体を活かして雪だるまの頭の上に立って、アイリは雪だるまのすぐ隣に並んでピースサイン。私たちはミニ雪だるまや雪ウサギ、雪ネコを手に持ってスタンバイ。
「はい、チーズ」
ルシル君が何枚か撮って、それからルシル君も写真に入るためにアリサちゃんが使用人の人を呼んで、ルシル君も一緒の写真を何枚も撮った。その後は雪遊びを一段落させてアリサちゃんのお部屋へ。淹れてもらったココアをみんなで飲みながら写真データを送信してもらう。
「――で、話を戻すんだけど。今の内に予定を立てておかない?」
「早朝はやめときたいなぁ。お参りの醍醐味の出店も開いてへんし」
「あ、あたしもパス。午前中はちょっと無理かも」
はやてちゃんとアリサちゃんがそう答えたことで自然と、集まるのは午後からで昼食抜きで、っていう計画が立った。集合場所は去年と違って現地集合。去年は“闇の書の欠片”事件もあって大晦日はアリサちゃんのお家に泊まったけど、今年は何の問題も起きないかもしれないからそれぞれのお家から現地へ向かうことにした。
それからお喋りで時間を過ごしていたら、夕食の準備が出来ました、って報せを貰った。
「よっし。それじゃダイニングに行きましょうか! 年に一度のクリスマスだから結構豪華にしてもらったわよ♪」
アリサちゃんに付いてダイニングに行くと、去年のすずかちゃんのお家で開いた時みたく複数の丸テーブルに料理が盛られた大皿が何枚も乗っていた、自分の受け皿に好きな料理をよそって食べるビュッフェスタイルだ。
「さぁさぁ、グラスを持ってって~!」
いろんな味のジュースが注がれたグラスを好みで取る。そしてアリサちゃんが「コホン」ひとり私たちから離れて咳払いを1回。音頭を取る気なんだってすぐに判ったからそのまま待機するんだけど、「おいしいね~♪」アイリや、オモチャのような小さなグラスに口を付けるリインが「美味しいですぅ~♪」グビグビ飲み始めるから、「・・・・」アリサちゃんは固まった。
「リインちゃん、アイリちゃん。ちょっとだけアリサちゃんのお話を聴きましょうね~」
シャマル先生にそう言われた2人は小首を傾げながらも誰ひとりとしてグラスに口を付けてない様子に、2人も察したようでグラスを離した。空になってるグラスにはやてちゃんとルシル君が新しくジュースを注ぎつつ、「アリサ、頼む」アリサちゃんに温度を勧めるようにルシル君がお願いした。
「コホン。えー、今年は本当にいろんな事があったわね。砕け得ぬ闇事件を始めに、シャル達の編入、リインの誕生、アインスの旅立ち、リンドヴルムとの決戦、アイリとの再会と出会い・・・」
目を閉じて思い返す。シュテル達は元気にしてるかな。元気だと良いなぁ。
「来年もまた忙しいかもしれない。でもそれ以上に良いこともあると思う。それをまたあたし達みんなで分かち合いたいわ。嬉しいこと、楽しいことは何倍に、悲しいこと、辛いことは半分に。そんな新しい年を迎えるために、今年の締めくくりは派手に行きましょう! メリークリスマ~~スっ!♪」
アリサちゃんのメリークリスマスに合わせて「メリークリスマ~~ス!♪」私たちもグラスを掲げて応じた。それから私たちは夜遅くまでクリスマスパーティを楽しんだ。アリサちゃんの言うように来年も精いっぱい楽しむために。
†††Sideなのは⇒アイリ†††
クリスマスっていうこの世界独自のイベントの次は大晦日っていうイベントがすぐにやってくる。そしてアイリたち八神家は今、家に近いお寺とかいう場所にやって来てる。なんでも除夜の鐘とかいう行事をするためだって。
「そろそろ順番やな」
鐘楼の天井に鎖で吊るされた木の棒(橦木って名前。漢字は難しい)で、同じく吊るされた大きな鐘(梵鐘って名前。これも難しい)を打って鳴らすのに意味があるみたいだね。マイスターの話だと、108つの煩悩(っていうのは、心や体を惑わしたりする妄念や欲望のことみたい)をベルを同数回鳴らすことで取り除いて、新しい年を綺麗な心と体で迎えよう、とのこと。
「はやて。リインは?」
「ん? えっと~・・・、あー、やっぱり眠ってしもてるわ~」
ヴィータとはやてが、はやてが肩から提げてるバッグ――通称お出かけバッグの中を見た。あのバッグにはリイン専用の小部屋が詰まってる。リインはまだ生まれて間もない(まだ数ヵ月程度だって言うし)こともあってかよく食べ、よく眠るんだよね。
「リインちゃんは元よりその身体だから鐘は撞けないけど・・・」
「除夜の鐘は聞きたいと言っていたな」
「起こす・・・のも可哀想だな~。可愛い寝顔をしている」
シャマルやシグナム、マイスターと続いてお出かけバッグの中で眠るリインを覗いてく。最後に「でも聴けない方も可哀想だよね」アイリがそう言う。アイリとリインは全て初めてだから、初めてを家族と一緒に経験して行こうねって、って。だからその約束を守るために「リイン、起きて」アイリはリインの小さな体を揺さぶった。
「「「「アイリ・・・?」」」」「アイリちゃん・・・?」
「約束した。初めては2人一緒に経験しようって。リイン、起きて」
「ん・・・アイリ・・・?」
「そろそろベルを打つよ。家族みんなで聴くんだよね?」
「ベル?・・・・っ! そ、そうです! リインは――」
眠気眼だったリインも約束を思い出してガバッと起き上がった。けどその際に声を上げたことで「しぃー!」アイリはリインの唇に小指を当てる。周囲を見回して、アイリ達と同じ目的で並んでる他の人たちが変に思ってないか確認する。とりあえず前後に並ぶ親子の2組はリインの声に気付かなったみたいでマイスター達と一緒にホッと一安心。
『ご、ごめんなさいです、アイリ、はやてちゃん達も・・・』
『ええよ。さ、いよいよや。順番に鐘を撞いてくよ』
アイリ達の前の親子がベルを打ち終わったことで八神家の順番になった。頭がツルツルの人(お寺のジュウショクさんって人)が「良いお年でありますように」そう言って、木の棒と繋がるロープをはやてに手渡した。
「せぇー・・・のっ!」
はやてが振り上げた棒がベルに打ち付けられた。そして、ゴォーン、お腹に響くような重厚な音が鳴った。最初この音を聴いた時は想像と違って、こんなもんか、って思ってたけど何度か聴いてると、マイスターやはやての言う通り煩悩とか無くなっちゃいそうな気がしてきたから不思議。気が付けばアイリも鳴らしたい思いでいっぱいになってきたんだよね。それからシグナム、シャマルとヴィータ、ザフィーラと続いて・・・
「さぁ、アイリ。俺と一緒に撞こう」
「あ、うんっ♪」
マイスターと寄り添うように1本のロープを持って「せぇ~の!」棒を振り上げて一気にベルに打ち付ける。そして鳴るベルの音。至近でベルが鳴ったから今まで以上に体に響いた気がした。鐘楼からマイスターと一緒に降りて、アマザケとかいう飲み物を貰いに行くことになった。
「お酒なのに飲んでも良いです?」
「名前に酒と付いてはいるけどアルコールは含まれていないんだ。だから子供でも飲めるんだよ。まぁ、好みがあるから苦手だという子も居るだろうけど」
リインの疑問にそう答えたマイスターが甘酒を無料で配ってるテントの係員に、アイリ達人数分の甘酒を頼んで、みんなに紙コップが渡った。そして他の客の邪魔にならないようにテントから少し離れたところで、この寺に集まってる人たちがこぞって「10、9、8――」カウントを始めた。
「そんじゃ。ルシル君、シグナム、ヴィータ、シャマル、ザフィーラ、リイン、アイリ。今年もホンマにありがとう。そして来年もよろしく。残るアギトも必ず見つけ出して、本当の八神家になろうな」
「ああ。はやて」
「はい。我が主」
「うんっ。はやて!」
「はい。はやてちゃん」
「はい。我が主」
「はいです。はやてちゃん!」
「うん。はやて」
アリサの家でやったように紙コップを掲げて、アイリ達もカウントを開始。そして1までカウントして、0の代わりに「おめでとう~~~!」そうお祝いの言葉を言って甘酒を飲んだ。確かに甘くて体がポカポカする。シグナムとシャマルが壁になって、リインもヴィータから甘酒を貰ってちびちび飲んでる、可愛い。
「美味いな」
「あら、甘くて美味しい」
「ほぉ~。五臓六腑に沁み渡るなぁ~」
はやてがそう言ってホッと一息吐いたら「ぷふっ。なんかオヤジ臭いな」マイスターが笑った。
「お? こんな可愛い女の子に向かってええ度胸やなぁ~。ん~?」
「あはは、すまない、取り消すからくすぐらないでくれ!」
はやてがマイスターに抱きついて脇腹をくすぐりはじめた。はやてのテンションは高くて、マイスターに「ああ! はやては可愛い女の子だよ!」そう言わせるまでくすぐりを止めなかった。
「ふぅ。鐘撞きも終わったし甘酒も貰ったし、そろそろ帰ろか」
こうしてアイリとリインの初めての大晦日は終わって、明日の初詣の為にゆっくり休むことになった。家に帰って順番にお風呂になるんだけど、どうやってもアイリはマイスターと一緒に入れないんだよね。ベルカの時は、マイスターとアイリは何度も一緒にお風呂に入ったのにね。それにアギトお姉ちゃんも嫌がる素振りはするけど最後は一緒に入ってくれたし。それなのに今はダメだなんて納得できないんだよね。
「マイスター、なんで一緒に入ったらいけないの?」
「はやての目があるからなぁ~。彼女を怒らせると怖い」
最後にお風呂に入ったマイスター(基本的に最後なんだけどね)が髪の毛をドライヤーで乾かしてる最中、背中に抱きつきながらそう訊いたらそんな答えが。今のマイスターは、はやてを中心に考えることが多くなってる。
「(なんかつまらない・・・)マイスターは、はやてのこと好きなの?」
「ん~? あぁ、好きだぞ。誤解のないように言っておくが家族としてだ。エリーゼと同じだよ。今の俺に恋愛なんてしている暇も余裕もない。でも、俺を慕ってくれる、想ってくれる女の子が居る。どうせ十数年もすれば居なくなるような男に、大切な恋をしている・・・。なんとか諦めてもらいたい。そして新しい恋を見つけて、幸せになってもらいたい。それが今の、ルシリオン・セインテスト・アースガルドとしての一番の願いだ」
今、アイリが抱きついてるマイスターは本物じゃないことはシュヴァリエル、そして後にリアンシェルトっていう“エグリゴリ”からも聞いた。本物のマイスターはアースガルドっていう世界に封印されていて、目の前のマイスターは魔力で肉体を構築された“テスタメント”なんだって。だから不老。でも枯渇すれば記憶を削って体が消滅しないようにする。記憶消失の原因がそれだった。
(記憶消失に関してはオーディンだった頃のマイスターから聞いてた。だけど、体が魔力で出来て枯渇しての云々はリアンシェルトから聞いたことだ)
シュヴァリエルから聞いてたマイスターの正体は、古代の英雄・アンスールで、ガーデンベルグって奴の呪いで不老になったってことだけだった。それよりも詳しいことを教えてくれたリアンシェルトは、バンへルドともシュヴァリエルともレーゼフェアとも違う雰囲気なんだよね。それに、アイリとリアンシェルトが話をしたこと全てを秘密にするようにも命令された。破ればマイスターが酷いことになるって。だから今もマイスターには言ってない。
「(今はそれでいい。アイリにも解らない真実に、マイスターは必ず辿り着くと信じてるから)・・・マイスター」
「ん?」
「えっと、お、おやすみ!」
「ああ、おやすみ、アイリ」
マイスターの背中から離れて布団の中に潜り込む。ちょこっとだけ布団から頭を出して、マイスターの背中を眺める。今は小さい背中だから余計に思う。支えになりたいって。
†††Sideアイリ⇒はやて†††
1月1日の元日、わたしらは去年と同じ愛染神社へとやって来て、「明けましておめでとう♪」合流したすずかちゃん達と挨拶をし合う。今年はみんな私服姿やけど、「はやてちゃん達はみんな着物なんだね♪」わたしら八神家はみんな揃って着物姿や。今日のお参りの為にリインは朝からアウトフレームでヴィータほどの身長になってる。
「リインとアイリがお初やからね。奮発して買うたんよ」
リインはシャマルとお揃いのミントグリーン色の生地、そんで撫子の花の柄。アイリは蒼色の生地、そんでコスモスの花の柄。リインとアイリがすずかちゃん達に見せるようにその場でクルっと一回転して、みんなが拍手を送るとリインは顔を赤くして照れて、アイリはドヤ顔で胸を張った
「それじゃあ・・・、去年みたくお参りをした後でおみくじ、そして屋台巡りだよ♪」
シャルちゃんが張り切る。そうゆうわけで早速お参り。2人1組で参拝して、わたしはすずかちゃんから教わった作法の通りに参拝するリインと一緒に神様に報告、そんでお願い事をする。
(アギトがすぐに見つかりますように。ルシル君ともっと仲良くなれますように)
参拝を終えておみくじを引きに行く道中、「アイリちゃんはどんなお願いしたの?」なのはちゃんがそう訊いたら、「アギトお姉ちゃんが早く見つかりますように♪」そう笑顔で答えた。その願いはわたしやルシル君たちみんなの願いやった。
「あとね、ルシルに悪い虫が付かないようにって♪」
アイリがそう言うてシャルちゃんに笑顔を向けると、「ほっほう。宣戦布告かな?」シャルちゃんも笑顔で応じた。そんで「どうせあんたもでしょシャル?」アリサちゃんが呆れ気味にジト目でシャルちゃんを見る。
「当然! ルシルへの想いを神様に事細かく伝えたよ!」
えっへんって胸を張るシャルちゃんがわたしをチラッと見た。アカン、巻き込まれるって思うたけど、「ほらほら。願い事は胸の内に閉まっておけ」ルシル君が手を叩いて話を切り上げてくれた。
「そうだね。他の参拝客も多くなってくるだろうし、早く済ませちゃおうか」
次はおみくじや。みんなそれぞれくじを引いて来年の運勢を占う。そんな時、「あっ、そうゆうことか」わたしは気付いた。リインに「どうしたです?」訊かれたわたしは去年のおみくじの内容が当たってたことをみんなに話した。
「失せ物・待人の内容は八神家そろって同じやった。そう遅くなく出る、遠くから。便りなく来る、早く。これってアイリのことを差してたんと違うかな」
「あ、本当だ! 今思えばそんな感じだ!」
「偶然にしては出来過ぎですものね!」
ヴィータとシャマル、なのはちゃん達も「すごいね!」って驚いてる中、すずかちゃんが俯いて「邪魔されるって、そういう・・・」そう呟いたのが聞こえた。するとアリシアちゃんが「すずか、どうしたの?」訊ねた。
「私の去年のくじの内容のことで。願望は、他人に妨げられる。待人は、来るが倖せは少ない。恋愛は、思わぬ人に邪魔される。そんな感じで・・・」
一瞬で理解した。ケリオン君の事やって。そやから「ごめん、すずか。でも、シャルロッテ様も悪気があったわけじゃ・・・」シャルちゃんが謝った。すずかちゃんとシャルロッテさんの言い合いが思い返される。
「あ、ううん、シャルちゃんが謝ることじゃないし、シャルロッテさんが悪いわけでもないよ! ただ、ちょっと寂しくて。ケリオン君は、ケリオン君の役目を果たそうと頑張ってた。だから仕方ないことだったって今は納得してる。そういうわけだから、もう謝るのは禁止だよ、シャルちゃん」
「・・・うん。ありがとう、すずか」
すずかちゃんとシャルちゃんが微笑み合ってると、「ルシルのおみくじも何気に当たってるよね」フェイトちゃんがルシル君にも話を振った。
「まあな。願望の苦難の中で失うものあり、得るものあり。多くの複製品を失ったし、クラナガンの住民や局員も沢山亡くなった。けど、アイリを取り返せたし、シュヴァリエルを救うことが出来た」
「確か健康もなんか不穏だったな」
「衰退は果てまで変わらぬ、か。今は上り坂だけど、ある一定の歳を過ぎれば弱体化していくということじゃないか?」
「争事じゃお前、一度死にかけてんぞ」
「退けば後に不利になる。躊躇わず勝負せよ。今思えば、時期を間違えていたのかもな。海鳴温泉での闘いのことじゃなく、ザンクト・オルフェンかレンアオムでの決闘のことだったのかもしれない。ま、今となっては過ぎたことだからいくら考えても意味ないけどさ。さ、くじの話はこれくらいにして、結びどころに行こう。今年は俺も結んで行くつもりだし」
ルシル君が先を歩く。そのこともあってルシル君のくじの内容は判らへんかった。考え過ぎかもしれへんけど、まるで去年みたいに見られるのを拒んだような・・・そんな感じがした。
(わたしの恋愛・縁談・・・。告白は時期早々。焦らず待つべし・・・)
ルシル君に続いてわたしらも結びどころで引いたくじを縄に結んでく。結ぶ中、くじの内容を思い返す。恋愛・縁談以外は普通の、気になるような内容やなかった。学業も健康も心配なしやったし。けど恋愛の内容は気になった。シャルちゃんを見る。シャルちゃんは笑顔でくじを結んでる。
(シャルちゃんはどうやったんやろ・・・?)
わたしの最大のライバルのシャルちゃん。シャルちゃんのことももちろん好きやけど、ルシル君を取られるのだけは嫌や。焦らずに待つ。そうは言うけど、シャルちゃんのこれからのアプローチで守れへんかもしれへんなぁ~。
「よーし! お参りもした、くじも引いた! あとやるべきことはなに!? アイリ!」
「ふぇっ!? お、お店で食べ物を買う、だよね!」
「グレイト! 色んな物があるよね、どうやったら多くの料理を楽しめるか判る!? アイリ!」
「ひゃい! シャルさん考案の屋台制覇作戦で、みんなで分け合って食べれば良いです!」
「エクセレント! そういうわけだから各自、お参りの待ち時間で決めた料理を購入せよ!」
「は、はいです!」「や、ヤー!」
シャルちゃんのハイテンションにリインとアイリがビシッと敬礼して応えた。他の参拝客からは微笑ましさ全開の優しくて温かな視線が向けられる。ちょう恥ずかしい思いをしながら、わたしらは5人3組に分かれて屋台へ突撃した。
「すごい、すごい! 見たことない料理ばかりだね!」
「よ、よだれが止まらないです・・・!」
わたしのチームは、ルシル君とシャマルとリインとアイリや。2人とも匂いだけでものすごい良い笑顔や。そんな2人の様子をルシル君とシャマルと一緒に微笑ましく眺める。
「来年もこうしてみんなでお参りに来たいですね、はやてちゃん、ルシル君」
「そうやね。来年もまたみんな・・・、出来ればアギトも一緒やとええんやけどな」
「ああ。必ず見つけ出すよ。必ず・・・」
3人で力強く頷き合ってるところに「はやてちゃん! カステラ発見です!」リインや、「ひゃっほー! たいやき、クレープ!」アイリの陽気な声が聞こえてきたから苦笑。待たせるわけにもいかへんからわたしらも任された屋台へ向かった。
それから任された料理を購入したわたしらは合流して、みんなで仲良く分け合って食べた。リインとアイリは初めて食べる料理ばかりだったこともあって終始「美味しい~!」ハイテンションやった。
後書き
ニ・サ・ヤドラ。ブラ。ニ・サ・ボンギ。
今話は去年もやりました初詣回なのですが、かなり端折ったどうでもいい回でしたね。本編でも書きましたが、去年の初詣回は今年のリンドヴルム編の伏線を張るために使いましたが、今年はなんの捻りもない回となりました。何故なら・・・
「5年生の日常編は何も考えていないからです!」
というか6年生編も事件編以外はなんもノープラン! そういうわけで、いろいろ変わってくるでしょうから伏線は張らないことにしました。ですから今話の内容はスッカスカなのです。ダメな作者で申し訳ないです!
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