| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

チルプイ

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第三章

「だからね」
「それでなのね」
「そう、ザビーネもよ」
 自分と同じ様にというのだ。
「結婚出来てね」
「それでなのね」
「この服を着るわよ」
「エグメも付けて」
「そう、結婚は家と家のものだから」
 だから双方の家長同士が決める、それでアイーダの結婚も決まった。イスラム社会ではよくあることである。
「貴女もよ」
「結婚して」
「十八位になったらね」
 自分の様にというのだ。
「そうなるわよ」
「そうなの」
「だから二年位したら」
「私も」
「その時は私が今着ているね」
「そのチルプイに」
「エグメもネックレスもね」
 そうしたものもというのだ。
「全部着て付けてね」
「結婚するのね」
「そうなるわよ」
「二年後。じゃあそれまでは」
 遥か先を見る顔になってだ、ザビーネは言った。
「私もね」
「そう、そのチルプイを着ていてね」
「その時を待っているわ」
「言われても信じられないけれど」
 そのチルプイを着てエグメ等を付けることはというのだ。
「何時かはなのね」
「二年位でね」
「二年、長いわね」
「そうよね、二年はね」
「二年もあるのね」
「いえ、たった二年ですよ」
 ここでだ、横からアイーダが着るのを手伝っていた女の人が言って来た。
「それは」
「たったですか」
「たった二年ですか」
「はい、そうですよ」
 ザビーネだけでなくアイーダも驚いて問うたがその人は笑ってこうも言った。
「たった二年ですよ」
「あの、二年なんて」
 それこそとだ、ザビーネは言った。
「とてもです」
「長いっていうのね」
「はい、そうですけれど」
「皆さんそう言われるんですよ」
「私だけでないですか」
「そうです」
 とてもというのだ。
「それは」
「そうなんですか」
「人生はあっという間ですから」
「二年はですか」
「それこそあっという間ですよ」
「それで私もですか」
「二年位はです」
 それこそというのだ。
「瞬きする位ですよ」
「そうなんですか」
「特に結婚してからは」
 女の人は笑顔のままでだ、ザビーネだけでなくアイーダにも言った。
「凄く早いですよ」
「結婚してからは」
「特にですか」
「はい、私がそうですから」
 結婚してからというのだ。
「あっという間にですよ」
「時間が過ぎていくんですか」
「そうなりますか」
「はい、それにです」
 さらにというのだった。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧