ドーバ
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第六章
「腰蓑付けて踊るんですよね」
「そうします」
「そうですよね、そういうのがです」
「お嫌いですか」
「そういうのが未開なんですよ」
文字通りそれだというのだ。
「我が国の」
「いやいや、それこそがなんですよ」
「いいんですか」
「はい、そうです」
やはりこう言うのだった、田所は。
「ですから」
「今夜はですか」
「収穫祭を楽しまれて下さい」
「未開の部族のお祭りですか」
まだこう言うキラだった。
「そうしたことから我が国は脱却して」
「近代化ですね」
「そうしないといけないのに」
「ですから近代化もいいですが」
「それとですか」
「そうしたものもいいのですよ」
「部族で未開も」
「そちらもまたです」
受け入れている言葉だった、完全に。
「ですが参加は」
「まあそれは」
キラは嫌だと言ってもそうなっている予定ならそれに従うタイプだ、口や言葉ではそうでも決まっているのなら従うのだ。
それでだ、その収穫祭もだ。
参加することにした、そしてだった。
彼はその収穫祭に出た、他の観光客達と共に。
その時にだ、島の人達がだ。
腰蓑で出て来たがだ、その腰蓑を見てキラは思わず言葉を失った。
乾燥させたバナナや椰子の葉を細かく割いて作っているが貝のビーズを付けていてだ。鮮やかな赤や白、黄色に染めていてだ、。
胸のところは薄い生地で多い頭や腕、くるぶしのところも黒や赤の生地や貝殻のピースで飾っている。女の子達のその姿を見てだ。
キラは言葉を失った後だ、隣にいた田所に言った。
「あの腰蓑は」
「はい、ドーバといいまして」
「そうした名前ですか」
「こちらの言葉で」
「ああした腰蓑もあるんです」
ここでキラは自分が思っていた腰蓑について言った。
「ただ単に巻いただけの」
「そうしたですね」
「未開そのものって思っていましたけれど」
「奇麗ですよね」
「はい」
このことを素直に認めた言葉だった。
「とても」
「はい、そしてです」
「そして?」
「このお祭りは凄いですよ」
「この収穫祭は」
「実はこのトロブリアンド諸島はラブ=アイランドといいまして」
即ち愛の島である。
「収穫祭から名付けられたんですよ」
「愛、ですか」
「そうです、かなり情熱的なお祭りでして」
「そのお祭りをですね」
「これから楽しんでもらいます」
こうキラに言うのだった。
「あのドーバと一緒に」
「いや、あのドーバを見ても」
そしてそれを着ている少女、女性達をだ。
「凄いですね」
「それははじまりに過ぎないので」
「これからですね」
「収穫祭をお楽しみ下さい」
田所はキラににこりとして言った、そして。
ダンスと音楽、それに食事と飲みものに炎。その祭りの中に完全に入って一つになってからだ。キラは。
二度と未開だの部族だの言うことはなかった、そして父にも言うのだった。
「近代化もいいけれどそればかりじゃないね」
「ツアーに行ってわかったみたいだな」
「うん、僕もね」
「そういうことだ、我が国ももっと近代化すべきだがな」
「今ある文化やそうしたものもだね」
「大切なものだからな」
「尊重しないといけないね」
こう言うのだった、彼はドーバと収穫祭からそうしたことがわかりそういったものを悪とはみなさない様になったのだった。日本から来た不思議な回る道具から出て来た玉に導かれた結果。
ドーバ 完
2015・11・26
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