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魔法超特急リリカルヒカリアン

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第七話

 
前書き
久しぶりの更新です。 

 

フェイトとの交戦の後、なのは達はジュエルシード緊急対策本部となっている車両基地の事務所に戻っていた。

『なるほど。そんな事があったのか・・・』

現在、彼らはJHR本部に居るひかり隊長や300X博士に報告を行っている所だった。

『それで、なのはちゃんは大丈夫かい?』

「はい、レイジングハートが守ってくれましたから。」

「ですから、レイジングハートの方が酷い有様で・・・」

そう言ってソニックは小さなクッションの上に乗せられた待機状態のレイジングハートを見た。赤い宝石のようなその姿には痛々しいヒビが無数に入っている。

『これは・・・ユーノ。レイジングハートを修理する事は可能か?』

「はい。デバイスには自己修復機能がついてますので多分大丈夫です。かなり破損は大きいですけど、今明日には回復すると思います。」

『そうか。我々ではジュエルシードを封印出来ないから、直らなかったらどうしようかと思っていた所だ。』

ユーノの答えにホッとするひかり隊長。

「しかし・・・」

『ん?どうしたんだ、ユーノ君?』

「いえ、何でもありません。」

そう答えるユーノであったが、彼の頭の中では様々な推測が渦巻いていた。

(レイジングハートはかなりの高出力に耐えられるデバイスのハズ。それがここまで破壊されるなんて・・・もしかしたらジュエルシードは、僕たちが思っているより危険な代物かもしれない・・・)





一方、フェイト達が拠点にしているマンションでは、フェイトとブラックエクスプレスの傷の手当てが行われていた。

「大丈夫かい、フェイト?」

「親分も大丈夫?」

「うん。平気だよ。」

「俺様もだ。これくらい、ヒカリアンにやられ慣れているからな。」

「それ、言ってて悲しくならない?」

ブラックエクスプレスの言葉にアルフはツッコミを入れた。

「でも、明日は母さんに報告へ行く日だから、早く治さないと。傷だらけで帰ったら、きっと心配させちゃうから。」

「そうだね。」

「お母ちゃんきっとびっくりしちゃうよ。」

フェイトの言葉に相槌を打つドジラスとウッカリー。そんな中、アルフが小声で呟いた。

「・・・あの人が心配なんてするかねえ。」

「こらこら。そんな事を言うんじゃない。子供の心配をしない親なんて居る訳が無いだろう。」

「そうだよ。母さんは、少し不器用なだけだよ。私には、ちゃんとわかってる。」

そんな彼女をブラックエクスプレスとフェイトがたしなめた。だが、アルフは何故かうつむいたままだ。

「・・・報告ならあたしだけでいいのに。」

「仕方ないよ。母さんはアルフの言う事をあまり聞いてくれないからね。アルフはこんなに優しくて、いい子なのにね。」

フェイトがアルフを撫でながらそう言うと、アルフは照れて顔を赤くしながら言った。

「まあ、明日は大丈夫だよ。ロストロギアを…ジュエルシードをこの短期間で4つも手に入れたんだし、褒められはしても怒られる事は無いよ。」

「そりゃ当たり前だ。」

「もしかしたら頑張ったご褒美くれるかも!」

「僕たちにもくれるかなあ?」

明るく言うアルフとブラッチャー達を見て、フェイトは笑みを浮かべた。

「うん。そうだね。」





翌朝。
フェイトとアルフ、それにブラッチャーの三人はマンションの屋上に来ていた。

「お土産はこれで良し。」

そう言うフェイトの手にはケーキの入った箱が持たれていた。

「甘いお菓子か・・・こんなの、あの人が喜ぶかね。」

それを見たアルフがつぶやく。そんな彼女にブラックエクスプレスが言う。

「大丈夫だ。フェイトちゃんがお母ちゃんのために一生懸命選んだんだからな。」

因みに、ブラッチャー三人組はこのケーキを買う際、ちゃっかり自分達の分も買ってもらっていたりした。

「それじゃ、フェイトちゃんのお家に・・・」

「「出発進行!!」」

そして、何故かブラッチャー三人組の掛け声で五人はフェイトの母親の住む場所『時の庭園』へと転移した。




同時刻、次元空間を通り一隻の戦艦が地球に向かっていた。そのブリッジにある艦長席で、緑色の髪をポニーテールにした女性がクルーに状況を聞く。

「前回の小規模次元震以来、特に目立った動きは無いようですが、二組の捜索者が再度衝突する危険性は非常に高いですね」

「そう、小規模とはいえ、次元震の発生は厄介だものね。それに・・・」

そう言って彼女がデスクを見下ろすと、第97管理外世界『地球』について書かれた資料が積まれていた。そこから彼女は一枚を取り出す。

「ヒカリアン。地球とは別の惑星から来たエネルギー生命体。人類とは共存しているみたいだけど、我々『管理局』にとっては未知の生命体・・・接触する事になったら慎重に行かないと。」




「これは・・・」

「凄い・・・」

「広い・・・」

時の庭園に転移したブラッチャー達はその壮大さに驚いていた。

「もしかして、フェイトちゃんって金持ち?」

「どうかな?母さんは昔大魔導師って呼ばれてたみたいだけど。」

「良く分からないが、凄い人みたいだな、フェイトのお母ちゃんは。」

そう言いながらブラックエクスプレス達は辺りを物珍しそうに見渡す。そんな彼らを見てフェイトは言った。

「良かったら、庭園内を好きに見てきてもいいよ。」

「え!本当!?」

「やったー!」

それを聞いたドジラスとウッカリーは素直に喜ぶが、ブラックエクスプレスだけは遠慮した。

「しかし、まずはフェイトちゃんのお母ちゃんにご挨拶をしないと・・・」

「大丈夫。母さんには私の方から言っておくから、遠慮しないで。」

「ほら、フェイトちゃんもこう言ってる事だし。」

「行こう、親分!」

「お、おいこら。」

そして、ブラックエクスプレスはドジラスとウッカリーに引きずられて行った。




そして、それから三人は庭園内を見て回ったのだが・・・迷ってしまった。

「親分。もう疲れたよ〜。」

「むう・・・どこかに地図は無いのか?」

歩き疲れた彼らは地図を探して辺りを見渡す。すると、一つの扉の前でうずくまるアルフを発見した。

「親分!アルフが居ますよ!」

「良し!これで道を聞く事が出来るぞ!」

「フェイトちゃんのお母ちゃんに挨拶しに行けるね。」

そして、三人はアルフの所へ駆け寄った。

「おーい!アルフー!って、ん?」

だが、アルフは様子がおかしかった。うずくまっていたため、遠くからは分からなかったが、その表情は怯えているようだった。身体も震えている。

「ど、どうしたんだ、アルフ?」

ブラッチャー達もこれは只事では無いと考え声をかけた。すると、アルフは顔を上げる。

「ブラックかい・・・」

「一体何があったんだ!!」

「頼むよ。フェイトを、フェイトを助けてくれ!」

「え?」

「フェイトちゃんを?」

「どう言う意味だ?」

ドジラス、ウッカリー、ブラックエクスプレスの順で首を傾げる三人。その時・・・

パシィィィィン!!!

「きゃあっ!!」

アルフの背後にある扉の向こうからムチを打つ音とフェイトの悲鳴が聞こえた。

「今のって、フェイトちゃんの!?」

「どう言う事!?」

「お前達!行くぞ!!!」

ブラックエクスプレス達は直様扉の向こうへ突入した。そこでは・・・

「たったの・・・4つ?これは、余りにも酷いわ。」

光の鎖で天上から吊り下げられたフェイトが一人の女にムチで打たれていた。

「フェイトちゃん!!」

それを見たブラックエクスプレスは暗黒鉄球で鎖を破壊する。そして、拘束が解かれて落ちて行くフェイトをドジラスとウッカリーがキャッチした。

「何者かしら、あなた達?」

突然乱入してきたブラッチャー達に女が聞いた。

「俺様達はフェイトちゃんの仲間だ!お前こそ何者だ!!」

「私?その子の母親よ。」

「何だと!?そんな訳があるか!!!」

「フェイトちゃんの大好きなお母ちゃんがこんな酷い事する訳無いよ!!!」

「そーだそーだ!!」

女に面と向かってそう言うブラッチャー達。その時、フェイトがか細い声で言った。

「母さんを・・・悪く言わないで・・・」

その言葉をブラックエクスプレス達は信じられなかった。

「フェイトちゃん・・・本当に、こいつが君のお母ちゃんなのか?」

「そう、だよ・・・」

「そんな・・・バカな・・・」

フェイトは優しい子だ。しかし、だからといって虐待するような親を慕っているという事が信じられない。

「分かったらとっとと出て行ってもらえるかしら?これは家庭の問題なの。」

プレシアがブラックエクスプレス達に出て行くよう告げる。しかし、ブラックエクスプレスは暗黒鉄球を出し、ドジラスとウッカリーに言った。

「お前達、フェイトちゃんを連れて部屋を出てろ。」

「え?」

「親分はどうするの?」

「俺様はこいつに話がある!!」

「へえ・・・」

言い放つブラックエクスプレスを品定めするように見るプレシア。そんな中、ドジラスとウッカリーは一度顔を見合わせるが、直ぐにフェイトを連れて部屋から出た。

「それで、話って何かしら?」

「まず言わせてもらうぞ。俺様は正真正銘の悪者だ。だから子分が失敗したらキツ〜いオシオキをする。」

「あら。私と同じじゃない。」

「同じだと?お前は俺様の話を聞いていなかったのか?俺様があいつらにオシオキをするのは失敗した時だ!ちゃんと頑張って成功させたのなら、俺様だってちゃんとあいつらを褒める!!フェイトちゃんはなあ、お前の為に頑張ってジュエルシードを集めてきたんだぞ!なのにこの仕打ちは何だ!!」

ブラックエクスプレスは凄まじい剣幕でプレシアに怒りをぶつける。だが、プレシアはケロリとした顔でこう答えた。

「何を言うかと思えば。別におかしく無いわ。あの子が集めて来たジュエルシードはたったの三つ。本当なら今頃もっと集められているハズよ。でも、あの子はそれが出来なかった。つまり、あの子は失敗したのよ。」

「何だと!!」

「そもそも、失敗か成功かを決めるのは命令を出した私よ。あなたじゃ無いわ。」

「お前は・・・それでも母親かああああああああ!!!」

プレシアの言い様にとうとう我慢の限界を超えたブラックエクスプレスは暗黒鉄球を放つ。だが、それはあっさりとプレシアの魔法障壁に阻まれた。

「邪魔よ。」

「ごあっ!?」

そして、プレシアは雷の魔法でブラックエクスプレスを吹き飛ばす。そして、彼はそのまま背後にあった壁をぶち抜いた。

「しまった!?」

それを見たプレシアは慌てて穴の空いた壁に向かって走った。




「いててて・・・あの女、ヒカリアンよりも容赦が無いな。」

壁をぶち抜いてしまったブラックエクスプレスは雷のせいで未だ痺れている身体を何とか起こす。

「なっ!あれは!?」

そこで、彼は信じられない物を見た。それは、この空間の奥に安置された一つの円筒型の水槽だ。そして、その中にあったのは金魚でも熱帯魚でもなく、フェイトと瓜二つの少女の姿であった。

「これは、どう言う事だ?」

目の前の未知に困惑するブラックエクスプレス。彼は無意識に水槽へと近付いていた。その時・・・

「アリシアに近付かないで!!」

プレシアが入って来た。ブラックエクスプレスは振り返り、彼女に聞いた。

「プレシア!あのフェイトちゃんにそっくりなのは何だ!!」

「フェイトにそっくりですって?うふふふ・・・あははははははははは!!!」

「な、何がおかしい!!」

「それはそうよ。教えてあげるは。その子はアリシア。私の本当の娘よ。そして、フェイトはアリシアのクローンなの。」

「クローン!?コピー人間と言う事か!?」

「そうよ。あの子にはアリシアと同じ身体だけでなく、記憶まで与えたの。なのに、アリシアと全く同じにはならなかった。」

「だからあんな風に扱っているのか?」

「そうよ。魔法の才能だけは高かったから、今度こそその子を生き返らせる為に利用しているの。」

「それが、お前がジュエルシードを集める目的か・・・」

「そうよ。さて、これを見られたからには・・・ゴホッ!」

その時、突然プレシアが咳き込んだ。見ると、口を押さえた手には血が付いている。

「お前、病気なのか?」

「ええ・・・不治の病と言う奴よ。だから私には時間が無いの。」

「・・・それなら、死んだ人間を生き返らせるなんて無駄な事をしないで、もっと有意義な事に時間を使え。」

「無駄ですって!」

「死んだ奴を生き返らせるなんて、俺様達ブラッチャーの技術力を持ってしても不可能だ。」

「そんな事は無いわ!ジュエルシードさえ集めれば可能だと彼は言った!!」

「彼?」

プレシアの言葉から、彼女の裏に更に黒幕が居るとブラックエクスプレスは考えた。すると、その時・・・

『お久しぶりねぇ。ブラックエクスプレス。』

もう2度と聞くとは思っていなかった声が彼の背後から聞こえた。

「この声は!?」

ブラックエクスプレスは振り向く。そこに居たのは、彼のかつての上司、シルバーエクスプレスだった。

「シルバーエクスプレス!?どうしてここに!?」

『ちょっとジュエルシードが欲しくなっちゃって、プレシアに頼んだのよ。』

「ジュエルシードが?」

『そうよぉ。でも、まさかあんた達がプレシアのお人形さんとお友達になっているとは思わなかったわ。』

シルバーエクスプレスがフェイトを人形呼ばわりした事にブラックエクスプレスは顔をしかめる。だが、それよりも知りたいことが彼にはあった。

「シルバーエクスプレス。ジュエルシードを使って何をするつもりだ?」

『だから、欲しくなっちゃったんだって言ってるでしょ。それより、元上司に対して口のきき方がなってないわね。』

「ふん。俺様はもう貴様にクビにされたんだからな。当然だ。」

『そう。なら、もう一度部下にしてあげる。』

「何だと?」

『プレシアのお人形さん達を手伝って、全部のジュエルシードを集める事が出来たらブラッチャール星に帰れるようにしてあげるわ。』

「貴様に言われんでも、フェイトちゃんの手伝いはするつもりだ。」

『なら、この話は成立って事で。』

そう言うと、シルバーエクスプレスは霧のように消えた。




プレシアの部屋を出たブラックエクスプレスは、廊下に居るフェイト達と合流した。すると、早速アルフが駆け寄って来た。

「ブラック!大丈夫だったかい!?」

「俺様は大丈夫だ。それより、フェイトちゃんの方は?」

「私は、大丈夫だよ。」

若干よろけながらも、フェイトは立ち上がりながら言う。

「フェイトちゃん、無理せずに休んでいろ。」

ブラックエクスプレスはフェイトを座らせ、ドジラスとウッカリーの前に来た。

「ドジラス、ウッカリー。話があるから付いて来い。」

ブラックエクスプレスは2人を連れてフェイトから離れると、シルバーエクスプレスの話をした。

「ええ!?フェイトちゃんのお母ちゃんにジュエルシードを集めさせてるのって、大親分だったの!?」

「びっくり〜。」

「ああ。それで、全部のジュエルシードを集められたら故郷に帰らせてくれるそうだ。お前達はどうする?」

「も〜、親分ったら。僕達はもうフェイトちゃんのお手伝いをするって決めたでしょ。」

「それで故郷の星に帰れるなら一石二鳥ですしね。」

ウッカリーもドジラスもフェイトの手伝いを続ける姿勢は変えないようだ。

「よし、ならば俺たちブラッチャーはフェイトちゃんのお手伝いを続けるぞ!!」

「「ブラッチャー!!」」

こうして、ブラッチャー3人組はこれからもフェイトの手伝いを続ける事を決めた。
だが、ブラックエクスプレスはフェイトの出生の秘密については誰にも伝えなかった。



続く

 
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