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執筆手記

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没ネタその9 【まどかマギカ劇場版のネタバレ注意】 見滝原に放り込まれました 2


 ――――――やりやがったッ!! やりやがったなッ! あの女っ!!

 人様をヘンテコ生物に変えやがってッ!! 

 覚えてろッ! すべてが終わった後、ツケを払わせてやるからなッ!!

 手始めにこっちの街に居る鹿目まどかと一緒に風呂に入って、その裸体を目に焼き付けてやる!

 ドラマCDで一緒に風呂に入ってたし、接触の仕方に気を付ければ充分もぐりこめるだろう。

 向こうに戻った時に恥辱を味わわせてやるからなッ!!


 ――――――なんて事を考えてると、何か巨大なモノが動く感覚がした。

 上を見上げてみると、高架橋の上をなぞる様に黄色く巨大な光が通過していった。

 それが何なのか頭が理解するよりも早く、少し離れた所でブレーキ音が鳴り響き高架橋の壁がぶっ壊れた。


「…………マジかよ」


 高架橋の下に駆け寄ろうとしたが、二本足ではまともに走れず、

 結局地面擦れ擦れに顔を付けて四つん這いで走り出す。

 高架橋の下には、さっき目の前を通った黄色い光が弱弱しく落ちていた。

 その光は高架橋の上から落ちてきたと思われるグシャグシャになった車の中から発せられている。

 俺が一歩踏み出すと、黄色い光が弱くなった気がした。

 二歩、三歩と歩き出すよりも早く、光が減少している気がして、大急ぎで駆け出し車の中に潜り込んだ。

 車の中は酷い状態で、比較的後部座席の被害が少なかった。運転席と助手席はもう無理だと解る。

 医者でもない人間が生死の判断をしちゃいけないってのは知ってるんだが、これは確定と言っても良い。

 親子三人の内、生存者はゼロ。後部座席に乗っていたのは『巴マミ』なのだから、助からないのは確定だった。


「…………誰……?」

「――――死神だよ」

「…………え? …………何? 何て言ったの? 何も聞こえないの」


 血だらけになった巴マミが俺に向かって手を伸ばす。

 両親と死に別れて魔法少女になるくらいなら、此処で一緒に死んでしまった方が良いのではないのか?


「…………おねがい。たすけて」

「聞こえてないだろうけど、俺に助けられるのはお前だけだ」


 巴マミの中に力が在るのが解る。

 その力をどうしたら良いのか解る。

 両親を亡くし、一人魔法少女となって生きて行く彼女に、俺に出来る全てを与え定着させた。

 巴マミが気を失うと、彼女の中で黄色い光が鼓動と共に強く輝きを増し始めた。

 これで巴マミは魔力に依存する身体になった。ソウルジェムが破壊されるか黒く染まるその日まで生き続けるだろう。


 ――――ん?


 ソウルジェムって確か百メートル前後引き離すと身体が死体同然になるんだったか?

 この血だらけの服のポケットに忍ばせたとして、『血が染み込んでるから』と医者とか看護師に処分されたら不味くね?

 原作どおり髪飾りにするってのはどうだ? でも検査とかで一度は髪から外すよな?

 巴マミ自身が『私、こんな髪飾り持ってません』って肌身から離したら?


 ――――目が覚めるまで待ってから説明するか。

 泣くだろうな…………両親に死なれた上にゾンビ同然の身体になりましたとか。

 俺は巴マミのソウルジェムを銜えると、やがて来る救急車に潜り込む準備を始めた。



 巴マミの意識が戻らないまま精密検査等が行われたが、特に異常は無し。

 後は巴マミの意識が回復するのを待つ事になった。

 その日の夕方、巴マミは目を覚まし、医者から伝えられた現実に粛々と両親の友人や学校関係者に連絡を取り始めた。

 二日後には両親の葬儀が執り行われる。近場に親族の居ない巴マミは心の整理を含め一人暮らしを希望した。


 そしてその夜。


「お邪魔するよ」

「…………誰?」


 ベッドの上に座っている巴マミは人の姿を探すが誰も居なかった。


「こっちだよ」


 巴マミが座るベッドの足元に飛び乗った。巴マミは少し目を見開き俺の姿を確認する。


「まずこれを渡そう」


 頭に乗せていたソウルジェムを巴マミに差し出した。


「…………きれい」

「それはキミの命だ」

「――――私の命?」

「そう、キミは今日の事故で死んでしまったんだ」

「でも、私生きてる」

「残念ながら、そのソウルジェムが近くにないと、キミは死んでしまう。無くしたり壊したりしないでね」

「…………嘘」

「実際大変だったよ、百メートルも離すと身体が死体になっちゃうからさ、救急車の中に持ち込んだり、

 検査中も出来るだけ離れないようにしてたんだ、病院で心臓が止まったって大騒ぎされても困るしね」

「本当なの?」

「あ、ご飯とか普通に食べられるから、ただし、ソウルジェムが黒く染まり始めたら気を付けて、動けなくなるからね」

「ご飯を食べても?」

「ご飯を食べても、だよ。ちょっと貸して」


 巴マミからソウルジェムを受け取ると、少し黒くなっている所を見せた。


「これが今日一日、正確には午後からキミが動いた分の色だ、これをこうする」


 俺の左手をソウルジェムに置いて、左手に黒くなっている部分を移す。

 するとソウルジェムの輝きが増した。


「今日は此処までする必要はないけど、活動が激しくなると黒くなるスピードも速くなるから気をつけてね」

「あなたはそのまま真っ黒になっちゃうの?」

「直す方法もあるんだけどね、真っ黒になるのも面白いかなって、まぁ気にしないで良いよ。

 あぁ、自己紹介がまだだったね、『キュゥべえ』と『ジュゥべえ』は居るから俺の名前はハチべえにしとこうか」

「――――うっかり?」

「うん。うっかり」


 笑って頷くと巴マミがクスクスと笑い出した。


「ごめんなさい、でも可笑しくって。私の名前は巴マミです。よろしくお願いします」

「こちらこそよろしく。これから大変だけど、暫く厄介になるよ」

「一緒に居てくれるの?」

「夢だと思われて、心臓止められても困るしね。改めてよろしく」









――――――――――――没ネタ此処まで。


 
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