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大切な一つのもの

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17部分:第十七章


第十七章

 緑の騎士は故郷に戻りました。彼の故郷は帝国の隣の国にあるカレオールという場所です。ここはその国の西の端にありとても静かな場所にあります。
 そこに帰ると。彼の古くからの従者であるクルヴェナールが出迎えました。初老で痩せた茶色の髪と顎鬚の男です。
「久し振りだね。爺や」
「はい、トリスタン様」
 爺やはそう応えて若い主を出迎えます。二人共笑顔です。
「元気そうで何よりだよ」
「有り難うございます。ところで」
 爺やは顔をあげて騎士に問い掛けます。
「今日は。あの御用件ですね」
「うん」
 にこりと笑って答えます。
「陛下から頼まれたんだけれど」
「はい、それでしたら」
「知っているのかい?」
「あてはあります」
 にこりと笑って主に答えます。
「西の島に」
「西の島というと」
「あの王女がおられる国ですが」
「ああ、あそこか」
 騎士は王女と聞いてそこが何処なのかわかりました。そこはカレオールのさらに西に浮かぶ二つの島の西の方の島で皇帝の治める国とはまた別の王様が治めています。そこの皇女様は魔術も使える絶世の美女なのです。
「あの国の王女様が」
「何でも結婚相手を探しに東の島の国の一つに行かれるそうです」
「というとどの国だ?」
 東の島には三つの国があります。北にある山国と真ん中にある平地の国、そして西の方にある海に恵まれた国です。その三つがあるのです。
「西の国です」
「では叔父上の国か」
 緑の騎士の母親は西の国の王様の妹でした。王様には子供がなく騎士は西の国の後継者でもあるのです。
「その国に」
「どうされますか?」
「行こう」
 騎士はすぐに決めました。
「叔父上には奥方もおられない。宜しければその姫を奥方にお勧めしよう」
「ではその為にも」
「まずは西の国に向かう」
 そう決めました。それを従者に告げます。
「いいな。そうして叔父上にお話して」
「それから西の島に」
「そうだ。では行くぞ」
「はい」
 こうして話は決まりました。騎士はすぐに海を渡り王様にお話してから西の島に向かいました。そうしてそれから王女と合流して船で西の国に戻りました。
 
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