歌集「春雪花」
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切なきて
遠く帰らぬ
君を呼ぶ
声ぞ虚しき
小夜更けにける
余りに切なくなり、会いたくて思わず…彼の名前を呼んでみた…。
遠くへと行った彼は、もうここにはいないのだ…。そんな彼を呼ぶ私の声は、さぞ滑稽で…なんて無意味なものなのだろうか…。
淋しさが募る夜更け…今日もきっと、彼の名前を口にするだろう…。
片恋の
辛き想いに
溜め息を
吐きてや見なば
世も徒然に
片想いとは辛く…想えば想うほどに堪えがたくなるものだ…。
そんな彼への想いに溜め息を洩らし、ふと外を眺めて考えたらば…世の中と言うのはさして何をするでもなく、ただ自然と人とが右往左往しているだけなのだ…と、そう思えた…。
そんな小さきものが恋愛で苦しんだり喜んだりするのだから、これもまた虚しいようにも思える…。
しかし…命短き人だからこそ、これ程に一人を愛せるものかも知れないとも思える。
たとえそれが…儚く散りゆくものだとしても…。
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