家に帰ると
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第三章
「だからこれはな」
「何だっていうんだ?」
「事件だろ」
「誘拐とかか」
「大変だ、すぐにな」
太洸が止める前にだった。
一一〇番に連絡をした、そうしてだった。
太洸にだ、こう言った。
「警察に連絡した、誘拐だってな」
「待て、もうか」
「駄目か?」
「馬鹿じゃないのか、御前は」
いささか唖然となってだ、太洸は俊介に言った。
「いきなり警察か」
「すぐに来てくれるって言ってるぞ」
「真面目な警察だな」
「こうした時にすぐに動いてくれるからな」
「中々動かない警察も多いけれどな」
「聞いてただろ、誘拐だって警察に言っただろ」
「ああ、確かにな」
横から聞いてたのでだ、太洸も知っている。
「御前伝えたな」
「それで家に来てもらってな」
「それでか」
「家の中を調べてもらってな」
「自宅で誘拐されたか」
「その可能性高いだろ」
そう決め付けての言葉だった。
「親父はともかくお袋と妹はな」
「もう家にいる時間だからか」
「そうだよ、それで家にいないっていうのはな」
「外出の可能性はないか?」
「だから外出してたらな」
その時はとだ、俊介は太洸に自分の携帯を彼の顔の前に突き出して言った。
「メールでも連絡があるんだよ」
「それがないからか」
「ああ、これはまずい」
誘拐かも知れないというのだ。
「だからなんだよ」
「連絡したんだな、警察に」
「そうなんだよ、洒落になってないだろ」
「リアルに誘拐ならな」
「ことは一刻を争うぞ」
誘拐ならとだ、俊介は真剣そのものの顔で言う。
「お巡りさん早く来てくれないか」
「連絡してすぐに来ないだろ、流石にな」
「来てくれないと困るんだよ」
真剣そのものの顔での言葉である。
「早く来てくれよ」
「やれやれだな」
「そうだよ、まだか」
俊介はしきりにそわそわしていた、そうして太恋にあれこれと言っていた。だがそうした話をしているうちにだった。
制服のお巡りさんが一人来た、それで玄関から二人に言って来た。
「通報あったそうですが」
「はい、誘拐事件なんです」
「それが本当なら大変ですね」
「大変どころじゃないですよ」
喰らいつく様にしてだ、俊介はお巡りさんに言った。彼の横には太洸が今っもいる。
「それこそ」
「あの、それでこれからは」
「ちょっと家を調べてくれますか?」
まずはだ、こう言うのだった。
「証拠があるかも知れないですから」
「お家の中は荒らしてないですよね」
「そんなことはしてないです」
やはり喰ってかかる様な返事だった。
「わかってますから」
「だといいですが」
「とにかく調べて下さい」
俊介は必死の口調のままお巡りさんに言う。
「早く、とにかく誘拐されたんですから」
「それもう確定事項ですか?」
「だから普段家にいる時間なのにいないんですよ」
それならというのだ。
「もう確定じゃないですか」
「あの、ただ外出されているだけでは」
「俺もそう言ってるんですが」
ここでだ、太洸もお巡さんに言った。
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