| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

ベーカー街

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第四章

「トムね、見付けてくれたのね」
「ホームズさんがね」
「だからシャーロック=ホームズは」
「はじめまして、ミセス」
 微笑んでだ、ホームズは言って来た。
「私がシャーロック=ホームズです」
「本当におられたの」
「ベーカー街に」
「嘘みたい」
「嘘ではありません、私はいつもいます」
「ベーカー街に」
「そして皆さんと同じ世界に」
 そうだというのだ。
「いるのです」
「そうだったのですね」
「ではこの猫はお返しします」
「有り難うございます、では探偵として見付けて頂いたので」 
 母は自分から言った。
「お礼をさせて頂きます」
「報酬ですね」
「はい、これから払わせて頂きます」
「有り難うございます、それでは」
「それでどれ位でしょうか」
 その報酬の額はというのだ。
「一体」
「これ位になりますが」
「あれっ、それ位でいいんですか?」
 その報酬の額をホームズ本人から聞いてだ、母は少し驚いた。そのうえで彼にこう言葉を返したのだった。
「そんな少しで」
「はい、私としては」
「安いですね」
「すぐに終わった仕事なので」
「だからですか」
「それに私はネロ=ウルフさんと違います」 
 安楽椅子型で肥満した探偵である、美食家でとりわけビールが好きだ。
「お金には困りません」
「そうなんですか」
「はい、ですから」
 だからだというのだ。
「こちらについてはです」
「構わないと」
「そうなのです、ですから」
 それでというのだ。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧