八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第五十一話 親父の女達その二
「より強くないと止められないじゃない」
「そういえば」
僕も言われて気付いた、そのことに。
「そうなるね」
「そう、だからね」
それでというのだ。
「義和のお母さん最強じゃない」
「ううん、お袋って強かったんだ」
「というか武道やってたとか?」
「まあ武道はね」
そう言われるとだ、僕はこう言った。
「やってたかな、そういえばお袋のことあまり知らないよ」
「そもそもどうしてお父さんと結婚したの?」
「お見合いだったかな。とにかくね」
「結婚したけれど」
「今は別居してるよ」
その美沙さん曰く強いお袋はだ。
「親父ともそうなったけれど」
「家庭崩壊?いや一家離散?」
「そうなる?確かに今家族三人共別々に暮らしてるけれど」
それでもだ。
「いや、それはね」
「違うのね」
「親父は転勤というか仕事でイタリアに行ったから」
「離散じゃないのね」
「そうなるよ、あとお袋まだ離婚はしてないんだ」
「あっ、そうなの」
「これからどうなるかわからないけれど」
本当にだ、これからどうなるかはわからないけれどだ。
「まだ離婚はしてないんだ」
「籍はそのままなのね」
「元気かな、お袋」
ここで僕はふとお袋のことを思いだした。
「もう長い間会ってないな」
「今実家におられるのよね」
「そうなんだ、元気だといいけれど」
「何かあったら連絡いくでしょ」
「まあそうだよね」
言われてみればそうだった、確かに。
「そのことはね」
「そう、だからね」
「それでなのね」
「ひょっとしたら」
「ひょっとしたら?」
「実家で気楽に過ごしてるかもね、お袋も」
このことを心から楽しんでいる。
「案外」
「お父さんがいないから」
「あの親父はもう歩くトラブルメーカーだから」
まさに文字通りにだ。
「その親父と離れてるから」
「やっぱり夫婦仲悪いのね」
「親父はそうでもなかったけれど」
こうした時は二人の間柄だからだ。
「お袋は愛想尽かしたから」
「仲は、なのね」
「悪かったよ、まあとにかくね」
「お母さん元気なのね」
「連絡ないってことはそうだね、とにかくね」
ここでまた言う僕だった。
「あの親父は元気だよ」
「イタリアでも」
「派手に遊んでるみたいだから」
「遊べるってことはよね」
「健康ってことだからね」
そうなるからだ、とにかく今の話で僕はお袋のことをあらためて思うことになった。
それでだ、こう美沙さんに言った。お蕎麦を食べつつ。
「親父の心配はしてないよ」
「お父さんからの連絡は」
「あるよ、それもしょっちゅうね」
「お父さんからの連絡はあるのね」
「正直多いんじゃないかって思うよ」
うんざりしているとまではいかないがそれでもだ。
「メールも毎日みたいに苦し。それに」
「それに?」
「イタリアから送ってくるものも多いし」
「どんなのあるの?イタリアからって」
「本場のパスタとか服とか」
他にはだった。
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