真田十勇士
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巻の十七 古都その五
「あの鹿達はこの社の使いじゃからな」
「ですな、だから余計にですな」
「大事にせめばなりませぬな」
「あの鹿達は」
「他の鹿達とはそこが違いますな」
「左様、神仏は敬うものじゃ」
人として、というのだ。
「だからな」
「あの鹿達もですな」
「大事にして」
「我等が先程した様に」
「そうすべきですな」
「そうなのじゃ、では春日に参り」
そして、とだ。幸村は家臣達に笑って話した。
「他の寺社も巡ろうぞ」
「ですな、この奈良の」
「見て回りましょう」
「折角来たのですから」
「是非」
「都でもそうしたがな」
実は幸村達は都でも寺社を見て回ったのだ、ただ町の中を見物して賑わいを楽しみ銭を稼いだだけではなかったのだ。
「ここでもな」
「はい、見て回り」
「そしてですな」
「後学に役立てましょう」
「そうしましょう」
こう話してだった、一同は春日大社の後も他の寺社を見て回った。そうして奈良の町を楽しんでそしてだった。
宿の中でだ、全員で言った。
「いや、奈良もまた」
「実によいところですな」
「寺社が多くです」
「見所が尽きませぬ」
「そうじゃな、奈良に来てよかった」
幸村もこう言う。
「よい学びになっておる」
「旅は最高の学問といいますが」
「実際にですな」
「我等の旅はそうなっていますな」
「最高の学問にもなっています」
「殿と巡り合えただけでなく」
「この旅で近畿の多くを知ることも出来た」
幸村はこのこともよしとしていた。
「後々役に立とう」
「伊勢にも行き」
「そして尾張にも」
「そうしてですな」
「三河や駿河にも入り」
「見ていきますな」
「そうする、そうして見たものを役立てよう」
幸村は微笑んで言った、そしてだった。
酒を飲んでだ、こんなことも言った。
「それで奈良の酒じゃが」
「はい、奈良の酒もまた」
「実に美味いですな」
「都や大坂の酒も美味かったですが」
「奈良の酒も」
「うむ、よい」
実にというのだ。
「上方の酒は全体としてよいな」
「確かに。近畿の酒は」
「何処の酒もよいです」
「実に美味く」
「幾らでも飲めます」
「水がよいからじゃな」
何故上方の酒が美味いかだ、幸村はそこに理由を求めた。
「だからな」
「よい水がよい酒を作る」
「そういうことですな」
「酒は米から作る」
こうもだ、幸村は言った。
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