リリカルアドベンチャーGT~奇跡と優しさの軌跡~
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Another106 カイザーの憎しみ
デジモンカイザーは要塞内にて苦虫を噛み潰したような表情をしてモニターを見ていた。
どうやらダークタワーでエリアの監視をしていたのがバレていたらしく、役立たずを処分する前に破壊されてしまう。
カイザー「虫螻共が…」
自分より何もかも劣る存在の抵抗ほど腹立たしいものはない。
何故自分は選ばれなかったのだ。
誰よりも優れていたのに。
『ふふふ、悔しいだろうな、自身を差し置いて自身より遥かに能力が劣る存在が選ばれていることに』
自身の中から聞こえてくる暗い声に苛立ちながら答えるデジモンカイザー。
カイザー「いや、奴らだけじゃない。この世界にも、どこにもに僕に並ぶものなど存在しない!!何者も、この僕のことを理解することなど絶対に叶わないんだ!!」
度を越えた傲慢を思わせる台詞だが、それは今より幼い頃からずっとただの一乗寺治ではなく、天才少年の一乗寺治だけとしか見られなかったから。
カイザー「創ってみせるぞ、この世界に僕の理想郷を…僕が認めた存在のみが生きることを許される理想郷を!!」
『(青二才の小僧め、精々私の掌の上で踊っていろ。貴様の創る理想郷とやらはこの私が肉体を取り戻した後、有効利用してやる)』
デジモンカイザーの言葉を聞いていた存在は吹き出しそうになるのを堪えるので精一杯であった。
デジモンカイザーもデジモンカイザーに寄生している存在も知らないが、デジタルワールドは未来を、夢を信じる存在を選ぶ傾向がある。
事実、及川も夢を信じることを思い出した直後にパートナーデジモンに会えたのだ。
恐らくデジモンカイザーが選ばれなかったのは頭脳が秀で過ぎているが故に、自分は天才少年からの呪縛からは逃れられないのだと、未来と夢を諦めてしまったからだろう。
天才的な能力を生まれながらに持って生まれたことがデジモンカイザーの最大の不幸なのかもしれない。
大輔「こいつでラストだ!!」
ダークタワーを破壊し、次々とデジモンカイザーに支配されたデジモンを解放していく。
大輔「さて、これで俺が担当していた場所は終わり…ヒカリちゃん達は大丈夫だろうかね」
ヒカリ達の元に向かう大輔だが、背後から光線が放たれ、それを上手く回避した大輔。
大輔「トゥインクルビーム…メカノリモンか?」
光線が放たれた方角を見遣ると、漆黒のメカノリモンに乗ったデジモンカイザーの姿があった。
カイザー「よくも僕の領地で好き放題してくれたな」
大輔「それをあんたが言うのか?どこからどう見ても好き放題してんのあんただろうがよ一乗寺治さん」
ブイモン[そうだそうだ。自分が選ばれなかったからって八つ当たりすんなこの友達が遼以外いない卑屈野郎め]
とんでもない暴言をブイモンが飛ばすが、デジタルワールドを滅茶苦茶にされてるんだからこれくらいの暴言は大目に見て欲しい。
カイザー「貴様あ…」
ブイモン[あれ?怒った怒った?実際お前友達とか仲間もいないじゃん。そうだよな、勝手に諦めて距離を置くような奴と誰が友達になりたいと思うもんか]
ブイモンが胸を張りながら言うとデジモンカイザーは肩を震わせ、笑った。
カイザー「ふははははは!!友達!!?仲間!!?愚か者の証拠を胸を張って言い切るなんて笑いが止まらないよ!!!!」
ブイモン[何だって?]
今度はブイモンがむっとなる番であった。
カイザー「友達とか仲間なんて、そんな物があってどうなるんだ?そんなの弱さを生むだけだ。僕はデジモンカイザーだ!!皇帝となる僕にそんな物は不要!!要るのは配下のみ!!」
ブイモン[なら教えてやるよ。友達と仲間の存在の大切さをな!!]
大輔「デジメンタルアップ!!」
ブイモン[ブイモンアーマー進化!ゴールドブイドラモン!!]
運命のデジメンタルでゴールドブイドラモンにアーマー進化し、カイザーに突撃させる。
ホークモン[大輔さん!!]
アルマジモン[俺も戦うだぎゃ!!]
大輔「お前達は無理するな、さっきの戦いで相当消耗したからな。今は体力を回復させるんだ」
カイザー「ふん、アーマー進化か。所詮は仮初めの進化じゃないか。それにその程度なら」
ゴールドブイドラモンがメカノリモンを殴ろうとした瞬間、姿が消えた。
ゴールドブイドラモン[速い!!?]
カイザー「僕が改造を施したメカノリモンと僕の組み合わせの敵ではない!!」
メカノリモンの右ストレートがゴールドブイドラモンに炸裂した。
勢いよく、街の建物に激突した。
カイザー「どうしたのかな?言っとくけどこれはただの小手調べさ」
ゴールドブイドラモン[だろうな、そんな程度じゃガッカリするところだぜ。今度はこっちの番だ!!マグナムパンチ!!]
メカノリモンにゴールドブイドラモンの渾身のストレートが炸裂するが。
カイザー「温すぎて欠伸が出るねえ…」
ゴールドブイドラモンのマグナムパンチはメカノリモンの装甲を僅かにヘコませただけで終わった。
大輔「いくら連戦後だからってゴールドブイドラモンのパンチで装甲がヘコんだだけ…?」
カイザー「当たり前さ、このメカノリモンは改造に改造を重ね、今や並みの究極体を遥かに上回るスペックを誇っている。それを天才たる僕が扱えば…」
デジモンカイザーが駆るメカノリモンがゴールドブイドラモンの全身を打ち据える。
ゴールドブイドラモン[ぐっ、こいつ…]
カイザー「どうしたのかな?それで終わりかな?せっかく僕自ら相手をしてやろうとしたのに、これはこれで少し寂しいんだけど?」
ゴールドブイドラモン[調子に乗るなよ!!ブイブレスアローMAX!!]
メカノリモンに向けて放たれる熱線だが、デジモンカイザーは避けようともせず、メカノリモンの掌で受け止めて見せた。
大輔「なっ!?受け止めやがった!!」
カイザー「この程度の技、かわすまでもないね。君達の実力がこの程度なら僕自ら排除すべきだった。君達に保護された役立たず共も後でゆっくり処分してやる」
ゴールドブイドラモン[ぐおっ!!?]
ゴールドブイドラモンの身体をメカノリモンの両腕で掴むと、握り潰さんとする。
ホークモン[外道め!!傷ついたデジモンまで殺そうとする冷血漢め!!]
カイザー「外道?冷血漢?違うね、これは当然の権利だよ。優れた存在に劣った存在が管理されるのは当然のこと、なら僕がどう扱おうが勝手じゃないか。ああ、そうだ。次は始まりの町を支配しようかなあ。あそこなら選別する場所としても…」
ミシッ…
カイザー「ん?な、何!!?」
今度はデジモンカイザーが驚愕する番だった。
今までゴールドブイドラモンがどんなに攻撃をしても大したダメージにならなかったメカノリモンの装甲にゴールドブイドラモンが掴んだ箇所から亀裂が入り始めていたのだ。
ゴールドブイドラモン[八つ当たりでこの世界を荒らすのもいい加減にしろよこのクソガキがああああああっ!!!!]
全身から閃光を迸らせ、メカノリモンを一瞬で破壊するゴールドブイドラモン。
咄嗟に脱出したデジモンカイザーだが、ゴールドブイドラモンは逃しはしない。
ブイモンに退化して、デジモンカイザーを殴り飛ばした。
カイザー「くっ!?下等な存在の分際でこの僕を!!」
ブイモン[何度でも何度でも何度でも殴ってやるよ!!お前が妄想から抜け出すまでな!!]
宣言通り、デジモンカイザーを何度でも殴るブイモン。
自分の生まれ故郷であるデジタルワールドを荒らし、果てには始まりの町まで支配すると言い出した目の前の存在を放置出来るほどブイモンは優しくはない。
ブイモン[何がきっかけでそうなったのか知らないけどな…お前がしようとしていることは絶対に許さない!!]
カイザー「黙れ虫螻が!!」
ブイモンを掴んで投げ飛ばすデジモンカイザー。
投げ飛ばされたブイモンは軽やかに着地した。
カイザー「僕はデジタルワールドの皇帝となる者だ!!僕が認めた者だけが生きる理想郷を創る!!!!」
大輔「ふざけんのも大概にしてくれ。そんな物創って何になるんだ?皇帝ごっこならよそでやれよそで」
深い溜め息を吐く大輔。
何故だろうか、デジモンカイザーと会話を交わす度に疲労が蓄積していく感じがする。
カイザー「皇帝ごっこ…!?」
自分の野望を遊びと切り捨てる大輔にデジモンカイザーは恐ろしい表情で睨み据える。
大輔「あんたが少しでも素直に夢と未来を信じてたら選ばれたのかもしれないのにな…」
カイザー「訳の分からないことを!!今回はここで退いてやるが、このままでは済まさんぞ!!!」
パチンと指を鳴らすと、メガドラモンがやってきてカイザーを乗せると、この場を去っていくのだった。
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