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FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~

作者:山神
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ドキドキ・リュウゼツランド 後編

「それぇ!!」
「きゃっ!!」

さっきのスライダーから借りパクしてきたバナナボート(ついでにもう1つ借りてきました)にウェンディとシェリア、ソフィアと俺というベアで跨がり水の掛け合いっこをしている。

「楽しいね!!シェリア、ソフィア」
「そうそう!!その調子」
「やっと慣れてきたみたいだね!」

髪についた水滴を払いながらシェリアとソフィアにそう言うウェンディ。それに対しシェリアが笑みを浮かべながらそう言う。

「へ?」
「「こ・と・ば!!」」

そう、ウェンディはこの4人で遊んでいる時敬語やさん付けで呼ぶことがあった。普段から敬語にさん付けのウェンディに取ってはそれは当たり前のことなんだけど今は友達同士のお遊びタイム。堅苦しいのはなしでいこうっということで言葉遣いに色々と気を配っていたりする。

「お?楽しそうだね」

俺たちが水遊びしていると水族館に行っていたレオンが戻ってくる。なぜか1人で。

「あれ?ラウルはどうしたの?」
「一緒に水族館にいったんだよね?」

シェリアとソフィアがそう質問するとレオンは親指を立てて後ろを指差す。
俺たちがレオンの後方を見るとそこには巨大化してセシリーとシャルルを抱えるリリーとハッピーを抱えているラウルがいてこちらに向かって歩いてくる。
リリーに抱えられているシャルルとセシリーは少し怒っているように見えるけど・・・どうしたんだ?

「どうしたの?シャルル」
「何かあったのか?セシリー」

ウェンディと俺がシャルルたちに質問する。

「女子としてあるまじき辱しめにあったのよ」
「さすがの僕もあれは勘弁してほしいよ~」
「「??」」

シャルルは怒りやすいからまだ何となく何かあったのはわかるけどセシリーまで怒っているのは珍しい。あいつはのんびり屋だからあまり怒るということをしない。それが怒ってるんだからよほど嫌なことでもあったんだろうけど、何があったか検討もつかない俺とウェンディは顔を見合わせる。

「ごめんねシャルル・・・セシリー・・・オイラのお腹の虫のせいで・・・」
「あのねぇ・・・」
「そういう問題じゃないんだけど・・・」

ラウルの腕の中で涙ながらに謝罪するハッピー。だけど少しおかしな謝り方だったためにシャルルとセシリーは完全に呆れてしまっている。

「いや、俺が修行不足だった。あんな魚ごときに、なんたる屈辱!!ぬおおおおおおおおお!!」

リリーは何がそんなに悔しかったのかいきなり大声で叫び出す。その目にはうっすらと涙が浮かんでいる。

「えぇ?でも見てる側としては最高に面白かったよ(笑)」
「そういう問題じゃないから!!」

他のエクシードたちとは違って笑顔になっているラウル。それに対しシャルルが怒鳴っている。

「なんだろう?あれ」
「さぁ?」
「“愛”だね」
「てかあれ・・・猫?」

ウェンディがその様子から何があったのか俺たちに聞いてくるがよくわからない俺とシェリアは誤魔化しながら返答する。そんな中ソフィアだけはゴッツイリリーを見て目を点にしていた。

「で?実際何があったの?」
「実はな・・・ククッ」

レオンはよほど面白かったのか口元に手を当て笑いを堪えながら話し始める。
さっきレオンとラウルが見に行った『餌やりショー』。そこでは本来水族館の担当の飼育員が魚たちに餌をやりながら自由自在に泳がせ観客たちにその姿を見せていくというものなのだが、今日はその担当者が急用でこれなくなってしまったらしい。
本来ならそれで中止になってしまうところなのだがその話を聞いたハッピーが「オイラがやってあげるよ!!」と言って任せられることになったらしい。
だがハッピーが立候補した理由はなんと水族館のお魚たちを食べたかったかららしく、いざショーになるとハッピーが餌を大量に撒きまくり、結果として凶暴な種類な魚たちに追いかけられたらしい。
シャルルとリリー、セシリーやガジルさんやレビィさんも餌やりに巻き込まれたのだが、追いかけられるハッピーたちを助けようとガジルさんが鉄竜棍で魚たちを撃退していると、リュウゼツ水族館の裏番長である巨大な白魚?にハッピーもガジルさんも全員吸い込まれたらしい。
そんなことがあったからシャルルとセシリーはプンプンし、リリーは悔しがり、ハッピーは謝罪していたらしい。
だけどお客さんには好評だったからラウルやレオンは大爆笑しているのだった。

「魚に食われる猫かぁ・・・少し見たかったかも」
「ソフィアまでそんなこと言うんだ・・・」

ソフィアはその話を聞いて頭の中で想像してみたらしいが、普段食べられる側の魚が猫を食べるというシュールな光景に思わず口元を押さえていた。
結局ハッピーたちはこれまた魚にいいようにやられて落ち込んでいるガジルさんたちの方へと歩いていく。ラウルも同じエクシードとして仲良くなったのか、人間の姿からエクシードの姿になるとハッピーたちと一緒に歩いていってしまった。

「ラウルもハッピーたちと仲良くなったんだね」
「同じ猫同士、話があったんじゃないの?」

離れていくラウルたちを見てそう話すシェリアとレオン。レオンも戻ってきたということで、俺たちは5人で遊ぶことにした。

「何して遊ぶの?」

バナナボートを返してきた俺がそう訪ねる。水遊びはかなりやったから飽きてきたし、5人でやれることって何かあるかな?

「ふふ~ん♪そこはソフィアにお・ま・か・せ☆」

ソフィアはそう言うと胸を覆うビキニの中をまさぐり始める。それを見てシェリアがレオンの、ウェンディが俺の目を急いで押さえて隠すようにする。前から言ってるけどウェンディ押さえる時力入りすぎていたいんだけど。

「ソフィア何してるの!!」
「いいじゃん別に。男いないんだし」
「隣にレオンがいるんだけど・・・」

ウェンディがいきなり胸元を漁るソフィアに怒鳴ると全く気にした様子もなく答えるソフィア。シェリアの言う通りレオンが隣にいたけど、ソフィアの正面には俺もいるのをお忘れなく。

「っんしょ・・・はい!!」

ソフィアが胸から取り出したのは折り畳まれたビーチボール。なぜそんなところにしまっていたのか気になったがあまり追求するとウェンディにどこ見てるのか突っ込まれそうなのでやめておく。

「これ膨らませてビーチバレーしようよ!!」
「「「賛成!!」」」

そういってソフィアはレオンにペッタンコのビーチボールを渡し膨らませてもらう。レオンは肺活量があるのか、俺たちが海合宿で使ったほどの大きさのあるビーチボールも楽々膨らまし終える。

「ほれ、できたぞ」
「サンキュー!!じゃあ始めよ始めよ!!」

俺たちはラリーができるようにと円形に少し広がる。幸い俺たちのいるプールには今人がいないため、多少スペースをとっても大丈夫になっている。

「ほれ!!」

レオンがアンダーサーブでボールをあげてウェンディたちもトスなどをしてボールを回していく。シェリアとソフィアはいつもやっているのか、大変ボールの扱いがうまかったりする。
そんな感じでしばらく遊んでいると

「食ったら力が湧いてきた!!」

遠くの方からナツさんの声が聞こえそちらを見ると、砂煙を巻き上げながらプールサイドを走っているナツさんと一夜さんが目に入る。

「ナツさん!!」
「何やってるだよナツさん・・・」

ウェンディと俺はそう言う。プールサイドは滑りやすく転びやすいから走ると危ないのに、そんなことなど関係なく2人は全力疾走している。

「さっきのショーもだけど、妖精の尻尾(フェアリーテイル)って面白い奴多いな」
「“愛”だね」

レオンとシェリアはその様子を見ながら楽しそうに笑っている。

「どうせ走るならエルザさんとかミラさんとか走ってくれればいいのになぁ」
「?なんで?」
「揺れるから!!」

ナツさんと一夜さんの走る姿を見てソフィアがそう言う。ソフィアがエルザさんたちが走る姿を見たい理由あまりにも予想通りだったため、質問したシェリアは苦笑いするしかない。

ズルッ

「メェーーーーン!!」
「わああああああ!!」

走っていた一夜さんが足を滑らせ転倒し、ナツさんがそれに巻き込まれて体を回転させながら飛んでいく。

「すごい飛ばされ方だね」
「何やってんだか」

シェリアとレオンはそう言いながら飛んでいくナツさんとプールの水面を体を回しながら滑っていく一夜さんを見つめる。

「あれが女の子だったらソフィア頑張って助けるんだけどなぁ」
「ソフィアっていつもそんなことしか考えてないの?」

ソフィアに対しウェンディがそう言うと、ソフィアはニコッと笑いながら「うん!!」とうなずく。今日のバトルパートでも何やらやってたらしいし、ソフィアの変態は天性のものなんだろうな。

「ソフィアって絶対仕事の指命とか女の人から来ないだろ」
「え?仕事の依頼って指名とかあるの?」

レオンの言葉に反応したのは俺。仕事ってリクエストボードとかに貼ってあって自由に選べるものなんじゃないのか?

「普通は評議院から回ってきたのを自由に選ぶんだけど、依頼主がどうしてもって時は魔導士を指名することもできるんだよ」
「うちだとリオンくんとかジュラさんがよく指命されるな」
「「へぇ~!!」」

シェリアとレオンの説明にウェンディと俺は感嘆の声を漏らす。そんな制度があったのか、知らなかった。
すると、レオンにそう言われたソフィアが「フフフッ」といきなり不気味に笑い出す。

「レオンはソフィアが女の子に指命されないと思ったでしょ?」
「ああ」
「じ・つ・は!!人魚の踵(マーメイドヒール)で一番女の子からの依頼が来るのはソフィアなんだよ!!」
「「「「・・・え?」」」」

ソフィアが何を言っているのかわからずに固まってしまう俺たち、ソフィアが女の子から・・・一番人気がある・・・?

「「「「えぇーーーーー!?」」」」

俺たち4人の声が被さる。しかし、叫んだ後にシェリアが何かに気づいたような声を出す。

「あ・・・もしかして・・・あの魔法?」
「ピンポーン!!」

シェリアの問いに人差し指を立てて返事をするソフィア。

「あの魔法って何?」
返し魔法(カウンター)じゃないの?」

俺とウェンディはシェリアの言うソフィアの魔法が気になり質問する。ソフィアの魔法は返し魔法(カウンター)というどんな魔法でも返せる魔法のはず。だけどそんなのが女性人気1位に繋がるとは思えない。もしかしてソフィアはもう1つ何か魔法が使えるのか?
俺たちが質問すると待ってましたと言わんばかりにソフィアは顔を近づけてくる。

「じゃあ!!2人にかけてあげようか?」
「いや、いいや」
「嫌な予感しかしないもんね」

ソフィアの提案は即却下。こいつの今までの行動から察するに絶対変な魔法な気がするもん。ここは避けておくべきだと俺の勘が言っている。

「ちぇっ!!それじゃあ・・・」

ソフィアはシェリアに視線を送るが、シェリアは素早くレオンの後ろに隠れる。ソフィアはレオンに魔法をかけようとも考えたようだが、さすがに思い止まったようだ。そしてソフィアは誰かターゲットを見つけようと辺りをキョロキョロしている。

「あ!!」

ソフィアの視線がある人物たちを捉える。そこにいたのはなぜか走っているジュビアさんとルーシィさん。ソフィアは2人にターゲットを決めたのか、そちらに向かって走り出す。
というか、ジュビアさんはグレイさんとリオンさんと『ラブラブスライダー』に行ったんじゃなかったのか?なんでルーシィさんと一緒にいるんだ?

「ホッ・・・ソフィアのターゲットにならなくてよかったぁ」

シェリアはレオンの後ろから現れ、胸の前に手を当てホッと胸を撫で下ろす。そんなにシェリアが嫌な魔法なのに、女性陣には人気って・・・どんな魔法なんだ?かなり気になるぞ。

「ジュビアさ~ん!!」
「?」

俺がそんなことを考えていると、ソフィアは口もきいたことのないはずのジュビアさんに向かってダイブする。いきなりほとんど知らない少女が目の前に飛び込んできたため、ジュビアさんはギョッとしている。
しかし空中に浮いているソフィアが止まるはずもなく、ジュビアさんの胸に飛び込もうとした刹那突然、

ガンッ

「「キャッ!!」」
「「「「「!?」」」」」

2人をピンク色の何かがかっさらっていく。目の前でいきなり人が・・・しかも2人も消えたため俺やウェンディ、さらにはルーシィさんも驚愕の表情を浮かべる。

「い・・・今何が起きた?」
「わ・・・わかんないけど・・・」
「何かにジュビア姉とソフィアが拐われたような・・・」
「2人はどこにいったのかな?」

俺、ウェンディ、レオン、シェリアは何が2人を連れ去ったのかわからずにいた。とりあえず状況を確認したかったので2人のいなくなったポイントであるルーシィさんのいる場所へと行ってみる。

「うわぁ!!やっぱりジュビアさんもいいお胸!!」
「きゃっ!!ちょっと!!どこ触ってるんですか!?」
「いいじゃんいいじゃん!!女の子同士なんだからぁ」
「あなたの触り方は女の子じゃありません!!」

ルーシィさんのところに向かっている最中どこからかそんな声が聞こえたが、今のってジュビアさんとソフィアだよな?どこから聞こえたんだ?

「ルーシィさん!!」
「シリル!!ウェンディ!!それに蛇姫の鱗(ラミアスケイル)のシェリアとレオン!!」

ルーシィさんの元までやって来た俺たち4人。ルーシィさんはこちらに気づくと俺たちの方を向く。

「もしかしてさっきジュビアに抱きつこうとしてたのってマーメイドの・・・」
「そうですよ」
「やっぱり・・・」

ルーシィさんはジュビアさんと一緒に消えたのがソフィアだと知り苦笑いする。いきなり知らない女の人に抱きつくソフィアはたぶん男性陣からすれば尊敬の対象になると思う。

「ってそんなことより、さっきジュビアさんとソフィアが消えましたけど、あれってどうなってるんですか?」

俺が質問を投げ掛けるとルーシィさんは何から説明すればいいのか、困った顔をしている。俺とウェンディがルーシィさんの方を向いていると後ろから声が聞こえてくる。

「きゃっ!!」
「おっ!!」

シェリアとレオンの声が聞こえたのでそちらを向くと、そこにいるはずの2人の姿が見えない。

「あれ!?レオン!?」
「シェリア!?」

俺とウェンディは突然消えてしまった2人を見つけようと少しレオンたちがいた方へと辺りを見回しながら進む。

「シリル!!ウェンディ!!今そっちいったらあぶないわよ!!」
「「?」」

ルーシィさんが何を言いたいのかわからずキョトンとしながら顔を見合わせる俺とウェンディ、だがルーシィさんの言う通り、確かに俺たちのいる場所は危険地帯だった。

ヒュゥゥゥ

後方から何かが向かってくる音が聞こえ、俺とウェンディは振り返る。その俺たちの目の前にはさっきソフィアとジュビアさんをさらっていったピンク色のものが向かってきていた。

「危なっ!!」

俺はとっさにウェンディを抱えて避けようとした。が!!

ガンッ

「うわっ!!」
「痛ッ!!」

気づくのが遅く、ピンクのものを避けきれずに俺とウェンディはその物体に連れ去られていき、

ストッ

ウォータースライダーへと着地しそのまま流されていく。

「な・・・何これぇ!?」
「これってさっきグレイさんたちが乗ろうとしてた『ラブラブスライダー』なんじゃ・・・」

ウェンディの予想が的中しているのだろう、俺たちの乗っているスライダーのスタートラインと思われる位置に2体のキスしている天使の像が見える。これはさっきリオンさんやジュビアさんが乗ろうとしてた『ラブラブスライダー』だ。

「ん?ラブラブ・・・?」

つまり今乗ってる俺たちははたから見たら他人に抱き合っているのを見られても恥ずかしくないくらい互いを愛でているバカップルってことになるのかな?そう考えると少し恥ずかしい気もするけど、これはこれで嬉しい気もするから不思議だ。

(かあ~/////)

ウェンディも同じことを考えているのか、顔を真っ赤にしている。そんなウェンディも可愛くて、俺は少しその小さな体を引き寄せ互いの体を近づける。

「し・・・シリル!?/////」

いきなり抱き寄せられたウェンディはさらに顔を赤くしていく、

「ら・・・ラブラブスライダーっていうくらいだし、これくらいしてもいいよね?/////」
「う・・・うん/////」

自分で引き寄せておいてなんだけど、少しずつ恥ずかしくなってきた俺も顔が火照ってきた。たぶん今のウェンディぐらい俺の顔は赤くなっていると思う。

「「・・・/////」」

互いに視線を反らし、たまに相手がどんな表情しているのか見ようとすると目があってまた視線を外す。普段からイチャイチャしてるとこの程度なんでもないのだろうけど、たまにこうなるとお互いにどうすればいいのかわからなくなってしまう。もっと普段からイチャイチャしてればよかったぁ!!いや、それもそれで恥ずかし―――

「うっ!!」

1人で頭の中で色々考えていると、突然急激な吐き気が襲ってくる、まさかこれって・・・

「どうしたの?」

俺の異変に気づいてこちらを上目遣いで見つめるウェンディ。俺は片手はウェンディの腰を抱いたまま、別の手を口元に当てる。

「トロイア切れた・・・」
「えぇー!?」

バナナボートスライダーに乗った時にかけてもらったトロイアがたった今切れ、俺は赤みを帯びた顔から一転、真っ青になってしまう。
そんな俺を見てウェンディが慌てている。一度落ち着いてくれ。そして・・・トロイアかけてくれ・・・

























レオンside

なんかシリルとウェンディが大騒ぎしてるけど、しばらくするとその声も聞こえなくなる。何かトラブルでもあったのかと思ったけど、大したことなかったか解決したみたいだな。

「それにしてもどうなってんだよこれ」
「さ・・・さぁ?/////」

俺は突然消えたソフィアとジュビア姉を探そうと思ってプールサイドに上がったのだが、後ろから来た何かにいきなり体を掬い上げられてしまい、異様に長いウォータースライダーを滑らされている。

「これってもしかして噂の『ラブラブスライダー』なんじゃ・・・/////」コソッ

俺と一緒に掬い上げられたシェリアは熱でもあるのか、顔を赤くしてうつ向いている。しかしその手は俺の背中にしっかりと巻き付けられ、かなり体が密着している状態である。

「きゃあああああ!!」
「うおおおおおお!!」

至るところから聞こえてくる悲鳴。俺の確認できる範囲ではあるが、リオンくんとグレイさんを先頭にリリーとセシリー、シャルルとラウル、ガジルさんとレビィさん、ジュビア姉とソフィア、エルフマンさんと茶髪の眼鏡をかけた女の人、ミストガンさんとエルザさんがそれぞれ俺とシェリアみたいに抱き合い、長い長いスライダーを滑り降りている。
んで、おそらくではあるが俺たちをこんな風に巻き込んでいるのは・・・

「やっぱり妖精の尻尾(フェアリーテイル)か・・・」

ソフィアとジュビア姉を連れ去ったピンクの謎の物体。それをここから推測する限りだとハート型をしたスライダーのスタート地点にあるはずのゲートだと考えられる。それに今現在乗っているのは顔面蒼白のナツさん。あの人はよく物を壊すってリオンくんから聞いてたし、今回も運悪くあれを壊してしまったのだろう。

「つか、いつまでこれ滑ってるんだよ」

俺のイメージではあるのだが、ウォータースライダーは長くてせいぜい30秒から1分くらいしか滑らないイメージがある。だが俺たちはすでにその何倍もの時間をこの蛇のようにうねる道に費やしている。
よく見るとこのスライダー、リュウゼツランドのプール場全体に張り巡らされており、相当金をかけた・・・もとい、手の込んだものになっている。

「「・・・/////」」

ウォータースライダーだからシリルになんとか助けてもらおうかと思ったが、ウェンディと固く抱き合っている2人は恥ずかしいのか、赤面しておりとても何かできるようには思えない。

「ジュビアさんお尻もいいですね!!」
「ああん!!もうやめてぇ!!」

リオンくんの想い人で水の魔導士でもジュビア姉にお願いしようと思い視線をそちらに向けたが、ソフィアのあまりのいやらしい手つきに完全に参っており、体に力が入らない様子。ソフィアから離れようにも体をまさぐられたことによって徐々に力が入らなくなったようで、口ではやめてほしそうだが体は下になっているソフィアに預けている状態。あれでは水を操って何かをするのは不可能だな。

「しょうがねぇ。自分でなんとかするか」

俺はシェリアの腰に回している手を合わせる。ここから階段でもなんでも作ってプールサイドに降りてしまおう。後の人たちは互いの温度を感じながら最後まで楽しんでください。

「アイスメイク・・・・・」

手に魔力を込める。しかしそこである問題が起きた。
イメージがうまくつかめない。階段をすぐ真横に作ると流されている今の状態では通り過ぎるのが目に見えてるし、かといって滑り落ちないようにすると上から来てるシリルたちに突っ込まれてケガするかもだし、かといって先の先まで階段作ってしまうとこの状態でそこまで滑り降りなければならない。
ましてや俺は今シェリアを抱いている状態。力には自信あるけど運動能力はいたって平凡。シェリアを抱えたままどうやって階段に飛び乗るか・・・

ギュッ

俺が試行錯誤していると、シェリアが腕に力をいれて俺にさらに密着する。

「どうした?」
「こ・・・このまま・・・ レオンと最後まで滑りたいなぁなんて/////」

今まで見たことないくらい顔が赤いシェリア。本当に熱でもあるんじゃないのだろうか。それなら出来るだけ早く水から上がらせたいのだが・・・

「オーケー、最後まで滑ればいいんだな?」
「う・・・うん!!/////」

俺の返事を聞いて嬉しそうに微笑むシェリア。
俺はこいつに頼まれると断ることができない。理由は単純、シェリアには大事な借りがあるからだ。
俺はシェリアの背中で合わせていた手を離して魔法の体勢を解く。

「凍れ!!」
「てめぇが凍れ!!」

下の方からリオンくんとグレイさんの言い争う声が聞こえる。あんな男同士で抱き合って・・・一部の女子が見たら喜びそうな光景だな。

「レオンはドキドキしてないのかな?」コソッ

シェリアは1人で何かを呟いている。どうしたんだこいつ、本当に調子悪いんじゃないのか?

「おい、お前さっきから大丈夫なのか?ヤバイならそう言えば―――」

俺がなんとかするぞ、と言おうとしたとき、

「「うおおおおおおお!!」

下から雄叫びが聞こえてくる。それと同時に水温がかなり低下したことに気づいたが前の方で何が起きているのかシェリアがブラインドになっていて確認できない。

「なんだ?」

俺はシェリアを動かし前が見えるようにする。そこにはあるものが迫ってきていた。


























氷の波が俺たちに迫ってきていた。

「なっ!?」
「きゃっ!!」

氷なら俺が本来なんとでもすることができる。だけど気づくのが遅すぎたために何も対応ができない。

「「うわっ!!」」

押し寄せてきた氷の波は俺とシェリアを飲み込み、さらに上方へとかけ上っていった。



















シリルside

「シリル・・・なんか寒くない?」
「俺もそう思う」

トロイアをかけてもらって元通りになり再び沈黙になっていた俺とウェンディ。しかし突然の水温の変化で2人共赤かった顔は少し青くなっている。

バキバキバキバキ

下から嫌な音が聞こえてきたそちらに視線を動かす俺とウェンディ。そこには氷の波が迫ってきていた。

「「ええっ!?」」

氷の波は俺たちはおろか、リュウゼツランド全域へと広がりプールから一転、スケートリンクのようは辺り一面銀世界が出来上がる。

「グレイか!?何しやがんだ!!」

リュウゼツランドに来ていた全ての人が凍ったのかと思っていたが、ナツさんだけは難を逃れていたらしく氷の上に乗っている。

「うごっ!!」

ナツさんは氷の上で足を滑らせ頭を打ち付ける。

「ば・・・バカ野郎・・・プールを凍らす奴が・・・あるかぁ!!」

ナツさんはすぐに立ち上がると左の拳に炎を纏い、互いを凍らせあっていたグレイさんとリオンさんへと飛ぶ。

「ナツ!!ダメだってば!!」

ルーシィさんの叫び声。しかしそれは間に合うこともなく、ナツさんの拳は放たれそして・・・

ドカーン

リュウゼツランド全体を爆発させた。

「だぁっははははは!!見たか!?俺の勝ちだ!!」

腰に手をやり勝ち誇るナツさん。
爆発に巻き込まれた俺たちは氷の中から解放されたが、あまりの爆発に全員動くことができない。
ウェンディは俺の上に乗っているしシェリアはレオンに抱きついてるし、ソフィアはなぜか水着が破れたルーシィさんの胸に顔を埋もれさせてて幸せそうな顔してるし・・・
もうめちゃくちゃじゃん・・・
















「初代、ジジィ、逃げねぇように引っ捕らえといた」
「「ごめんなさい・・・」」

ラクサスさんに持ち上げられているボロボロのナツさんとグレイさん。2人のせいでリュウゼツランドはボロボロになってしまい、当分使うことはできないだろう。

「修繕費の請求は妖精の尻尾(フェアリーテイル)でいいのかね?」

リュウゼツランドの係員にそう言われ、大泣きしている初代とマスター。ただでさえも借金がかさんでいる俺たちにさらなる借金が追加されることとなる。というかここの修繕費とか、大魔闘演舞で優勝して賞金手に入れても払えないような気がするんだが・・・

「やっぱりこうなるんだ・・・」
「薄々わかってはいましたけどね・・・」
「あぅ・・・」

破れた水着を押さえているルーシィさんと身体中ボロボロの俺とウェンディ。
こうして大会3日目の夜は過ぎていった。







 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか?
リュウゼツランドだけで3話も使うとか完全に予想していませんでした(笑)
次はようやく4日目です。
次回もよろしくお願いします。 
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