遊戯王GX 〜プロデュエリストの歩き方〜
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エピソード39 〜親善タッグデュエル〜
「はぁ、まったくなんでこうなったのか……」
叢雲 紫苑、否 望月 シオンはぼやいていた。
既に会場内の照明は暗転され、客席からは始まるのは今か今かと待ちきれない様子が伝わってくる。
そして暗闇の中、中央のデュエルフィールドに向かい、ヒールの音を鳴らしながら進む人影が極薄っすらと見て取れた。おそらく、自分の姉で今回司会進行役の翠だろう。
「……ようやくか」
もう間も無く始まると思い、気を引き締める。……のだが、人影が天を指差した瞬間
シオンは壮絶に嫌な予感に駆られた。
「ーー天が呼ぶッ!
地が呼ぶッ‼︎
人が呼ぶッ‼︎!
少し落ち着けと人は言うッ‼︎‼︎」
「その通りだよッ‼︎」
しかし、シオンのツッコミは同時に響いた観客どもの歓声によって掻き消されてしまう。
◆◇◆
今回の司会進行役を承った翠は煌々と照明が照らす中、ステージ中央で満足気に笑みを浮かべていた。勿論、弟が姉の珍行動に胃を痛めている事など知る由もない。
中央を取り囲むように配置された客席には、アカデミア生徒のみならず、一般人も混じり歓声を上げいる。
「生徒諸君報道関係者その他諸々の皆様方、此度はお集まり頂きありがとうございます!さて、挨拶は程々にして今回選ばれた名誉ある代表生徒の登場です‼︎」
マイク片手にステージ右手側を指し示すと、煙幕が噴射されそれに紛れる様にして此方へと向かってくる人が二人。
「おお、すっげー人だな〜!」
「ふん。余りキョロキョロして醜態を晒すなよ、十代」
「へへ、とか言ってお前も緊張してんだろ?万丈目」
「さん、をつけろ。それと俺がこれくらいで緊張する程柔な男だと?」
「まぁ〜、それもそうだな」
赤と白を基調したデュエル・アカデミアの制服に身を包んだ男子と黒一色の上着を羽織った男子が周りの視線などお構いなしに喋りながらステージまで歩いてくる。
「さて、まずは二人の紹介です!実力主義のノース校の中で、上級生を打ち倒し代表の座を勝ち取ったーー……ん?」
翠の紹介を制すと、ノース校が集まっているスペースへと向き、天井を指刺す。
「俺を言って見ろォ!」
「「イィチッ!」」
「「ジュウッ‼︎」」
「「ヒャクッ‼︎!」」
「「センッ‼︎‼︎」」
「万丈目ッ‼︎」
「「「サンダァァァァ‼︎‼︎‼︎」」」
ウォォォォォォ!と大気が震えんばかりの怒声が会場に響き渡る。
そんな見事な統制にポカーンと口を開けて見ている者もいれば、一緒に口上を叫んでいる者も居た。十代はどちらかと言うと、後者である。一方で、舞台袖で控えている紫苑は、軽い目眩を感じていた。翠は翠で、会場が盛り上がりを見せる様子をニコニコと微笑んでいたりする。
「アカデミア本校の代表は万丈目くん同様に実力によって代表の座を勝ち取った遊城 十代くん、です」
「アニキぃ〜!頑張るっすよ!」
紹介されるや否や客席から身を乗り出した翔が、声を張り上げ鼓舞する。それを、サムズアップをして応える。
「さてさて、この二人の勇者が力を合わせ挑むのはーー!」
騒がしかった会場は、新たなキャストの登場に静まり返る。
「……来たか」
万丈目がポツリと呟く。
皆が注目する先には、足元まである闇色のロングコートを羽織った銀糸の少年。容姿からは幼さを感じさせるが、客席を埋め尽くす程の観衆に注視され微塵も動じない様子から強者特有のオーラを感じさせる。二人は、それに気圧されたのか、ゴクリと息を飲むのが聞こえてくる。
「ーーーデュエリストの花形!プロデュエリストの中でもトップに位置する、望月 シオンだぁ‼︎」
翠が威勢良く紹介するものの誰一人として口を開こうとしない。強者が放つ威圧感に気圧され、一人として口を開こうとはしない。
「……さて」
ステージ中央まで来ると、やや強張った表情を浮かべる万丈目と嬉々とした笑みを浮かべる十代を見据え、黒塗りのデュエルディスクを構えると、
「……始めようか」
獰猛な笑みを浮かべる。
◆◇◆
「それでは始める前に不肖、帝 光が今回のデュエルのルール説明をさせて頂きます。
今回は、ニvs一の変則決闘。十代・万丈目ペアはライフ、フィールド、墓地及び除外されているカードは共有とさせて頂きます」
ちらっと二人の方へと視線を向ければ、異論はないと首を横にふる。
「そして、十代・万丈目ペアには、彼らのターンには、タッグフォースルールを適用させて頂きます」
即ち、自ターンを迎えるたびにプレイヤーを交代しなければならない。プレイヤーではないときに、カードを扱う事ができない反面、例えばハンデスコンボやデッキ破壊などを使われたとしても被害は片方には及ばない。
さらにニvs一という時点で、単純に手札の枚数のみならず、戦術の幅も無数に広がる。明らかにシオン側に不利な条件だが、むしろそれほどやらなければ勝てる見込みは少ない。
一先ず説明が済まされると、向かい合う三人は開始の宣言を今かと待ち構えている。
「それでは、親善タッグデュエル!スタートです!」
「「「決闘‼︎」」」
三人の声が重なり、決闘の火蓋が切って落とされた。
十代・万丈目:LP4000
望月 シオン:LP4000
「まずは、俺からだ!モンスターをセットし、カードを伏せてターンエンドだ」
十代と万丈目ペアの内、第一プレイヤーとなった十代は威勢良くデッキからドローする。そして、守備を固めてターンを終えると、頼んだぜ!と万丈目へとエールを送る。
「ふん、任せておけ」
「まぁ、その前に俺だけどな……」
かつては険悪なムードに合った万丈目と十代の関係が改善されている事に安堵すると、思考を目の前のデュエルへと切り替える。
「ドロー!モンスターをセット。カードを二枚伏せて、ターンエンドだ」
バトルロワイヤルルールというわけではないので、攻撃権がないわけではない。
シオンは様子を見のために、守備を固める。一方で、それをよしとしないのが万丈目だ。
「ふん、トップランカーと在ろう者が守備一択か!」
「ふーん。なら、攻めてきてもいいんだぞ?」
万丈目の挑発を受け流し、逆に煽る。挑発に乗らない忍耐力も、相手を煽る話術もシオンが数多のデュエルの中で培ってきたスキルであり、戦術である。
挑発に失敗したばかりか言い返された万丈目は小さく舌打ちをすると、十代とプレイヤーを交代し、ターンを始める。
「俺のターン、ドロー!
俺は裏守備モンスターを生贄にし、『アームド・ドラゴンLV5』を召喚する!来い、アームド・ドラゴンッ‼︎」
「「オォォォォォォ!」」
『アームド・ドラゴンLV5』
☆5 ATK2400
ノース校へと伝わる伝家の宝刀『アームド・ドラゴン』。早くも召喚され、主にノース校側から歓声が上がる。
「……へぇ、やっぱりデッキは変わってたか」
扱いの難しい『LV』モンスターの登場に感慨深げに呟く。
シオンは、入学初期の頃のーー『(自称)地獄』デッキというなんとも厨二っぽいデッキを使っていたーー万丈目が一癖も二癖もあるデッキを使用しているところから、彼の成長を感じた。
「今回は、ワンターンキル……なんて事はなさそうだな」
「言ってろ。俺は墓地に送られた『クリッター』の効果を発動する。その効果により、デッキから攻撃力1500以下のモンスター一体を手札へと加える。俺は『霊廟の守護者』を手札に加える」
シオンの言葉に一瞬眉を歪めるもすぐにデュエルに集中する。
互いが共有できるカードを用意しておくのは、タッグデュエルにおいて鉄板なのだがそれを忘れていない辺り、十代は過去に翔と組んだ時の経験が活きているのかもしれない。
「いくぞ、バトルだ!アームド・ドラゴンで裏守備モンスターを攻撃する!アームド・バスター‼︎」
アームド・ドラゴンが丸太の様に太い腕を振り下ろし、伏せられていた『レベル・スティーラー』を粉砕する。
「『アームド・ドラゴンLV5』はモンスターを戦闘破壊したターンの終わりにレベルアップする!来い、『アームド・ドラゴンLV7』!」
『アームド・ドラゴンLV7』
☆7 ATK2800
アームド・ドラゴンが勇ましい咆哮と共に急成長し、より戦闘に特化した姿へと成る。
早くの最上級モンスターの登場に会場が沸く。ペアの十代でさえ、無邪気にはしゃいでいる。
「どうだ。これが成長した俺の力だ!」
「あぁ、確かに成長したかもな……」
フィールドに唯一存在するアームド・ドラゴンを見上げそう言葉にする。
しかし、ニヤリと笑みを万丈目へと向けると
「だが、まだ甘い‼︎」
「なにっ⁉︎」
「『終焉の炎』を発動!効果により、黒炎トークン二体を特殊召喚する。
そして、俺のターン、ドロー‼︎永続魔法『冥界の宝札』発動!」
「……なに?」
「……っ‼︎」
万丈目は、『ナチュル』デッキではないシオンに訝しげな視線を送る。一方で、今回使われるデッキを一度見たことある十代は警戒心を強める。
「二体の黒焔トークンを生贄に現れよ!『堕天使アスモディウス』!」
『堕天使アスモディウス』
☆8 ATK3000
「っ!……いきなりの最上級モンスターか」
早々と万丈目はエースモンスター『アームド・ドラゴンLV7』の攻撃力を超えられ、頬を引き攣らせる。
「さぁ、バトルだ!アスモディウスでアームド・ドラゴンを攻撃!ヘル・パレードッ‼︎」
「くっ⁉︎」
アスモディウスから放たれる黒い光球がアームド・ドラゴンを狙い撃つ。
「万丈目っ!」
「さん、をつけろ!馬鹿たれ!リバースカード発動!『攻撃の無力化』!」
万丈目たちのフィールドに力場が発生し、アスモディウスの攻撃が文字通り無力化される。事なきを得た事で会場の彼方此方からホッと安堵の息が聞こえてくる。
「俺はこれでターンエンドだ」
シオン
LP4000
魔法・罠伏せ一枚
『冥界の宝札』
場
『堕天使アスモディウス』
シオンのフィールドには、強力無比のアスモディウスが存在するにも関わらず十代は楽しそうに笑みを浮かべる。
「交代だ、十代。頼んだぞ」
「あぁ、任せとけって!このターンで、あいつを倒してやるよ!」
威勢の良い発言をし、デッキからドローする。
幾ら強力な能力を有する融合モンスターを扱う十代でも、攻撃力3000の壁は大きい。果たしてどう攻略するのか、とシオンは楽しげな笑みを浮かべていた。
「『天使の施し』を発動だ。三枚ドローして、二枚を捨てる。
まずはこいつだ!来い、『E・HERO スパークマン』!」
『E・HERO スパークマン』
☆4 ATK1600
下級HEROの中でも攻撃力は高い方のスパークマンだが、アスモディウスには遠く及ばない。そして、召喚されたばかりのスパークマンに電子的な造りの銃が装備される。
「装備魔法『スパークガン』をスパークマンに装備する!そして、スパークガンの効果でアスモディウスを守備表示に変更するぜ!」
「なるほどな」
『堕天使アスモディウス』
DEF2500
表示形式を変えられ、守備表示にされたアスモディウスの守備力はアームド・ドラゴンの攻撃力より下。つまり、戦闘による破壊が可能となった。
確かにこれならば、アスモディウスを破壊する事が出来、さらにアスモディウスによる生み出されるトークンもアームド・ドラゴンの効果があれば駆逐可能だ。
十代の互いのモンスターをよく把握してこその戦術に彼の適応能力の高さを認めることになる。
「行け、十代!」
「おう!バトルだ!アームド・ドラゴンLV7でアスモディウスを攻撃しろ!ジェノサイド・カッター‼︎」
アームド・ドラゴンの放つ高速回転する刃に切り裂かれ、アスモディウスが破壊される。
「アスモディウスは破壊された時、『アスモ・トークン』と『ディウス・トークン』を特殊召喚する!」
『アスモ・トークン』
☆5 ATK1800
『ディウス・トークン』
☆3 DEF1200
アスモディウスが破壊されると共に効果破壊耐性を持つアスモ・トークンと戦闘破壊耐性を持ったディウス・トークンが生み出され、シオンのフィールドへと並ぶ。
「げっ、知ってたけどやっぱ厄介だよな、そいつら」
生み出された二体のトークンを見て、十代がゲンナリと表情を歪める。
「『アームド・ドラゴンLV7』の効果を発動するぜ!手札から『E・HERO ネクロダークマン』を捨て、ネクロダークマンの攻撃力以下の攻撃力を持つ相手モンスター全てを破壊する!」
再度アームド・ドラゴンから放たれたカッターがディウス・トークンを両断する。
「二度目の『スパークガン』の効果を使って、スパークマンを守備表示に変更する。そして、カードを一枚伏せて、エンドだ」
十代・万丈目
LP49000
魔法・罠伏せ二枚
『スパークガン』
場
『アームド・ドラゴンLV7』
『E・HERO スパークマン』
「俺のターン、ドローッ!お……?」
今引いたばかりのカードを確認し、シオンは若干戸惑いを見せる。
「……折角の機会だ。出し惜しみは無しで行くか」
「「……っ⁉︎」」
シオンはゾクリと背筋が震えるような笑みを浮かべる。
「レベル5の『アスモ・トークン』のレベルを一つ下げ、墓地から『レベル・スティーラー』を特殊召喚!」
アスモ・トークンのもつレベルを餌にし、小さなてんとう虫のようなモンスターがシオンのフィールドへと現れる。
「俺は二体のモンスターを生贄にし……、さぁ!絶望しろ!来い、天王星『The Despair Uranus』!」
「……ぷ、プラネットシリーズだと⁉︎」
いち早く反応した万丈目は驚嘆の声を上げる。
そのレアリティもさることながら、強力な効果故に知名度の高いプラネットシリーズの内、『天王星』を司る一体がフィールドへと降臨する。
「『The Despair Uranus』は表側表示で存在する魔法・罠カード一枚につき、自身の攻撃力を300ポイント上昇する!さらに、冥界の宝札の効果で二枚ドロー!
『The Despair Uranus』
☆8 ATK2900→3200
先のアスモディウスをも超える攻撃力と共にドロー加速。流石の十代たちもこれには目を見張らざるを得ない。
「バトル!『The Despair Uranus』、『アームド・ドラゴンLV7』を攻撃しろ!weil of despair !」
「っ!させるか!リバースカードオープン!『ヒーロー・バリア』‼︎」
ウラヌスから放たれた褐色の極光が、アームド・ドラゴンを狙う。しかし、これもまた防がれる。
「俺はこれでエンドだ」
シオン
LP4000
魔法・罠伏せ一枚枚
『冥界の宝札』
場
『The Despair Uranus』
シオンのフィールドには、攻撃力3000を超えたモンスターが一体。加えて、手札は五枚と余力は有り余っている。
(俺のターンで、あいつを倒せなければ次のターンが辛いぞ……)
もし、ウラヌスを倒せなければ『レベル・スティーラー』の効果で生贄となる素材を増やされ、また最上級モンスターを呼ばれる。
だからこそ、倒さねばならないのだが早々簡単にあの攻撃力を超えられるものではない。
(だが、倒す手段など……、いくらでもある‼︎)
先日の翠とのデュエルによりその事を学んだ万丈目は、絶対に倒すと念じデッキトップへと指をかけ、
「俺の……ターンッ、ドロー‼︎……来た‼︎」
望んだとおりの引きに思わず笑みが溢れる。
「いくぞ、シオン!俺は『アームド・ドラゴンLV7』を生贄にーー」
「……ん?」
「なっ‼︎まさか……!」
武装された巨体が白く発光する。そして、そのエフェクトを正体を知る一之瀬校長は客席から身を乗り出し、それを見つめる。
「ーー来い、『アームド・ドラゴンLV10』‼︎」
「……っ!」
筋肉は隆起し、身体を覆う鋼はより硬度を増し、主武装である刃は研ぎ澄まされている。
アームド・ドラゴンの最終形態にして、最強の姿ーーアームド・ドラゴンLV10を前にしてシオンは息を呑むのがわかる。
『アームド・ドラゴンLV10』
☆10 ATK3000
攻撃力こそ僅かにウラヌスに及ばないものの、アームドドラゴンの真価はレベルアップした事により、強化されたその破壊効果にある。
「手札一枚をコストに、『アームド・ドラゴンLV10』の効果発動!相手フィールド上に存在する表側モンスター全てを破壊する!喰らえ、ジェノサイド・カッターッ‼︎」
高速回転する刃がウラヌスを引き裂き、その巨体を崩壊させていく。早速攻略不可と思われていた弩級モンスターを破壊した事で、会場からオオォ‼︎と歓声が響く。一方で、シオンはウラヌスを破壊された事で悔しがるところか、笑みを浮かべ万丈目たちの出方を伺っていた。
「先制ダメージは此方がもらった!『アームド・ドラゴンLV10』でダイレクトアタック‼︎
アームド・ビッグ・パニッシャー!」
「させるかっ!リバースカードオープン!『メタル・リフレクト・スライム』‼︎」
『メタル・リフレクト・スライム』
☆10 DEF3000
アームド・ドラゴンを上回る程の鈍色の巨壁が万丈目の攻撃を阻む。
「『メタル・リフレクト・スライム』は発動後、俺のフィールドへと守備表示で特殊召喚される。そして、その守備力は3000。お前の攻撃は届かない!」
「くっ……!」
挑発するように放たれた言葉に、万丈目は悔しそうに表情を歪める。
先制ダメージ宣言をした手前、これは中々に恥ずかしい。
「惜しかったな〜」
「あぁ、だがウラヌスは倒した。次のターン、任したぞ」
「おっ⁉︎ま、万丈目……なんか変なもんでも食ったのか⁉︎」
少し前の万丈目には考えられない発言に十代がニヤニヤとしながらからかう。だが、その反面、意外と嬉しそうだ。
「さん、をつけろ!このデュエルは一筋縄じゃいかないんだ!勝つためならば、過去の因縁など捨ててやる!だが、十代!下手を打ったらしばくからな‼︎俺はこれでエンドだ!」
「へへ、なら!任された‼︎」
ビシッと暫定的ではあるもの、パートナーへと向けてサムズアップを決める十代。心なしか万丈目も笑っている様に見えるのは気のせいか。
「へぇ、だが十代。お前の前に俺のターンがある事を忘れるなよ?」
「っ!?」
一瞬だけだがシオンの放つプレッシャーが増大する。
そして、万丈目たちのフィールドにいるアームド・ドラゴンLV10を見据えると一人、口元を綻ばせる。
「お前たちがウラヌスを攻略したなら、俺はこのターンでアームド・ドラゴンを破壊する!俺のターン、ドロー。
『メタル・リフレクト・スライム』のレベルを一つ下げ、墓地から『レベル・スティーラー』を特殊召喚する。そして、二体を生贄にし……、圧倒せよ!『The big SATURN』‼︎
「「なっ⁉︎」」
万丈目と十代は両目を見開き、その巨体を見上げる。
土星の名を冠した銀色の装甲を持った巨人が雄々しくシオンのフィールドへと現れた。
『The big SATURN』
☆8 ATK2800
攻撃力は僅かに『アームド・ドラゴンLV10』に劣るものの、SATURNには手札一枚とライフコスト1000ポイントを払う事で、自身の攻撃力を1000アップさせ、1ターンのみだが大火力を持つ事が出来る。
「冥界の宝札の効果で二枚ドロー!そして、手札を一枚捨て、ライフコスト1000を支払い、SATURNの効果発動‼︎自身の攻撃力を1000ポイントアップさせる!その真価を目に焼き付けろ!SATURN FINAL‼︎」
シオン:4000→3000
『The big SATURN』
ATK2800→3800
体中から紫電を発するSATURNは、その姿を変貌させ、肥大化したプレッシャーに十代たちは思わず後退る。
「バトルだ!SATURN FINALでアームド・ドラゴンを攻撃!end of COSMOS!」
「ぐぁぁぁぁぁぁぁ」
十代・万丈目:4000→3200
SATURNの超重力の一撃はアームド・ドラゴンを粉砕するばかりか二人へと少なくない衝撃をもたらす。
ライフ差は、1000ポイントもライフを支払った為シオンのが少ないが、圧倒的なパワーの前に僅かなライフ差など無に等しい。さらに『冥界の宝札』によるドロー加速により、シオンの手札は潤沢。一方で、十代たちはシオンのモンスターを処理するのに多くの手札を消費する。
どちらが優勢かは誰が見ても明らかだ。
「さて、アームド・ドラゴンは潰した。次はどう来る?」
「ふん、俺のモンスターが倒されても十代がそいつをやる。そして、十代のモンスターがやられたのならば、俺がまた倒す!それがタッグデュエルというものだろう」
シオンは挑発的な笑みを浮かべるとそう万丈目へと問いかけると、少し前の万丈目からは信じられない答えが飛び出し、シオンは少し驚くもだが満足のいく解答に納得する。
「なら、超えてみろ!俺はカードを二枚伏せターンを終える。それと同時にSTURNの効果が終了し、攻撃力は元へと戻る」
To be cotinued……
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