ダンジョンに転生者が来るのは間違っているだろうか
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五十九階層攻略前
前書き
お久しぶりです! 約二ヶ月ぶりの投稿となります。
色々と事情がありまして、今まで行方不明でごめんなさい。
詳しくはあとがきで! 短いですが、どうぞ!
あれからの話をするとしよう。
先行したアイズ達がダンジョンに入ってからのことなんだが、俺たち二班が出発を待っているとダンジョンからアイズとリヴェリアが現れたのだ。しかも、身体中が傷つき、満身困憊の気絶したクラネル君と、小人族の少女を背負って。
突然のことに俺たちをも焦ったのだが、質問もできぬ雰囲気であったためにそのまま摩天楼施設へと駆け込んでいくのを見送ったのだった。
何があってこうなっているのかは全くわからないのだが、アイズ達がダンジョンに潜ったところで、クラネル君に何かあったのは明白だ。恐らくだが、あの小人族の少女はクラネル君のパーティ仲間、といったところであろう。
「あの二人、どうしたんや?」
完全に二人の姿が見えなくなったところで、周りがざわつき始めた。
まあ、当然のことか。ファミリアの副団長と、あの【剣姫】が見知らぬファミリアの者を運んでいたのだから。
「さあな。俺にも分からん。ただ、二人とも無事だといいんだが……」
「お? 知り合いなんか?」
二人とも、というのが、アイズ達が背負っていた人物だと察したのだろう。士が興味深げに聞いてくる。
「ちょっとな。ただ、あの小人族の女の子は知らんけど」
「ほぉ、心配やったら様子でも見てきたらどうや?」
「……いや、大丈夫だろう。俺が心配してもしゃあねえよ」
そんなもんかいな、と呆れたような声で肩をすくめる士。
だが、実際のところ、心配はないはずだ。原作を殆ど知らずとも、あのクラネル君が主人公だということは分かっているのだから。
◆
◆
野営地の準備を完了させた【ロキ・ファミリア】は食事に移った。
今回の遠征において、俺は【バルドル・ファミリア】からのたった一人の同行者だ。
そのため、野営などの準備に関しては【ロキ・ファミリア】に一任するしかなかったのだが、その事についてはフィンさんから任せてくれと言われているため、安心している。
俺のために一人用のテントを用意していてくれたことについてはかなり驚いたが……
営火を囲むようにして、キャンプの中心で大きな輪になる団員達に、ごちそうが振舞われる。
食事の内容は肉果実を始めとした迷宮産の果実と干し肉、大鍋で作られたスープだ。
ここ、五十階層まで突破した団員達への労いと士気の維持を兼ねたものなのだろう。
ただ、うちの万能執事の作る日々の食事で、すっかりと舌が肥えてしまった俺には少しばかり満足できなかったが。
「なんや。あんまり楽しめとらんのか?」
「士か。いや、そういうわけでもないけどよ。こう、いつもパディさんの飯食ってた俺からするとちょっとばかりな」
「ああ、あの執事さんな。確か聞いた話、ダンジョン潜っとるときでもかなりのもん作るんやろ?」
「おう。そりゃもうすげえからな、あの人」
流石えちのライフラインでえる。正直、あの人がいなくなるだけで【バルドル・ファミリア】が壊滅するんじゃないのかと思うくらいに。
……いや、全滅かな。主に、リリアさんの料理によって
「んなことより、お前は他の奴等と話さねえのか?」
「なんや自分。せっかく、一人寂しそうに食うとるお得意さんを心配して来てやったっちゅーのに」
「なるほど、ボッチなんですね分かります」
「……なんやその言葉はよう分からんけど、バカにされたっちゅーのは何となく分かったでぇ」
どっこいしょ、と俺と同い年の二十歳だというのに、おっさんくさい言葉とともに俺の隣に腰を下ろす士。
うまいわーと食事を進めていく。
「それで? なんか俺に用でもあったんだろ?」
「あー、まあそうなんやけどな。大したことやない。解散したあと、こっちから武器の整備に行くからって伝えたかっただけや」
「……夜這い?」
「シバくぞワレェ」
ふざけた冗談だったのだが、割りとマジで殺意のこもった視線を向けられた。
装着しているバンダナと火の光によって目の部分が影になっているのでなおさら怖い。
冗談冗談、と苦笑いで士を落ち着かせる。
「深層入ってからは【アレルヤ改】も使ってたやろ? その整備もせなあかんやろ」
「悪いな。頼むぜ」
「任しとき。……あとは、あの三本も形だけでもな」
視線だけを動かして誰もこちらの話を聞いていないのを確認した士がボソリと小声で呟いた。
あの三本、とはやはり【物干し竿】、【破魔の紅薔薇】、【必滅の黄薔薇】のことだろう。
「あんな異常なもん、うちの団長が知ったら大変なことになるさかいな」
「……つくづく心配かけて悪いな」
「まあな。なんか団長のこと裏切ってるような気もするわ」
「……すまん」
「ええ。謝るなや。それに、こっちは感謝してんねん」
プハァッ! とスープを飲み干した士は
今度は干し肉にかじりつき続ける。
「まだLv1やった頃、声かけてくれたんはお前や。ここまで来れたんもお前のおかげや思うとる。ワイには、才能なんてないのに、それでも頼ってくれるお前には返しきれん恩もあるさかいな」
「おいおい、急に自虐なんか始めんなよ。それに、才能がないなんて思ったことは一度もねえぞ?」
「第一級特殊武装」
「…………」
「それがまだ作れねぇなら、まだまだってことやで」
一握りの鍛冶師が製作できる特殊な効果のついた武器。
アイズが使用する【デスペレート】の不壊属性などもその一例だ。
それが、士はまだ作れないのだ。
「……すまんな。ほんまは、お前の【アレルヤ改】も不壊属性にしたかったんやけどな。まだ、その域には達せられずにおるんや」
「……お前の作る武器は最高の一振りだ。卑下してんじゃねえよ。らしくねえ」
「それはわかっとる。ただなぁ、今回の遠征でうちの団長自ら不壊属性の武器を五つも作りおったんや。自信もなくすわ。ほんまにワイがお前の専属でええんかってな」
火が辺りを照らすなか、士は自分の手を見て握り締めた。
不安、なのだろう。
片やLv6の第一級冒険者。片やLv3の鍛冶師。それも、まだ特殊武装の一つも作ったことがない。
文字だけ見れば、つりあっていないようにも見える。
実際、俺くらいのところまでいったなら、それこそ、士のファミリアの団長である【単眼の巨師】、椿・コルブランドが専属となってもおかしくはない。
けど、だ。
「もう一度言っとくぞ。お前の武器は最高の一振りだ。卑下してんじゃねえよ」
「…………」
「お前の気持ちも分からんわけじゃねえ。ただ、お前は、俺がまだ駆け出しだった頃にこいつなら! と思って契約結んだ鍛冶師だ。それを曲げるつもりはねえよ」
「無理しとるんちゃうか?」
「アホたれ。現にお前はLv3まで上がってきて、腕も上げてる。それにまだ俺達二〇だぜ? まだまだ先はある。お前ならそう遠くないうちに作れるだろうさ」
鍛冶のこちに関して、俺は素人と言ってもいい。
だけど、その一振りを使う担い手として、その武器がどれ程のものかと感じとることはできる。
こいつが作り直してくれた【アレルヤ改】も一級品といっても差し支えはない。
「……おおきにな」
「なんの。お前はそのハゲ頭で周りを照らしとけばいいんだよ」
「最後の最後で、何でそれをいうかなぁ!?」
ハゲやない、スキンヘッドや! といつものように返す士。
そんな様子に、思わず笑う。士も、笑う。
そんな自虐してる暇があるなら、もっと腕を磨けってな。
◆
◆
その後、食事が終わると、最後の打ち合わせが始まった。
取り仕切るのはもちろん【ロキ・ファミリア】の団長であるフィンさんだ。
ここ、五十階層から下の五十一階層からは選抜した一隊で進むことになる。残りはキャンプの防衛だ。
選ばれたのはフィンさん、リヴェリアさん、ガレスさん、ヒリュテ姉妹、ローガ、アイズ。サポーターとしてLv4の冒険者が四名と、レフィーヤ。
武器の整備士として椿・コルブランド。
そして最後に、俺だ。
俺の紹介が入ったときに、少々場がざわついたが、そこは流石【勇者】。うまいこと説明してくれていた。
立場としては協力者といったところか。何やら、【ロキ・ファミリア】幹部、並びにアイズ達や椿・コルブランドにまで興味深そうな目で見られたが。
先ほど士が話していた不壊属性の武器。確か、ローランシリーズだっけか? それを【ロキ・ファミリア】の者に渡していく椿・コルブランド。
ちなみにだが、俺の武器が不壊属性だということはフィンさんには伝えている。
他派閥に自分の情報を教えることは少し躊躇われたが、今回は仕方ないと諦めた。
どうやら深層には、武器を溶かす消化液を吐くモンスターがいるのだとか。
それが出てきたときは気を付けないとな……
なんせ、俺達【バルドル・ファミリア】の到達階層はまだ五十までいってないのだ。当然、ここから先は未知の領域となっている。
「では、明日に備え解散だ。見張りは四時間交替で行うように」
最後にそう締められると、皆指示に従って周囲にばらけはじめた。
割り当てられた天幕に戻る者、見張りの者の様子を見に行く者、上級鍛冶師達の元まで赴き相談する者、様々だ。
「……さて、どうするか」
これといってやることがない。
流石に今からもう寝るのは早すぎるし、かといって友人がいるわけでもないため話せない。
別に士が相手でもいいのだが、四六時中一緒だと変な噂がたちかねん。腐フフな方々がいたのなら、それこそ一貫の終わり。地上に戻ってからどんな風に広まるか。
アイズもアイズで、何やら椿・コルブランドと話している。
ローガは……別にこったから話しかけるようなもんでもないしな。
「……お、そうだ。明日の階層がどんなとこか聞いとかないとな」
何事も情報収集は大事だ。聞いておいて損はないはず。
多分リヴェリアさんに聞けば、大丈夫だろうと探してみれば翡翠色の髪が視界の端で揺れていた。
……翡翠
ふと、大切な人に送ったチョーカーを思い出す。
「リューさん、元気にしてるかなぁ……」
出発したのは六日前。だがすでに、補充したはずのリューさん成分が底につきつつある。
早いとこ切り上げて帰るか
そのためになら、俺は手段を厭わない。何でもしよう。
許可は降りているのだから
うしっ、と気合いを入れ直した俺はリヴェリアさんに五十一階層以降のことを聞き、その後、お一人様用の テントで士に【アレルヤ改】を研いでもらって、一日を終えるのだった。
はずなんだけどなぁ
「ナンバ・式とやらのテントはここか?」
「……は?」
ちょうどもう寝るかと準備を始めていたときだった。
なんか来た。詳しくいうと、【単眼の巨師】が来た。
……え? なにそれ聞いてない
「……なんのようだ?」
「そんなに睨むな。明日、共に冒険する仲間であろう?」
俺が許したわけでもないのに、テントに入ってくる椿・コルブランド。
よいしょ、と腰を下ろしたコルブランドはそのままほうほうとテントの中を見回している。
……ほんと、何しに来たんだこの人
「ふむ、何もないな」
「当たり前だ。それと、もう一度聞く。何をしに来た、【単眼の巨師】」
警戒するように見ると、まあ落ち着けとばかりに手で制する。
椿・コルブランド。鍛冶の大派閥、【ヘファイストス・ファミリア】の団長。そして、オラリオ最高と言われる【最上級鍛冶師】の称号を持ち、鍛冶師でありながら、Lv5の第一級冒険者でもある女だ。
大陸のドワーフと極東のヒューマンとのハーフであるらしいが、見た目は褐色肌に黒髪のなかなかグラマスな女性だ。おっと、今煩悩が
身長も170程で殆ど俺と変わらない。あれだ、姉御? といわれるのが似合いそうだな。多分
で、そんなのが何故に俺のところを訪ねてきたのか、と。
「それと、その二つ名で呼ばないでくれ。怪物のようで好かん」
「おっと、そりゃ悪いな。んじゃコルブランド、何のようだ?」
できれば、今すぐにでも帰ってくださいという念も込めて
だが、そんな思いは届かなかったようだ。
「待て、そう急かすな。聞けばお主、不壊属性の武器を持っておるとか?」
「だからどうした」
「頼むっ! 手前に一度見せてくれっ!」
「だが断る」
「即答っ!?」
あからさまに落ち込んだ様子を見せるコルブランド。
はて、こいつはいったいどこからそんな情報を得たのやら
「で? 何でそんな話になった?」
「いや、お主の分の武器を作っていなかったと思ったが、フィンに聞けばもう持っていると聞いたのでな。ならばと思いこうして頼みに来たのだ」
「フィンさんが、ねぇ……」
「うむ。お主の専属のガドウに聞いても教えてくれん。なら、手前自ら赴くしかないだろう」
「そもそも、俺のを見に来る必要性が感じられないんだけど?」
「武器を作るものとして、当然のことだ」
あかん、話にならん。
「ともかく、他派閥にそう易々と見せる気はない」
「え~、こんなに頼んでもか?」
「ない」
くそうっ、士とのあの会話はフラグだったのか! 恨むぜハゲ! いい話したと思ったらこれかよ!!
その後、諦めの悪いコルブランドを追い出すのに、三十分要したのだった
後書き
……なんか、最後の椿んとこ無理矢理だったかな?
どうも、ニシュラ和尚です。前書きにも書きましたが、一応謝罪を。すいません
で、事情なのですが、主な要因としては、これ、一ページかくのにかなりの時間を要することですね。なろうの方でも書いてるんですが、流石に二つも書く暇がなく。どっちかを選んだ末に、なろうの方を選んで今までこうなってました。
ニシュラも受験生で、裂ける時間は少ないのです。おまけに、ダンまちは友人に原作の資料を持ってきてもらわなければ書けないので色々と問題がありますです。
とは言え、このままかけないのもあれなんで、書けるときには書きたいなと。
宝具で無双がしたいのです。
まあそんなことで、これからの更新はかなり遅くなります。文字数も、今までよりは短くなるかと。
あと、来週の土曜の八時にもう一話分予約投稿しています。
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