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父との絆

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第五章

「一日ウイスキー一本、しかも甘いものをどんどん食べてたら」
「こうなるか」
「そうよ、そうなるからね」
「だからか」
「今こうして入院してよ」
「これからもか」
「節制しないとね」
 それこそというのだ。
「本当にもっと悪くなるわよ」
「難儀な話だな」
「けれどそうしないとね」
「長生き出来ないか」
「長生きしたいでしょ」
「それなりにな」
 久作にしてもというのだ。
「だからか」
「養生しなさい、退院してからも」
 優子は久作に妻として告げた、何はともあれ彼は入院して今回の深海への潜水艇を使っての現地調査は参加出来なくなった。
 そしてだった、啓介は。
 その父のボトルシップを持ってしかも厳重に割れない様にしてからだった。潜水艇に入った。そしてだった。 
 そのダンボールやスポンジで包んだボトルシップを手に取ってだ、こう言った。
「親父、行くぜ」
「あっ、お父さん入院されてますから」
「だからですね」
「今回は参加出来ないので」
「だからですね」
「はい、それでなんです」
 だからとだ、啓介は共に潜る他の学者達に答えた。
「その親父の代わりにです」
「それ持って行くんですね」
「瓶を」
「瓶詰めの船です」
 それが何かもだ、啓介は彼等に話した。
「親父が子供の頃作ってから宝物にしている」
「それをですね」
「一緒に深海に持って行って」
「調査されますね」
「そうします、全く酒に甘いものばかり飲み食いしてたから」
 ここでだ、啓介は父の不摂生に苦笑いで言った。
「入院して来られなくなりましたけれど」
「それでもですね」
「息子さんである貴方がこうして行かれて」
「その船も持って行かれる」
「親御さんの分身みたいなその船を」
「そうされるんですね」
「そうします、それじゃあ」
 是非にと行ってだ、そしてだった。
 彼は深海に潜りその中にいる不思議な様々な生きもの達をその目で見た、その調査が終わってからだった。 
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