真田十勇士
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巻ノ十四 大坂その五
「その鍋を食しましょうぞ」
「待て、御主坊主であろう」
その清海にだ、海野が問うた。
「それで魚や貝を食っていいのか」
「よいわ、わしは破門されておるからな」
笑って返す清海だった。
「別にな」
「そういう問題ではなかろう」
「いやいや、出されたものは食する」
「だからよいのか」
「私も口にしますが」
伊佐も言って来た。
「出されたものでしたら」
「御主もか」
「はい、前から生臭ものも食していましたが」
「それはそうじゃが」
「頂いたものは残さず食する」
「それは仏門の教えか」
「本来の。ただ兄上は暴飲暴食に過ぎますが」
このことは伊佐も言う。
「しかしです」
「出してもらったならか」
「そのご好意を無駄にしませぬ」
こう言うのだった。
「残しませぬ」
「まあ清海が言うのならともかくな」
「そうじゃな」
海野に続いて穴山も言う。
「よいか」
「そうじゃな」
「わしが言ったら納得出来ぬのか」
「御主の普段の行いを見るとな」
「とてもな」
海野と穴山は清海にはこう言う。
「そうは思えぬ」
「何しろ破門されておるではないか」
「それはそうじゃが修行は続けておるぞ」
自分ではこう言う。
「しかとな」
「どういった修行じゃ」
「御主の修行とは。大体想像がつくが」
「この金棒の使い方にじゃ」
それにとだ、清海は海野と穴山に話した。
「術にな。読経もしておるぞ」
「では法力もか」
「しかとあるというのか」
「そうじゃ、わしとて修行は忘れてはおらぬ」
こう言うのだった。
「御主達も見ておるではないか」
「だから想像がついておると言ったのじゃ」
穴山はこのことを清海に告げた。
「見ておっただけにな」
「ではわかっておるではないか」
「しかし御主は確かに読経等もしておるが」
僧侶としての修行は確かにしている、しかしというのだ。
「それでもじゃ」
「金棒の修行ばかりというのか」
「力をつける為のものが殆どであろう」
「それが楽しいからのう」
「楽しくてもそれが殆どではじゃ」
それこそというのだ。
「伊佐とは全く違うぞ」
「坊主の修行はしておらぬというのか」
「全く、御主はまことに花和尚じゃな」
海野はこの場でも水滸伝のこの豪傑と清海を例えた。
「そのままじゃ」
「まことに魯智深じゃ」
由利も言う。
「御主はな」
「魯智深と言われて悪い気はせぬがな」
「しかし御主坊主ならもっと仏門の修行もせよ」
「だからしておるぞ」
「もっとすべきというのじゃ」
由利もこう清海に言うが話は堂々巡りだった、猿飛もやれやれといった顔でこんなことを言う。
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