真田十勇士
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巻ノ十四 大坂その二
「その勢いで山陽と山陰、四国も抑えられるだろうが」
「九州や東国は、ですか」
「そちらは」
「うむ、そこはどうなるかわからぬ」
こう家臣達に話すのだった。
「まだな」
「左様ですか」
「では九州や東国は落ち着いてからですか」
「羽柴殿がご自身の領地にされた場所が」
「そこからじゃな、おそらくまずは東海や甲信を収め」
そうしてというのだ。
「九州、関東そこから奥羽じゃ」
「そう攻めていかれますか」
「羽柴殿は」
「そうなるであろう、一番の壁は柴田殿でなく」
これから戦をする彼よりもというのだ。
「駿河の徳川殿じゃ」
「あの方ですか」
「おそらく我等と戦になる」
「あの方が羽柴殿にとっての壁ですか」
「うむ、どうやら徳川殿は天下は望んではおらぬぬが」
今の家康もだ、幸村は確かに見ていた。それでそれを今家臣達に行ったのだ。
「しかしじゃ」
「徳川殿といえば戦上手」
猿飛がここで家康について彼が聞いていることを述べた。
「家臣もよくまとまり政もお見事で民からも慕われているとか」
「まことによく出来た方じゃ」
「そうした方だからですか」
「羽柴殿も戦になればな」
「苦労されますか」
「天下で数少ない羽柴殿と互角に渡り合える方じゃ」
それが徳川家康という男だというのだ。
「だからじゃ」
「徳川殿が、ですか」
「羽柴殿の一番の壁になりますか」
「両家が戦になるかはわからぬが」
それでもというのだ。
「戦になればな」
「その時は、ですか」
「徳川殿は羽柴殿に引けを取られぬ」
「そうなりますか」
「そうなるであろう、しかし天下はおそらくな」
その普請をしている最中の城を見ての言葉だ。
「羽柴殿のものじゃ」
「そしてこの大坂の町も」
「さらに賑わうと」
「今以上に」
「そうなる、そしてあの城は桁外れの城になるぞ」
それこそといった言葉だった。
「特に天守はな」
「果たしてどんな天守になるのか」
「見るのが楽しみですな」
「次に大坂に来た時に」
「それを見られるでしょうか」
「うむ、見たい」
是非にというのだ。そしてだった。
一行は大坂の中を巡りその中を見て回った。その中の様々な店も見て楽しんでいた。時にはものを買って食べた。
その中でだ、ふとだった。
一行の前に一人の飄々とした小柄な老人が出て来た、服は茶人のものだ。
その老人がだ、自分から幸村に言って来た。
「この町を楽しんでおられますか」
「はい、存分に」
幸村は老人の問いに微笑んで答えた。
「凄い町になりますな」
「そうですな、かつては本願寺の門前町でしたが」
この大坂は、というのだ。老人も。
「その頃は石山といいましたが」
「その頃はここまではですな」
「栄えていませんでした」
「そうですな」
「はい、しかし羽柴殿がここに城を築かれますと」
その途端にというのだ。
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