サリー
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第四章
「いや、これは」
「これはいいな」
「目の保養だな」
「これはいいな」
「色合いが奇麗だな」
「サリーの色っていいんだよな」
「最近めっきり減ったけれどな」
サリー、そしてサリーを着ている女性もというのだ。
「こうして見るといいものだな」
「ああ、やっぱり違うな」
「見栄えがいいな」
「本当にな」
こう話すのだった、そのサリーを見て。
学校の伝統衣装を着ての登下校、そして授業の風景は話題になった、それもインド中で。そうしてサリーも見直される様になった。
その状況を見てだ、今はターバンを巻いているグプタがアミータラーに言った。
「いや、伝統衣装もです」
「いいものですね」
「そのことに気付いたといいますか」
「わかりましたね」
「はい」
笑顔でだ、彼はサリー姿のアミータラーに言った。
「このことが」
「そうですね、私もです」
「先生もですか」
「サリーを着ていますと」
「何かが違いますね」
「服を着る時からです」
サリーを腰に巻いていくだ、その時からというのだ。
「違います」
「気が引き締まりますか」
「インドを感じます」
彼等の国、まさにその国をというのだ。
「深く、ですから」
「いいのですね」
「本当にです」
アミータラーはグプタに微笑んで言った。
「是非孫にも伝えたいですね」
「あっ、先生のお子さんは」
「三人共男の子ですので」
アミータラーはこのことは少し残念そうに答えた。
「ですから」
「サリーはですね」
「着られないので」
「だからお孫さんにですね」
「女の子が出来ましたら」
孫に、というのだ。
「その時は教えます」
「そうされますか」
「そう考えています、そしてサリーをです」
「伝えていきますか」
「後に」
こうグプタに答えるのだった、アミータラーはサリーをその割腹のある身体に着ていた。そこにはインドの香りも漂っていた。
サリー 完
2015・9・26
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