リリカルな世界に『パッチ』を突っ込んでみた
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第十九話
前書き
短いです
心臓が、止まった。
「あ・・・・・・・・・。」
自らの罪の意識と戦いながら、必死に葵の治療を続けていたユーノが、絶望に満ちた声を漏らした。それと同時に、葵を抱き続けていたなのはにも、葵の命が消滅したことが理解できた。
―――出来て、しまった。
「あ、あ・・・ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!?」
喉が張り裂けそうになるくらい叫んだ。何故?どうしてこうなったのか、と。
「わ、私のせいなの・・・?間に合わなかったから・・・。ううん、葵君に甘えすぎてたから・・・!」
あまりの強さに、バリアジャケットを着ていないことなど忘れていたのだ。大した問題じゃないと思っていた。今日だって、葵が先に向かったのならば大丈夫だと、無意識に思っていたんじゃないのだろうか?自分が呼ばれたのはあくまで結界を展開するためで、暴走体は葵が苦もなく倒せると思い込んでいた。
(葵君が死んじゃったのは・・・私のせいだ・・・)
瞳に力が無くなったなのはの体から、葵の体が地面にずり落ちる。既に支える気力もない。目の前で大切な親友が死んだのだ。無理もないだろう。何度も言うが、彼女はまだ小学三年生なのである。
ユーノも、葵の死体となのはを何度も見て、力なく俯いている。
「何で・・・どうしてこんな・・・。」
ボロボロと涙を零しながら呟くなのは。しかし、現実は容赦がなかった。
『マスター!!!』
それに気がついたのは、レイジング・ハートであった。
何かが高速で飛んできた。レイジング・ハートは、『プロテクション』によってなのはに衝突するのを防いだが・・・
「ガッ・・・ハッ・・・!」
「女の子・・・!?」
バン!!!と激しい音を立てて障壁にぶつかったのは、フェイトであった。その体には、小さな触手が無数に巻きついており、飛んできた、というよりは、振り回されて叩きつけられたのが分かる。
「に・・・げて・・・。」
フェイトの言葉は既に遅かった。この暴走体は、触手を通じて周囲の状況を把握することができる。まるで昆虫の触覚のように。なのはは結界に侵入してから即座に葵の救助に向かったため暴走体に気づかれていなかったのだが、フェイトに巻きついていた触手により、なのはとユーノの存在がバレてしまったのである。
ピシピシと音が鳴る。
「え・・・?」
なのはは、目の前の光景を現実だと認識出来なかった。何故なら、地面から無数の・・・・・・それこそ、数万、数十万本はあるかもしれない量の、途方もない数の触手が出現したからである。
一本一本は針のように細いものの、これだけ集まると視界は全て触手で埋まってしまう。それはまるで鬱蒼と茂った森のようだ。
「い・・・いや・・・!いやああああああああああああああああ!!?」
その叫びを合図にしたかのように触手がなのはとユーノに群がる。必死になって障壁を展開するも、この数の前には無意味だった。数秒もしないうちに、彼女たちの姿は触手に埋もれて見えなくなってしまったのである。
―――地面に横たわっていたままの、葵の死体と一緒に。
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