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ソードアート・オンライン~連刃と白き獣使い~

作者:村雲恭夜
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第七話 風の剣士と黒の剣士

「終わりだ……!」
片手剣四連続ソードスキル«バーチカル・スクエア»を放ち、敵«デモニッシュ・サーバント»を攻撃する。
骨だけしかないこのモンスターは、筋力値が異常に高いモンスターなのだが、骨だけしかないから防御はうっすい。
バーチカル・スクエアを食らったデモニッシュ・サーバントは瞬く間にポリゴンとなって消え去った。
「こんで終わり?」
「そうみたい」
周りを見てクレイが言う。
現在地は七十四層迷宮区の最上部近く、左右に円柱が立ち並んだ長い回廊の中間地点。
運悪くデモニッシュ・サーバントの小隊に見つかってしまった俺達は、やむ無くここで戦闘を行っていた。
「本当に面倒臭いモンスター共だ……消すか?」
「サブマスターが言うと洒落んなんねぇんでやめてくだせぇ」
メンバーの一人が言うと、他のメンバーも口々に言う。俺って気軽に権限使うとか思われてるのか?
「……あのな、お前ら俺を何だと思ってるんだ?」
『そりゃ、サブマスターにして権限使うのもやむ無しと考えてる人』
俺は無言で全員に拳を叩き付けた。
『いってぇえええええ!』
「無闇に使うか阿呆!常識を考えろ常識を!」
「常識を考えろって……一番常識を考えない人に言われてもねぇ……」
クレイに言われたくない事を言われてそちらを向くが、顔をそらす。人望無いな俺。
「……進むぞ」
『了解』
それぞれが隊列を組み直すと、俺はその後ろに付いて辺りの警戒をしながら進んだ。



その後、四回のモンスター遭遇戦があったものの、全てノーダメージで来ている。
と、言うのもミドルランクのメンバーが統率を持って戦っているため、ダメージが入らないのである。ラットの育て方が良いらしい。
俺は不意にマップを見ると、空白部分があと少しとなっていた。
「オブジェクトが重くなってきやしたね」
「そうだな。そろそろボス部屋だ、気ぃ抜くなよ」
『了解』
皆が警戒しながら前に進むと、回廊の突き当たりに、灰青色の巨大な二枚扉が待ち受けていた。扉には、怪物のレリーフが刻まれている。
「いつ見てもボス部屋の扉はデケェな」
「そうだねぇ……」
感慨深く扉を見ていると、メンバーの一人が言う。
「取り合えずここまで来たら偵察も良いんじゃ無いですか?」
「そだな。ボスは守護する部屋から出ねぇ様にしてるし、ドア開けて姿拝むだけなら平気だろ」
「……本当に?」
クレイが不安そうに言う。
「平気だって。取り合えず行くか」
クレイや他のメンバー(ボスを拝もうとする馬鹿を除き)を下がらせると、扉を押す。
扉は滑らかに動き、やがて音をたてて停止する。
横に飾られている松明に火が着き、徐々に奥に向けて点火されていく。
最後に一際でかい炎が立ち上ぼり、部屋全体を明るくさせる。
「おー、ここのボスはアイツかー」
楽観的に言うと、後ろを向いて言う。
「総員ー……全力で走れ」
『は?』
俺の指示の意味が分からないと言うように疑問符を浮かべるメンバー。俺はすぐに炎の向こう側を見ると、それは現れた。
見上げるようなその身体は、全身縄の如く盛り上がった筋肉に包まれており、肌は周囲の青い炎に負けないほど深い青で染められており、分厚い胸板の上に乗った頭は山羊そのもの。
頭からは捻れた角が後方にそそり立ち、眼は青く燃えているかのように輝く。下半身は濃紺の長い毛に包まれており、動物のようになっている。簡単に言うと、悪魔その物の姿である。
名前を見なくても、俺はコイツの名を知っている。
七十四層を預かる階層主«ザ・グリームアイズ»。
青い悪魔は俺達を視認すると、何処からか取り出した大剣をかざしてーーーーー地響きを立てつつ猛烈なスピードで突進を開始した。
『う、うわああああああ!!!!!』
俺以下メンバーは全員敏捷値最大の逃走を開始し、瞬く間に見えなくなった。
「……」
俺はグリームアイズを見て、何故か謝らないと行けないような気がして一礼すると、来た道を走っていった。



«追跡»を使って追い掛けた俺は、迷宮区に設けられている安全エリアに入る。メンバー全員は纏めて壁際にへたりこんでいた。
「情けねぇなお前ら」
言うと、クレイが叫ぶ。
「あんなの聞いてないよ!?」
多分、俺以外全員の総意だろう。
「いや当たり前だろ。俺も手伝いしただけだし、実際ちゃんとボスは実装通りになってるかなんて知る訳ねぇだろ」
言うと、全員が首をもたげた。相変わらずの面倒臭いメンバーだ。
「暫く休憩後、本部戻るぞ。その後、攻略組に要請してボス攻略作戦決行するから」
『了解ー』
すると、ストレージから支給されている昼飯を取り出して、食べ始める。俺はその間に安全エリアから出て、周囲の索敵をする。
(此方来る途中誰も来なかったけど……あのネタはガゼってことか?)
解放軍前線進出の情報を気にしていた俺なので、ガゼだったなら何よりである。すると、索敵に二人のプレイヤーが引っ掛かる。と同時、風と共に安全エリアに二人が入ってきた。
「誰だ……?」
エリアに入ると、KoBの«閃光»アスナとソロの«黒の剣士»キリトが座り込んでいた。
「お、アスナにキリトか」
「お久しぶり、クウト」
キリトは手をあげて言うと、息を切らして言う。
「あー、本当になんだよ。あのボスは」
「もしかして、グリームアイズん所行ったのか?」
「ええ。今日私達暫くコンビ組むのでよろしく」
すると、一部のメンバーがキリトを睨む。いや、正確には俺と同じような慈愛の睨みだろうか。……分かんないけど。
「……まぁ二人が来たなら良いか。俺は寝る」
俺は言うと、地面にねっころがる。すると、クレイが言う。
「地面に頭つけてたら痛いでしょ。ほら、膝枕してあげるから使って」
「ん」
俺はクレイの膝枕に頭を乗せると睡魔が襲ってきて寝に落ちた。 
 

 
後書き
クウト「……何か知らないけど、クレイの膝枕って睡魔が発生しやすいんだよなぁ……」
クレイ「えー、気のせいだよー」
作者「と言うか本編主人公&ヒロイン後半しか出てないなー」
二人「それは死んでもいいと思う」
作者「身も蓋も無いこと言うな!」
クウト「次回、青き悪魔、暴風の風。暴風戦王の力、見せてやるぜ!」 
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