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MÄR - メルヘヴン - 竜殺しの騎士

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002話

「ねぇ~ジーくぅん、一緒に飛ばない~?」
「俺は鎧もある、重いからやめておく」
「え~私は気にしないよ~?」

先程とは打って変わって態度が豹変した魔女のドロシー、ジークに一目惚れしたらしくアタックをして始めている。肝心のジークはいきなりの肉食加減に少し退きながらドロシーと共に草原を進んでいた、目指しているのはドロシー曰く超激レアなARMがあるという洞窟。バッボというARMが眠っているとの事。

「あら、ねえジーくん向こうに男の子が一人いるわ。それに見た事の無い服着てるわ」
「何?」

指を指す方向に土煙が見えた、ジークは人間離れした視力でそれを見て取った。白いYシャツに黒いズボン、それにジークは見覚えがあった。学生服、生前自分も学生時代に着ていた服装であった。

「本当だ、こんな所に荷物も無しに……奇妙だな」
「ちょっとからかって来るね」

そう言って高く飛びながら少年へと向かっていくドロシーを歩きながら追いかけるジーク、鎧を鳴らしながら歩きながらこれからの身の振り方などを考える。取り合えずドロシーと共に旅をする事は決めたのだがその先は一体如何するべきだろうか。取り合えず自分は記憶を失っているからそれを取り戻す為の旅をしているという建前を背負っている、それに従うがなにやらこの世界は刺激がありそうで楽しそうだ。

「ARMか、ガーディアンARMとやらには興味あるな」

先程教えてもらったARMの種類のうちの一つ、守護者となる魔人や魔獣を呼び出す事ができるARMに興味を示していた。先程のような鎧の物もあれば巨大な獣の姿をしたガーディアンもあるらしい。Fate的に考えれば召喚系宝具だろう。

そのような事を考えているとドロシーが此方に手を振っているのが見えた、どうやら少年をからかうのが終わったらしい。手を振り返して駆け足でそちらに向かう。近づくと少年の姿が更にはっきり見えてくる、元気且つ腕白そうな表情にツンツンとした金髪をした少年。

「おおおおおぉぉぉ!!!カッコいい!!なあなあなあ!!!あんた騎士なのか!?!?」
「………随分と元気が良いな」

目の前まで来た自分に対して凄まじい興味を示してくる少年、見る限り生前の自分と同じ現代に生きてきたようだから騎士のような姿の自分と魔女であるドロシーに只ならぬ興味や関心があるらしい。取り合えずこの少年のステータスを確認してみることにする。

【対象】:『虎水 ギンタ』
【種族】:『人間』
【属性】:『秩序・善』
【精神状態】:興奮
【ステータス】 筋力E 耐久E- 敏捷E- 魔力× 幸運B

全体的に自分よりも低いが幸運のみが飛びぬけている、Bとは恐れ入るレベルの幸運だ。宝くじを買ったら3等まで独占レベルではないだろうか。そして魔力がEではなく×、つまりこの少年は魔力を有していないという事になる。

「(しかし平均的にE-とはな……こいつ、元の世界だとどんな人間だったんだ?)」
「なあアンタもARMって奴持ってるのか!?」
「いや俺は持っていない、持っているのはこいつ位だ」

腰に刺している剣を見せるとキラキラとした瞳で見つめ返してくる、この少年(ギンタ)には自分はどういった存在に写っているのだろうか。唯の剣士だろうか、それとも……

「なあドロシーから聞いたんだけどついていってくれればそのARMって奴くれるんだろう!?」
「やるのか?」
「ええ、レベルの低いダガーARM位ならいいかなって。それよりそろそろ行こっか」

ドロシーが先導する形で目的地へと向かっていく、途中ギンタにじろじろ見られたり剣を持たせてと強請られたが流石に断った。バルムンクはジークフリードの象徴とも言える剣、そうホイホイと貸してあげるわけには行かない。代わりに神が餞別にとくれた対魔力スキルを持った腕輪をくれてやった。

「ここよ、此処にバッポが眠っている」

到着したのは偉く荒廃した柱が多く見受けられる土地、以前は神殿か何かがあったのだろうが時が過ぎると共に崩れ去ってしまったのだろう。

「此処がバッボっとやらが眠ってるのか」
「ええ、ジーくん程じゃないけど素手でガーディアンを倒すんだから戦力になるかもってあの坊やは!?」
「………洞窟の入り口ぶち破ってるぞ」

何時の間にか先行していたギンタは蔦などが生い茂っている洞窟の入り口を素手でぶち破り、早く行こうぜ~っと大声を張り上げていた。そんな破天荒ぶりに頭を抱えるドロシーとそんな彼女を慰めるジーク、なんだかんだで良いチームになれるのかもしれない。

「へぇジークって記憶がないのかー」
「まああっても無くても変わりはしないだろうが、無くした物は取り戻しておかないと気分が悪いだろう。だから取り戻す旅をしているという訳だ」
「あ~解る解る、部屋で中で鉛筆とか無くした時とかスペアあるけどついつい本気で探しちまう!」

バッポが封印されていくという洞窟を進んでいく一行、ドロシーが先頭に立ち注意深く進みながらその後ろをジークとギンタが続く。お互いの事を話しながらどんどん先へと進んでいく、すると急に開けた場所に出る。

「あ~!見ろよ見ろよジークにドロシー!」

大声を張り上げてギンタが指差す先には紋章が刻まれた台座が鎮座しその上には木で作られた箱が置かれていた、如何にも宝箱という風貌をしているがジークとドロシーは簡単すぎると疑念を抱いていた。

「ドロシー、バッボはレア中のレアなんだろ。それがこんな簡単に保管されている場所にまで来れるのか、道中も自然に開いている穴のほかにはトラップも無かった」
「うん、こういった場所にARMを隠すのは盗賊が特別な力をも彫金師。普通は持ち主を選ぶ罠だったり番人とかがいるはず」

ギンタもそれを聞き警戒心を高める、そしてそれを聞いてたか玉座が輝きだす。紋章の中心の珠のような部分から巨大な石の巨人が出現する、それは宝箱を守る守人のようだった。

「やっぱり現れたかっ!ガーディアン!!!」
「まあそう来るよな!!」

箒と構えるドロシーと剣を引き抜くジーク、これから戦闘に入る事になる。

「おおおお!おっかねぇ!!でも」
「でも何!?」
「何か気づいたのか?」
「かっちょいいいい!!!」
「「やっぱ帰れええええええええ!!!!!!」」

そんなコントをしていると巨大な石巨人は腕を振りかぶり殴りかかってくる、それを回避しギンタは殴りかかるが

「いててててててててっ!!!」
「そりゃ石殴ればそうなるだろうよ」
「あの怪力でも駄目かぁ、まあ私のリングアーマーより上級ぽいし」
「なら、俺が行く!」

素早い動きで石巨人の攻撃避けつつ顔面をバルムンクで切りつける、かなり硬質だがバルムンクとて宝具、欠ける事なく顔の一部を僅かに傷つける。続けて攻撃をしようとしたとき背後から巨大魔力を感じ取ったジークはジャンプをし石巨人から飛び降りる、その直後翼を生やした巨大なライオンが石巨人へと飛び掛った。

「ジ、ジーくん大丈夫!?ごめん注意する暇なかったよ!!」
「気にするなドロシー!これが君のガーディアンか!?」
「そっ!フライングレオよ!」

目の前で繰り広げられる巨人と巨獣の対決、爪で相手の体を削り、拳で相手の体を砕こうとする戦い。巨大さゆえか凄まじい迫力の戦い、思わず見惚れてしまった。

「なぁに私のレオに見惚れちゃった?」
「……どっちかと言えば、こんなARMを使えるドロシーに感心してた」
「いやぁんもうもっと言ってよ!」
「ドロシーに質問~」

ジークに抱きつこうとしたドロシーだったがギンタから飛んできた言葉で思わずコケる、青筋を立てながらも顔を上げるとなんと既に玉座に到達し箱を開けていた。

「喋るARMってあるの?」
「んなもんある訳無いでしょ!ガーディアン化させてる訳でもないのに喋るアクセサリーなんて気持ち悪いわよ!!」
「気持ち悪いとはなんじゃあああ!!!無礼もんがぁあああああああ!!!!謝罪せよぉおお!!!」

箱から飛び出してきたの銀色の鉄球……に立派なひげを蓄えながら長い鼻をし立派な表情を師ながら怒っているARMだった。思わずそれを見て硬直するジークとドロシー。

「えっ………喋っ、てる?」
「あったな……喋るARM………ってドロシー!レオやられてるぞ!!!」
「えっし、しまった!!」

喋るARMという未知の存在に気を取られてしまったせいでARMへの魔力供給が疎かになってしまい、石巨人に一気に攻められてしまいレオは痛烈な一撃を食らいもとのアクセサリーへと戻ってしまった。

「レオ!ってきゃあああ!!」
「ドロシー!!」

レオがやられた事で更に気を取られたドロシーは大きな隙が出来てしまい、その隙を突かれ石巨人に捕まった。

「ジーくん助けてぇえええ!!」
「ったく待ってろ!」

捕らえられてしまったドロシーを救う為石巨人へと向かっていくジーク、だが敵は真名解放を行っていないとは言えバルムンクで深い傷を与える事が難しい敵、だが直感的に如何したら良いのかを身体が知っていた。身体に満ちている魔力を剣に集中させ、魔力が満ちると同時にその剣先を石巨人へと向ける。

「穿て、竜閃!!」

振るわれた一撃は真空を切り裂く刃となり、空気を両断しながら石巨人へと向かう腕を透過した。巨人は何をされたのか理解できぬまま腕を振るおうとするがドロシーを捕らえていた左腕が半ばからずるりと地面へと落下した。地面に没する寸前に彼女はジークによって救出され腕に抱かれた。

「あっありがとうぉ~ジーくぅううん!!!」
「お、おいやめっ!?わ、解ったから胸を押し付けるな!!!」
「うおりゃああああああああああ!!!!!」

ジークに抱かれながら更に強く抱きついてくるドロシーにワタワタしている間にギンタはバッボに繋がっているけん玉のけんを巨大化させ石巨人をぶん殴った。その強烈な一撃は石巨人に強大なダメージを与えたようで石巨人は地面に没した。

―――これが始まりだった。世界を救う竜殺しの英雄と異世界から来た救世主の関係の始まりは。 
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