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アヒルの旅

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7部分:第七章


第七章

「どうしてかな」
「ねえクワちゃん」
 その男の子のかわりに。彼が今乗っているお馬さんがクワちゃんに優しく声をかけてきました。茶色の身体にとても優しい目をしています。
「どうして牧場にいるの?」
「お家の中を見て回っていまして」  
 クワちゃんはお馬さんに対してもとても正直でした。
「それでここにも来たんです」
「そうだったんだ」
 お馬さんはクワちゃんの言葉を聞いてまずは頷きました。
「それにしてもよくこんなところまで来たね」
「はい。色々と歩いていまして」
「ううん、お池からここまでね」
 お馬さんは皆と同じ様な言葉を出しました。
「やっぱり凄いよ」
「そうなんですか」
「あれっ、クワちゃん」
「こんなところに?」
 やがてクワちゃんに気付いて牛さんや豚さんもやって来ました。牛のお姉さんと豚のお兄さんがやって来たのでした。
「いるんだ」
「またどうして?」
「何でもお家を見回しているそうだよ」
 お馬さんがその牛さんや豚さん達に話しました。
「それでここにも来たらしいんだ」
「ふうん、そうだったんだ」
「それでだったんだ」
 皆それを聞いてまずは納得した顔で頷きました。
「それでここまで来たんだ」
「よく来たね」
「はい。ところで」
 ここでクワちゃんは言いました。
「あの、豚のお兄さん」
「ああ、僕?」
「はい。一つ聞いてもいいですか?」
 こう前置きしてからその豚のお兄さんに尋ねるのでした。
「お兄さんが食べていたのは何ですか?」
「僕が今食べていたの?」
「はい。あれは何ですか?」
 豚さん達が食べていたものを直接尋ねるのでした。
「何かよくわからないんですけれど」
「ああ、あれは残飯なんだ」
 豚のお兄さんはにこりと笑ってクワちゃんに教えてあげました。
「あれはね。残飯なんだよ」
「残飯ですか」
「皆が食べ残したのをね」
 こうクワちゃんにお話をするのでした。
「僕が食べるんだよ」
「そうだったんですか」
「そうだよ。そうした皆の残飯を食べて」
 お兄さんはさらにお話するのでした。
「それで森にある茸を見つけるのが僕達の仕事なんだよ」
「それが豚さんのお仕事なんですか」
「そうだよ。わかってくれた?」
「はい」
 お兄さんの言葉にはっきりとした声で頷くのでした。
「そうなんだ。それが僕達の仕事なんだ」
「成程」
「そして私達の仕事は」
 今度クワちゃんに言ってきたのは牛のお姉さんでした。お馬さんや豚さん達と同じようにとても温かくて優しい目をクワちゃんに向けています。
「お乳を出すことなのよ」
「お乳!?」
「皆が飲むね。白いものなのよ」
 こうクワちゃんに説明するのでした。
「それがお乳なのよ」
「そのお乳を出すのが牛さん達のお仕事ですか」
「そうよ。それがね」
 さらにクワちゃんに教えてあげるのでした。
「私達のお仕事なのよ」
「そうなんですか」
「僕は御主人様や若旦那を乗せるのが仕事だよ」
 最後にお馬さんがクワちゃんに言いました。
 
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