夜空の星
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2人の姉妹
ある日のこと。
「こんにちは、ミレーヌさん。」
お店にスラッとした若いスーツ姿の紳士が入ってきた。
「ルイさん、こんにちは!サラは部屋にいますよ、どうぞ!」
「ありがとう。」
ルイさんは市街地にある名門ガンス家の次男で、とても裕福。
それでいて気取らないし、名門出身者とは関係ないあたしたちに対しても礼儀正しくて、とてもいい人。
そんな人が、どうしてここに来たのかって?
実は、つい2ヶ月ほど前に、サラと婚約したの!
街中で歩いていたルイさんが大切な書類を落としてしまい、サラが偶然拾って警察に届けた事がきっかけで出会ったんだけど、そこでルイさんがサラにまさかの一目惚れ!
パパは最初、身分違いで反対していたんだけど、サラもルイさんの人柄に惚れて二人で説得し続けて、おまけにガンス家が定期的に、うちのお店から沢山の雑貨を仕入れしてくれる事にまでなって。
誠意を見せたルイさんに、パパもやっと結婚のお許しをくれたの。
逆にルイさんのご両親は、長男のお兄さんの家族に二人の息子兄弟がいる事もあってか、次男のルイさんに対しては寛大で、次男の決めた人なら、と快諾してくれたんだ。
サラったら、姉のあたしよりも先に結婚しちゃうのよ。
全く、この姉を差し置いて!
勿論、幸せになってくれるのはすごく嬉しいけど。
一番年上の姉を含めた三姉妹の中で、真ん中のあたしだけが残っちゃった。
やっぱり、みじめな気持ちにも多少なるよ…。
「誰かいるー?開けてー」
店内にいると、自宅の玄関の方から聞き覚えのある声が。
姉のクリスティーンがやってきた。
「今開けるわ、クリス姉さん!」
クリス姉さんは、半年前に今の旦那さんであるジェイクさんと恋愛結婚し、街中で暮らしている。
ジェイクさんも、ルイさんに負けず優しくてとってもいい人。
それでもパパは、我が家よりも稼ぎの少ない修理工のジェイクさんとの結婚を反対していたんだけど。
2年かけて少しずつ顧客を増やしていって、出会った頃よりも落ち着いた暮らしができるようになって、パパを納得させた。
クリス姉さんも、サラも、どうしてこんないい人達と出会えるんだろう?
羨ましいったらないわ。
お店をパパに任せて姉さんと話しながら、そんな事を思っていた。
「姉さん、今日は何か用事があったの?」
「ええ、ジェイクが地方のお客さんに仕事で呼ばれて、帰りが明日になるから、せっかくだから実家で泊まってきたら?って言われて。」
姉さんが笑顔で答える。
「優しいわね、ジェイクさん!」
「お店忙しそうだったら手伝うわよ?」
「ううん、今日は安売りの日でもないし、お客さんも混んでないから大丈夫。せっかくだからゆっくり休んで!パパも姉さんを見たら喜ぶわ。」
「ありがとう。」
「さっきルイさんも来て、サラのところにいるのよ、今日は人数が増えて珍しく賑やかだわ。」
「そうなんだ。後で挨拶に行くわね。結婚式の相談かしら?」
「きっとね。もうすぐだもんね。あたしも楽しみ!」
「そういえば…賑やかと聞いて思い出したわ。」
「うん?」
「さっき、店の前でロビン君を見かけたわ。店内を気にしているみたいだったけど。」
「ええ!?あいつまた来てるの?…あたしもう我慢できない。注意してくる!」
あたしは勢いよく玄関のドアを開けて走り出した。
ロビンはお店の周りにある塀に背中を預けて立っていた。
「ちょっと!何しにきたの!?」
「何って…大学の帰りに通りかかっただけだけど?まぁ、ついでにお前がドジを踏まないか観察もしてたけどな。」
「あたしがいつドジするってワケ!?とにかくここには近寄らないで!」
「冷たいヤツだな。小さい頃はよく遊んでたじゃねぇか。」
「あんたがあたしをからかってくるまではね!とにかく迷惑なの!そっちだってニールさんに、あたしたちと仲良くしないように言われてるんじゃないの!?」
「!……ああ、そうだな!」
ロビンは溜息をついたようにそのまま屋敷の方に帰っていった。
何だろう?あの違和感のある態度。
でもとにかく、帰ってくれて良かった…!
後書き
次回へ続く
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