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狸と狢

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1部分:第一章


第一章

                        狸と狢 
 狸と狢は同じ穴に棲んでいました。
 そこは狢が掘った横穴で狸はそこに同居しています。
 二匹はそれぞれとても仲良しです。その外見もかなり似ています。
 それで、です。二匹は森の外に出るといつも間違えられます。
「あれ、狸さん?」
「さっきここにいませんでした?」
 ある日狢がです。こうもりの兎達に言われました。
「どうしてまたいらしたんですか?」
「忘れ物ですか?」
「いや、僕は狢だよ」
 狢は苦笑いを浮かべて兎達に答えます。
「狸君じゃないよ」
「あれっ、間違えました」
「すいません」
「そうだよ。僕は狢だからね」
 こう兎達に言います。そして狸もです。
「よお、狢」
「今日も元気そうだな」
 木の上からです。小鳥達に声をかけられます。
「今から何を食べるんだい?」
「あんたの好きな野苺ならそこに一杯あるぜ」
「僕はどっちかっていうと山葡萄の方が好きなんだけれど」
 狸はこう小鳥達を見上げて言いました。
「それは狢さんじゃないか」
「おっと、狸だったか」
「そっちだったのか」
「そうだよ」
 こう彼等に答えます。
「僕は狸。狢さんじゃないよ」
「悪い悪い、あんまり似てるからな」
「何か最近よく間違えるな」
「いつもじゃないか」
 また小鳥達に言います。
「それって」
「似てるからなあ」
「そっくりだからな」
 こう言われる始末でした。とにかく彼等はお互いによく間違えられます。そうしたことが続いてです。二匹はその棲家の横穴の中で話をするのでした。
「あの、狢さん」
「わかってるよ、狸君」
 狢はすぐに狸の言葉に答えました。二匹はお互い向かい合って胡坐をかいて座ってです。そのうえでそれぞれ腕を組んでいます。仕草もそっくりです。
「間違えられるんだね」
「それもいつもですから」
「困ったねえ」
「困りましたね」
 そしてお互い言います。
「僕達種族は違うのに」
「一緒に住んでるだけでね」
「そうですよね」
 狸は困った顔で狢に話します。
「どうしたらいいんでしょうか」
「まずは森の皆に聞いてみるかい?」
 狢はここでこう狸に提案しました。
「ここはね。そうするかい?」
「皆にですか」
「そう、皆に」
 また狸に話します。
「それでどうかな」
「そうですね」
 狸は少し考えてからです。狢の言葉に答えました。
「それじゃあ。今から」
「皆を集めてね」
「僕達を見分けてもらいましょう」
「そうしよう」
 こうして森の皆に集まってもらいました。森の中の広場に来てもらってです。そのうえで二匹で並んで前に出て皆に尋ねるのでした。
「それでだけれど」
「いいかな」
 狢と狸はそれぞれ彼等に言います。
「僕達が何処がどうそれぞれ違うか」
「ちょっと見てくれない?」
「おいおい、難しいことを言うな」
 その彼等に最初に言ったのは狐でした。右の前足で彼等を指し示しながらです。そのうえで彼等両方に対して言ったのである。
 
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