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遊戯王GX 〜漆黒の竜使い〜

作者:ざびー
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episode2 ーTAG FORCEー

 
前書き
タイトルからデュエル内容は察してね(´・ω・`)





 

 
「わぁ!ここが寮なんですか⁉︎本当ッにお城みたいですね!」
「えぇ、気に入ってもらえてなによりだわ」

 クロノス校長代理との決闘の後、クロノス直々に頼まれた明日香はオベリスク・ブルー女子が生活する寮へと案内していた。
 湖畔の前に建てられた立派な建造物を見て瞳を輝かせる華蓮。そして、隣にいる明日香もその無邪気な顔を見て、頬を綻ばせる。

「外側がこんなに凄いなら、中はもっと凄いんでしょうね!」

 華蓮は興奮冷めやらぬ状態で扉を潜り、お城()の中へと入る。寮の装飾は豪華絢爛の一言に尽きる。
 ぐるりと周りを見回し、ふと違和感を感じる。

「人が少ない……?」
「……え?」


 楓さんから聞いた話ではデュエルアカデミアはほとんどが男子生徒だが、女子生徒もそれなりに居るらしい。だが、天井にシャンデリアが飾られたバルコニーには華蓮と明日香以外、人の気配が感じられない。まるで、人間が消えたようだ。

(多分、人が少ない時間帯なんでしょう……。)

 考え過ぎだろうと内心で考えていると、上の階から白衣を着た女性が降りてくる。

「あら、転校生の子かしら……?」
「……?」
「女子寮の担当教諭をしてくれてる鮎川先生よ」

 誰かわからず思わず首を傾げていると、隣に立つ明日香さんから耳打ちされる。

「今日からお世話になります、花村 華蓮です。よろしくお願いします、鮎川先生」
「えぇ、よろしく華蓮さん。もっとも私の本業は保険医だから此処にはほとんど来ないんだけどね」

 鮎川は丁寧にお辞儀をする華蓮に対し、ニコリと笑みを向けながら返答をする。
 彼女曰く、他に女性教諭がいないため、仕方なく女性寮担当になったとか。

「荷物はお部屋の方に運んであるわ。じゃ、明日香さん案内よろしくね」
「はい」

 要件を伝えるために来たのか、それだけ言うとさっさと寮を後にしてしまう。
 その後、明日香さんの後をついていき、自分の部屋へと案内される。やはり、外見も高級ホテルで見られるような装飾が施されており、たかだか高校生如きがこんなところに宿泊していいのか疑問に思ってしまう。

「荷物は中に運んであるそうよ。あと、シェアルームだから、大丈夫だと思うけど態度には気をつけなさいね」
「はい、色々ありがとうございます」

 最後にお礼を言うと、高揚する気分を必死に抑えつつドアを潜る。

「……わぁ!」

 やはり内装は豪華で、スウィートルームの一室などではないかと疑うほどである。
 来て良かったと喜びを噛み締めていると部屋の奥から声が聞こえてくる。

「……あら?」

 小首を傾げながら、顔を見せたのは大人の雰囲気を醸し出している黒髪の女性。
 座っていたソファにはページが開かれたままの本が置いてあるので、読書中だったらしい。

「あの、すいません。はしゃぎ過ぎちゃって……」

 少し申し訳なく思い、謝罪すると嫌な顔をするどころか微笑みながら、別に気にしてないわ、と許してくれる。その懐の深さと自分には無い大人な雰囲気に思わずくらりとする。

「ふふっ、あなたが転校生の子ね。私は二年の古谷 葵よ」
「はい!花村 華蓮です、これからよろしくお願いします」

 葵は、礼儀正しく挨拶をする華蓮を見て、(にこや)かに笑みを浮かべる。
 立ち話も疲れるので、葵は華蓮を奥へと案内するとやはり、目を輝かせながらシェアルームを見渡す。
 ブルー寮は、各一人にベッドとクローゼットのついた自室が与えられ、他にも二つを繋ぐリビングルームに、キッチン。更に、バスルームまでついているという破格の待遇なのだ。
 庶民である華蓮がこれに感動しないわけがない。

「気に入ってくれたかしら?」
「はい、とっても!」

 キラキラと笑顔を輝かせていると、ピンポンパンポーン♪というお決まりのメロディーと共に聞き覚えのある声がスピーカーから響く。

『えー、マイクテス、マイクテスナノーネ。ゴホン、今から集会を行うノーデ、生徒諸君は速やかに講堂に集まるノーネ』

「あら、予定にはなかったはずだけど……?」
「……なんなんでしょうか?」

 特徴的な声色と語尾から容易にクロノス校長代理である事がわかる。しかし、内容までは放送では伝えてくれないために、小首を傾げる二人。だが、考えてもらちがあかないので、足早に本校舎にある講堂へと向かう事にする。

 ◆◇◆

 華蓮達が講堂についた頃には生徒の大半が集まっていた。
 赤、黄、青、そして白と色とりどりの制服に身を包んだ生徒達が集団でいる様は確かに色映えするが、いかんせんその数が多いため、熱気と喧騒で頭がクラクラとしてくる。
 頭痛に耐えつつ、集会の開始を待っているとようやく壇上に三人の教師が上がる。
 一人は、クロノス校長代理で間違いなく、二人目の小肥りの教師はナポレオン教頭というらしい。そして、三人目を確認した時、思わずクラリと体が傾く。

「……なんでさ」

 明らかに見知った顔、というか私のマネージャーである橘 楓がスーツ姿でそこに立っていたのだ。まるで教育実習生である。

「えー、今回の集会は明日からここの教師として働く事になった先生のお披露目ナノーネ。こころして聞くように!ナノーネ」

 楓さんはクロノスからマイクを渡されるとお手本になりそうなほど綺麗なお辞儀をすると、緊張など微塵も感じさせない声音で語り始める。

「どうも、今日からデュエルアカデミアで教鞭を取らせてもらう事になった橘 楓です。科目はデュエル理論を主に担当しますので、デッキ構築、戦術等々相談があればいつでもどうぞ」

 そう締めくくると一礼し、マイクをクロノス教諭に渡す。

 楓さんの挨拶を聞いた葵さんの評価は「真面目そうだけど、行動力が凄くありそう。多分、うちのどの教師共より頼りになるんじゃない?」との事。

 いつもは明るく元気ハツラツとした姿を見ている華蓮にとって、真面目な態度の楓は凄く珍しく思う。

 今回の集会は本当に楓さんの挨拶だけみたく、それが終わると速攻で解散となった。

「華蓮さん」

 楓さんと談笑を交えつつ、帰っていると聞き覚えのある声に呼び止められた。

「あら……?」
「明日香、先輩……?」

 今朝方知り合ったばかりの一年上の先輩がそこにいた。そして、背後では先輩の友達と思わしき女子生徒が怪訝な視線を華蓮に向けていた。

「葵と同じ部屋だったのね。まぁ、いいわ。華蓮さん、少しお時間をもらっていいかしら?」

 極めて丁寧な口調だが何故か有無を言わせない圧力を感じ、さらに三歩後ろほどに立っている二人の女子生徒の威圧的な視線がさらに高めている。

「ェ……。あ、はい」

 結果、困惑しつつも了解の返事をしてしまう事になってしまった。

「というわけで、葵。少し借りてくわよ」
「どーぞお好きに女王様」
「あっそう」

 女王様と嫌味を込めて呼ばれた明日香は、顔を一瞬顰めるも華蓮と二人の女子を引き連れてその場を後にする。

「はあ……、転校早々目をつけられちゃうなんて大変ねぇー?」

 一人取り残された形の葵は、四人の後ろ姿を見送りつつ、頬に片手を添え首を傾げていた。


 ◆◇◆

「ねぇ、明日香さん。ホントにこんな子がプロなんですか?」
「ジュンコのいう通りですわぁ。こんな弱々しい子が"漆黒の竜使い"のような凛々しいお方と同じわけないですぅ」
「……っ」

 モモエの口から"漆黒の竜使い"と出た時、思わず肩が跳ねそうになるのを気合で押しとどめる。今ここで動揺した素振りを見せたらアウトだとわかっているもののやはり怖い。

(……どうしてこんな事に!)

 校舎の壁を背にし、三人に囲まれてしまった華蓮は、涙を浮かべつつ内心で叫ぶが今の状況において華蓮を助けてくれる人は居ない。もちろん、包囲網に穴は無いし、それを強引に突破できるほどの剛力も華蓮にはない。

「もう一度聞くわね。華蓮さん、あなたはプロデュエリストのレンカ、そうよね?」

 諭すように、しかし、威圧的に華蓮に尋ねてくる明日香に対し酷く恐怖を覚える。上級生三人に詰め寄られ、もう泣きたいぐらいだと思い始めた矢先、救世主が現れる。

「あら、二年生が後輩いびりかしら?」
「なっ⁉︎」
「……っ!葵さんっ!」

 皆の視線の先には不敵な笑みを浮かべた葵さんが居た。初めて彼女に会った時に向けられたお淑やかな雰囲気は微塵もなく、感じるのは三人に向けられた刺すような闘志。
 暫く睨み合いが続いた後、明日香さんがおもむろに口を開く。

「それでなんのようかしら……?」
「別に、女王様と不愉快な仲間達から私のルームメイトを守りにきただけですけど?」
「誰が不愉快ですって⁉︎」

 三人へと向けられた挑発にジュンコさんが釣られ、三人の注意が葵さんへと向けられる。

「ふふ、不愉快なのは事実じゃなくて……?RPGよろしく、後ろをついてく姿は滑稽だもの」
「何をぉ⁉︎」
「ジュンコ!」

 挑発に挑発を重ねた言動にジュンコさんの怒りが沸点を超え、激昂する。しかし、事を起こす前に明日香さんが止め、キッと葵さんを睨みつける。

「あなたは、私達を挑発して何がしたいわけ?」
「逆に聞くわ。あなた達は後輩をいじめて何がしたいのかしら?」

 睨み合う二人の視線が交差し、中央で火花が飛び交う……気がした。殺気だった二人に思わず体が震える。そして、葵さんは私を一瞥すると……

「そうね、このままじゃ埒があかないし……。決闘者らしく、デュエルで決めない?」
「はっ、あんたみたいなランキング下の奴が明日香さんに敵うわけないじゃない!」

 葵さんの言動に噛み付いてきたのがジュンコさんだ。ふふんと得意げな表情を浮かべ、見下した視線で葵さんを見据える。

「そうかしら?それは闘って見なければわからないわよ。けど、普通にやるのは面白くないわね。華蓮、デッキは持ってるわよね?」
「え?あ、はい」
「そう。なら、タッグデュエルと洒落込みましょうや」

 余裕を一切崩す事なく言い放った葵さんに三人は呆気に取られるがそれも少し間だけ。明日香さんは、ニヤリと口角を吊り上げて笑う。

「そうね、いい案ね。ジュンコか、モモエ。どっちかパートナーをお願いするわ」
「じゃ、じゃあ私が!」

 どうやら、明日香さんのペアはジュンコさんに決まったらしい。
 なのだが、ここで一つ気がついて欲しい。私は一言もデュエルをするとは言っていない。むしろ、一刻も早くこの場から立ち去りたいのだが……。

 葵さんはそんな私の心情を察したのかにっこりと笑みを向けられ一言。

「デュエル……、するわよね?」
「……はい」

 威圧的な笑みの前に私は首を縦に振ることしかできなかった。

「さて、了承も得た事だし。ルールはタッグフォースルールでいいわね」
「ええ、もちろん。それで準備はいいかしら?」
「はい!」
「……はい」

 私を含めた四人がデュエルディスクを装着し、対峙する。
 ここまで来ると後には引けないので意識を切り替える。

決闘(デュエル)!!』

 明日香&ジュンコ:LP4000
 華蓮&葵:LP4000

「私のターン、ドロー!私はモンスターを伏せ、さらにカードを一枚セットしてターンエンドよ」

 先行を取ったのはジュンコさんだ。
 タッグフォースルールでは、フィールドと墓地が共有なため、展開し過ぎるとかえって味方の動きを阻害してしまう。その辺を理解してか、最小限の動きで、かつ自分のデッキの情報を一切与えずにターンを終える。

「……行きます!私のターン、ドロー!」

 力強い掛け声とともにデッキからカードを引き抜く。
 余談だが、クロノス教諭とのデュエル後、少し編成を変えてみたが中々いい塩梅になっているようだ。

「私は儀式魔法『高等儀式術』を発動します!」
「っ!儀式……!?」

 この中で唯一、私のデュエルを見ていた明日香さんは驚きの表情を見せる。流石にデッキが変わっているとは思わなかったのだろう。

「デッキからレベル6になるように、レベル2の『プチリュウ』三体を墓地に送り、『竜姫神 サフィラ』を儀式召喚します!光臨せよ、竜姫神 サフィラ!」

 天から下りた極光が地面を貫く。そして、優しい声音が耳に響くと共にサファイアの鱗を持った竜姫が光臨する。

「くっ、いきなり上級モンスターを……」
「あまり、侮らない方がいいわよ、ジュンコ。仮にもクロノス教諭を真正面から打ち破った強者だから」
「あら、今年の一年生は優良株が多いみたいね」

 何故かいきなりの褒め殺しにあい、なんとも言えない気分になる。喜ばしい事なのだが、同級生が一人もいないこのメンバーではそれは無理に等しい。

「え〜と、バトルです!サフィラでセットモンスターを攻撃します!」
「破壊された『フェデライザー』の効果発動!デッキから『フェニックス・ギアフリード』を墓地に送り、デッキから一枚ドロー!」
「なるほど、デュアルですか……」

 デュアルモンスターは、再度召喚をしない限り、効果が使えないという曲者揃い。しかし、どの効果も強力でサポートカードも豊富な分、中々に侮れない。

「私はカードを一枚伏せ、エンドフェイズに移行し、『竜姫神 サフィラ』のモンスターエフェクトを発動します。サフィラの儀式召喚、もしくはデッキ・手札から光属性モンスターが墓地に送られたターンの終わりに以下の効果から一つを選択し、発動できます。
 一つ目は、二枚ドローし、一枚捨てる効果。二つ目は、相手の手札をランダムで捨てさせる効果。三つ目は、墓地の光属性モンスターを手札に加える効果。
 私は、一つ目の効果を選択し、発動します。二枚ドローし、一枚を墓地に。
 これで、ターンエンドです」

私のターンが終わり、次はジュンコさんと明日香さんが入れ替わりターンを迎える。
恐らくは、あの三人組の中で一番の強者だが、どんなデッキを使ってくるのか少しワクワクする気持ちもある。

「私のターン、ドロー!永続魔法『昇華する魂』を発動。そして、『マンジュゴッド』を召喚し、効果発動!デッキから『機械天使の儀式』を手札に加え、発動!手札のレベル6『サイバー・プリマ』を生贄に『機械天使の儀式』を発動!降臨せよ、『サイバー・エンジェル ー韋駄天ー』!」

和風な衣に身を包んだ天使の姿をしたモンスターが召喚される。
そのステータスは、攻撃力1600と守備力2000と低めの数値だが、こういったモンスターに限り厄介な効果を持っているのをよく知っている。

「まずは『昇華する魂』の効果によって、『サイバー・プリマ』を手札に加え、さらに韋駄天の効果発動!このカードの特殊召喚時、墓地から魔法カードを手札に加える。私は『機械天使の儀式』を手札に加えるわ。そして、装備魔法『リチュアル・ウェポン』を韋駄天に装備!」

攻撃力1600の韋駄天が一気に3100まで攻撃力を上昇させる。

「バトルよ!韋駄天でサフィラを攻撃!」
「っ!墓地の『祝祷の聖歌』を除外し、サフィラの破壊を一度だけ無効にします!」

間一髪、サフィラを護る加護により破壊を免れる。

「くっ、さっきの効果で捨てたか。だけど、ダメージは通るわ!」
「きゃっ……!」

華蓮&葵LP4000→3400

「私はカードを一枚伏せ、エンドよ」
「光属性の『サイバー・プリマ』が墓地に送られたことでサフィラの効果を発動します!カードを二枚ドローし、一枚捨てます」
「相手のカードでも条件を満たすのね。さっきのターンに無理やりでも破壊しておけばよかったわね」

苦々しげに顔を歪める明日香さん。それとは対照的に今まで黙って成り行きを見守ってい葵さんは楽しげだ。

「まだ始まったばかりよ。そんな急くような局面じゃないわ」

楽しみましょう?と楽しそうに微笑む。しかし、なぜか背筋がぞっとするような感覚に襲われる。

「私のターン、ドロー!ふむ、まずは通常魔法『天使の施し』を発動!三枚ドローして、二枚捨てる。私は、『ADチェンジャー』と『奈落との契約』を捨てるわね」

光属性モンスターが墓地に送られたことで葵さんもサフィラの効果の発動条件を満たす。そして、儀式魔法を扱ってることから、葵さんも儀式軸のデッキであることが判明する。

「手札から『終末の騎士』を召喚し、効果発動。デッキから『儀式魔人プレサイダー』を墓地に。そして、儀式魔法『エンド・オブ・ザ・ワールド』発動!」
「っ!」

地面から蒼い炎が広がり、地面がひび割れ、空が灰色に染まる。
ソリッドビジョンによる演出だと、わかってはいるがあまりのリアルさに息を飲む。

「フィールドの『終末の騎士』と墓地の『儀式魔人プレサイダー』を生贄に降臨しなさい、『破滅の女神 ルイン』!!」

荒廃した大地に魔法陣が描かれ、死の薫りを纏った女性が召喚される。

「私は墓地の『ADチェンジャー』を除外し、韋駄天の表示形式を守備表示に変更!そして、バトルよ!ルインで韋駄天を攻撃!」

リチュアル・ウェポンの隙をついて最上級モンスター並みの攻撃力を有していた韋駄天を破壊することに成功する。

「プレサイダーを生贄にした儀式モンスターが相手モンスターを戦闘破壊ことでデッキから一枚ドローできるわ」
「くっ……。だけど、私へのダメージは0よ!」

そんな明日香さんの言葉を耳にし、葵さんは口元を押さえクスリと笑う。

「甘いわね、女性様。ルインは相手モンスターを破壊した時、もう一度攻撃が可能よ!さぁ、マンジュゴッドを攻撃しなさい!」
「くぅ……」

マンジュゴッドを破壊し、超過ダメージ分が衝撃となって明日香さんを襲う。咄嗟に腕で庇うもやはり堪えるらしい。

明日香&ジュンコLP:4000→3300


「戦闘破壊したことで一枚ドロー。そして、サフィラで直接攻撃!」
「やらせない!リバースカードオープン!『奇跡の残照』!甦れ、韋駄天!」
「じゃあ、サフィラで韋駄天を攻撃!」

これが決まれば大ダメージ!と期待するが壁モンスターを蘇生させられ防がれてしまう。さらに韋駄天が特殊召喚されたことで墓地の『リチュアル・ウェポン』を回収され、次のターンに備えられてしまう。

「残念ね。カードを二枚伏せ、このターンの終わりにサフィラの効果発動。二枚ドローし、手札を一枚捨てるわ」

効果処理を済ませると葵さんは、ジュンコさんへとターンを渡す。

「やられっぱなしじゃいかないわよ!私のターン、ドロー!魔法カード『融合』発動!手札の『ヘルカイザー・ドラゴン』と『エヴォルテクター・シュバリエ』を融合!来い
『超合魔獣ラプテノス』!!」
「ちっ、厄介なのが出てきたわね……」

いくつものモンスターを継ぎ接ぎにしたキメラのようなモンスターを見て、華蓮と葵はし顔を顰める。

「ラプテノスはフィールド上に存在する限り、デュアルモンスターは再度召喚された扱いとなるわ。さらに手札から『炎妖蝶ウィルプス』を召喚!そして、ウィルプスを生贄にして効果発動!同名カード以外のデュアルモンスターを再度召喚した状態で特殊召喚できる。不死鳥の如く、甦れ!『フェニックス・ギアフリード』!」

地面から立ち上る炎柱と共に、紅蓮の鎧を纏った戦士が現れる。
ラプテノスに続いて、二体目の最上級モンスターを召喚したジュンコは得意げに鼻を鳴らす。

「さぁ、覚悟しなさい!バトルよ!『フェニックス・ギアフリード』でルインを攻撃!」
「くっ……!」

華蓮&葵:LP4000→3500

ルインも迎撃するものの、ギアフリードの大剣に一刀両断され破壊されてしまう。そして、ラプテノスがサフィラを捉える。

「ラプテノスで、サフィラを攻撃!さらに、この瞬間、手札から速攻魔法『禁じられた聖槍』をサフィラに発動!攻撃力を800ポイントダウンさせる!」
「そんなッ⁉︎」

華蓮&葵:LP3500→3000

天より降ってきた槍が深々とサフィラの胸を貫く。その聖槍は加護を与える反面、代償は大きく、串刺しにされたサフィラは抵抗虚しくラプテノスに破壊されてしまう。

「私はこれでターンエンドよ」
「……次は私か」

ポツリと呟くとフィールドを確認する。
『フェニックス・ギアフリード』には相手が魔法カードを発動した際に、墓地からデュアルモンスターを特殊召喚する誘発効果があり、下手に魔法カードを使い過ぎれば大量の展開を許してしまう。さらに悪いことに、ラプテノスが存在する限り、デュアルモンスターの能力は無条件で解放状態となる。

そして、華蓮たちのフィールドは現在、伏せカードが一枚のみであり、しかも現在使えるものではない。
とりあえず、ドローしてから考える事にし、デッキに手をかける。

「ドロー。手札から魔法カード『おろかな埋葬』を発動します」
「その瞬間、『フェニックス・ギアフリード』の効果発動!墓地からウィルプスを守備表示で特殊召喚!」

豪ッと炎が吹き上がり、炎を纏った巨大な蝶がフィールドを舞う。
厄介な蘇生効果を持ったモンスターを蘇生させてしまうものの、目的のモンスターを出す算段がついた華蓮。

「『おろかな埋葬』のエフェクトで『ウィルミー』を墓地に送ります。そして、手札から『ドラゴラド』を召喚し、モンスターエフェクト発動!」
「っ!そのコンボは!」

明日香さんが唯一大きく目を見開き、驚きを露わにする。そう、クロノス教諭とのデュエルの時に使ったコンボだ。これならば、『融合』を使わず、高打点のモンスターを出す事ができる。

「『ドラゴラド』のエフェクトによって『ウィルミー』を特殊召喚します。そして、『ドラゴラド』と『ウィルミー』を墓地に送り、融合!」
「なっ⁉︎融合魔法無しで融合召喚ですって⁉︎」
「へぇ〜……」

モモエとジュンコの二人は驚き、葵は面白いものを見たと笑みを浮かべる。そして、野獣の如き咆哮を轟かせ、獰猛なドラゴンが現れる。

「来い、『ビーストアイズ・ペンデュラムドラゴン』!!」
「こ、攻撃力3000……⁉︎こんな簡単に出せるのに⁉︎」

インチキ効果もいい加減にしろ!とジュンコから非難が飛んできて、華蓮は思わず苦笑する。

「バトルです!ビーストアイズでラプテノスの攻撃!ヘルダイブ・バースト!」
「くぅ……、やってくれるわね!」

ジュンコ&明日香:LP3300→2500

ラプテノスを破壊したビーストアイズはさらにジュンコに追い打ちをかける。

「ビーストアイズは戦闘破壊した時、融合素材とした獣族モンスターの攻撃力分のダメージを与えます!」
「そんなっ⁉︎」

ジュンコ&明日香:LP2500→1500

さらなる衝撃がジュンコを襲い、咄嗟に腕をクロスし耐えるが耐え切れずに、地面を転がる羽目になる。砂だらけになったジュンコは砂を払いつつ、恨めしげに華蓮を睨みつける。

「か、カードを一枚伏せエンドです」

先輩に睨まれ、ビクビクしつつターンを終えると次は明日香のターンとなる。
凛とした声と共にカードをドローする。

「私は魔法カード『強欲な壺』を発動し、二枚ドロー!さらに魔法カード『死者蘇生』を発動し、墓地の韋駄天を特殊召喚!韋駄天の効果によって『強欲な壺』を手札へと加え、そのまま発動!二枚ドローする!」
「うわぁ……」

容赦無い連続4枚ドローに顔を盛大に顰める。『強欲な壺』から『天使の施し』という流れはよくあるが、今回のはそれよりもタチが悪い。

「儀式魔法『機械天使の儀式』を発動!フィールド上の『サイバーエンジェル 韋駄天』と手札の『サイバー・プチ・エンジェル』を生贄に、来い!最強のサイバーエンジェル(機械天使)!」

二体のモンスターが聖光へとくべられ、一際大きく燃え上がる。そして、燃え舞い踊る火炎は人型を作り、

「『サイバー・エンジェル 荼枳尼』!!」

明日香が最強と豪語するモンスターへと姿を変える。

「荼枳尼の効果発動!このカードが儀式召喚に成功した時、相手は自身のモンスター一体を破壊する!」

さぁ、選びなさい!と言われるも華蓮のフィールドにはビーストアイズ一体のみで選ぶ余地もなく、荼枳尼の持つ薙刀に両断される。

「『昇華する魂』の効果により、『サイバー・プチ・エンジェル』を手札に戻す。そして、バトルよ!」
「させません!リバースカードオープン!『和睦の使者』!エフェクトにより、このターン発生する戦闘ダメージを0にします」
「くっ、命拾いしたわね。私はウィルプスを生贄にして、効果発動!墓地から『ヘルカイザー・ドラゴン』を再度召喚した状態で特殊召喚し、エンドよ」

憎々しげに吐き捨てるとターンを終える。そして、二度目の葵さんのターンだが、このターンであのモンスター達をどうにかしなければ、即ち彼女たちの負けとなる。

「私のターン、ドロー。魔法カード『儀式の準備』を発動。デッキから『破滅の魔王 ガーランドルフ』を手札に加え、墓地の『エンド・オブ・ワールド』を手札に戻すわ」
「魔法カードが発動された事で『フェニックス・ギア・フリード』の効果発動!『エヴォルテクター・シュバリエ』を特殊召喚!」

サーチと引き換えに、強力な破壊効果を持ったモンスターを出されてしまう。サーチしたんだから、何か策はあるのかな?と華蓮はパートナーに淡い期待を寄せるが

「本当、どうしようかしら……」

手を頬に添え、首を傾げる葵を見て、前につんのめる。
ライフこそ余裕はあるものの、一体でも直接攻撃をもらってしまえば致命的なラインでのだが、葵は思案したまま動きを見せない。

「『終末の騎士』を召喚し、効果発動。デッキから『儀式魔人 リリーサー』を墓地に送るわ。そして、ターンエンドよ」

葵がした事は墓地肥やしと守備表示でモンスターを出しただけだ。そして、相手の場には最上級モンスターや、二回攻撃できるモンスターなどがいる。もはや絶対絶命なのだが、葵にはその焦りや緊張感が見られない。

「ふん、どうやら私と明日香さんの勝ちのようね!私のターン、ドロー!バトルよ!『ヘルカイザー・ドラゴン』で『終末の騎士』を攻撃!」

ジュンコが攻撃宣言をした、その時、葵さんの口角が吊り上り、弧を描く。

「リバースカードオープン『緊急儀式術』発動」
「き、緊急⁉︎」

バトルフェイズに儀式召喚などと思ってもみなかったのかジュンコの声が裏返る。

「『緊急儀式術』の効果により、墓地の『奈落との契約』を除外し、その効果を得る。『終末の騎士』と墓地の『儀式魔人 リリーサー』を生贄に、『破滅の魔王 ガーランドルフ』を儀式召喚!」

突如として地面より、濃密な闇が吹き出し、心臓を圧迫するような威圧感と共に漆黒の魔王が降臨する。圧倒的な威圧感を前にジュンコが一歩退くも、すぐに威勢を取り戻し、吠える。

「そ、そんなモンスター!私の『フェニックス・ギア・フリード』の敵じゃない!」
「阿保ね。ガーランドルフの効果発動!このカードの攻撃力以下の守備力をもつモンスター全て破壊する!エンド オブ カタストロフ!」
「「んなっ⁉︎」」

破壊の一撃が全てのモンスターを塵さえ残さずに破壊し尽くす。その光景に、葵を除いた皆が絶句する。

「そして、破壊したモンスター一体につき攻撃力を100ポイントアップさせる。よって、ガーランドルフの攻撃力は2900になるわね。それにしても、こんな簡単にかかってくれるなんて……ふふ、馬鹿通りこして、パートナーに同情するわよ」

クスクスとぞっとするほどの満面な笑みを浮かべながら、嘲笑う葵さんは酷く恐ろしい。しかし、その反面、今のコンボは綺麗に決まり過ぎている気がする。おそらく、相手が勝負に勝てると慢心するように誘導していたからだと思うがその手口が鮮やか過ぎて、畏怖させする。

「こ、こうなったらリビングデッドで……」
「無駄よ。リリーサーを生贄にした儀式モンスターが存在する限り、相手は特殊召喚を行えない。既に詰んでるのよ、あなた達は」

そんなっ⁉︎と先ほどまで威勢がよかったジュンコさんが力無さげに項垂れる。ここまで徹底的に追い詰められれば、こうなるのは必然かもしれないがそのやり口が中々に容赦が無い。
初めて会った時の穏やかな雰囲気の葵さんと、今の冷酷かつ非情な雰囲気を纏う葵さんはどちらが本物なのだろうか疑問に思う。


◆◇◆

華蓮と葵はデュエル後、早々と自室に戻り一息ついていた。
デュエルの結果はというと、あのままガーランドルフの直接攻撃が決まり、華蓮たちの勝利。一枚だけ伏せられていたカードも案の定、『リビングデッドの呼び声』だった。

そして、三人は今日のデュエルのことは一切の口外禁止且つ、華蓮に対し一切の言及を禁止する事を葵さんが取り付けた。彼女曰く、敗者に口無し。そして、権利無しとの事。
あの冷酷な雰囲気のまま言われたので背筋に大量の冷や汗をかいたのは言うまでもない。

もっとも部屋へと戻った頃には穏やかな笑みを浮かべおり、デュエル中に感じた威圧感など微塵もない。

「ふふ、それにしても大変な1日だったわね……、レンカさん?」
「はい……」

「……あ」
「ふふ、やっぱりね」

気付いた時には既に遅く、そして肝心の葵さんも愉しそうに笑みを浮かべ、こちらを見ていた。

「さて、キリキリ吐いてもらいましょうか、"漆黒の竜使い"さん?」


やはり、バレてしまうみたいだ。
 
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