知っててやっている
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第四章
実際にだ、秀弥のところに来るとだった。
さりげなく流し目を見せたり髪の毛をかき分けてだ、うなじも見せて。
時には、それが出来る状況では胸元や脚を見せた。そして体育の時は。
彼の目の前にいるとだ、半ズボンの後ろをなおしてみせた。時折何気に彼を見ることもした。
そうしたことをしているとだ、彼の視線は。
日増しに強くなってだ、それでだった。
彼の噂をだ、友人達から聞いた。
「何でも秀弥君ね」
「あんたのこと色々聞いてるみたいよ」
「前よりもかなり強く意識してるわよ」
「それでね、本当にね」
「もう我慢出来なくなってるみたいよ」
「我慢出来ないっていうと」
どうかとだ、理央も問うた。
「やっぱり」
「そう、告白ね」
「告白を考えているのよ、彼」
「だからね、もうちょっとさりげなくしていたら」
「来るわよ、彼」
「いよいよね」
「そうなのね、わかったわ」
それならとだ、理央もわかった顔で頷いた。
そしてだ、そのうえで言った。
「じゃあその時は」
「待ちに待った、だからね」
「その時はいいわね」
「冷静によ」
「冷静に受け止めるのよ」
彼のその告白をというのだ。
「間違っても有頂天にならない」
「クールに徹するの」
「ここで飛び跳ねでもしたら負けよ」
「あんたのね」
「負けなの」
負けと言われてだ、理央はきょとんとなって返した。
「私の。そうしたら」
「そうよ、あくまで自分を出さないことよ」
「その本音はね」
「本音を出さずにね」
「クールでいるの」
「自分が告白出来なくてもよ」
それでもというのだ。
「相手に告白してもらうのならね」
「受け止めてあげるのよ、落ち着いてね」
「だからいいわね」
「笑顔はいいけれどとことんまでは喜ばない」
「そうするのよ」
「わかったわ、けれど本当に」
心臓の鼓動が高まるのを感じつつだ、理央は言うのだった。
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