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黒魔術師松本沙耶香 魔鏡篇

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16部分:第十六章


第十六章

 そのうえで連絡をしてである。美女をこの部屋に呼んだのだ。この美女は。
「それでなのですが」
「お金ね」
「はい、お金です」
 この話だった。つまりこの美女は所謂娼婦である。大塚はデートクラブのメッカである。沙耶香はそのデートクラブ嬢を買ったのである。
 そのうえでだった。話をするのであった、
「それは」
「勿論あるわ」
 返答はこう決まっていた。
「当然ね」
「はい、それではすぐに」
「ここに」
 言うとすぐにだ。右手に札を出してきた。五枚ある。
「これでいいわね」
「五万ですか?」
「フリータイムだからよ」
 だからだというのだ。
「それと残りは」
「残りは」
「貴女が取っておくといいわ」
 彼女に対しても妖しい笑みを向けてみせた。そのうえでの言葉であった。
「是非ね」
「いいのですか?それは」
「構わないわ。私にとってはお金は大したものではないわ」
「資産家だとは聞いていますが」
「資産?そうね」
 そう言われるとまた笑ってみせたのであった。
「そうかもね。言われてみれば」
「お金にも時間にも困ってはおられないと」
「仕事は一つすればそれだけで相当な報酬が手に入るから」
「報酬ですか」
「私にとってはそうしたものよ」
 こう話すのであった。
「それはね」
「お金が大したものではなくですか」
「少なくとも何かをするのに不自由することはないだけはあるわ」
「何か羨ましいですね」
「いえ、そうでもないわ」
 しかしだった。ここで沙耶香の言葉が変わった。
「お金には困っていなくても」
「それでもですか」
「そうよ。賭けるものはあるわ」
 美女に対する言葉である。
「それはね」
「賭けるものですか」
「そうよ。人は誰でも生きる為に何かを賭ける」
 沙耶香の住む世界ではとりわけそうなのだった。彼女のいる世界は表の世界とは違う。魔の世界に住む彼女にとって賭けるものは。
「命である場合もあるわ」
「命ですか」
「そうよ。さて、話はこれで終わりよ」
「はい」
「いいかしら、今から」
 美女に対する誘いの言葉であった。
「楽しみましょう」
「はい、それでは今から」
「こっちに来て」
 相手を誘うのだった。
「さあ、今からね」
「そちらにですか」
「そうよ、私のところに来て」
 また誘う沙耶香だった。
「こちらにね」
「では」
「貴女のその全てを楽しませてもらうわ」 
 その自分のところに来た美女の服に手をかけた。そのうえで少しずつ脱がしていく。それからベッドの中に入れてである。その全てを心ゆくまで楽しむのであった。
 情事はベッドの中だけではなかった。沙耶香は浴室の中でも彼女を愛するのだった。立たせた彼女を後ろから責めていたのだ。
 
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