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ソードアート・オンライン~連刃と白き獣使い~

作者:村雲恭夜
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第二話 ホルンカの木々伐採

依然、パニックになっていた«始まりの街»から出た俺とクレイは、EXP回収の意味でも少し危ない道(と言ってもβテスター達が知っているがレベル差のあるモンスターがポップする所だが最短の近道でもある)を強引に突破し、他のプレイヤーより早く二つ目の中立地帯«ホルンカの村»にたどり着いた。
「……まぁ、逃げようと思えば楽だな」
「何でそんなに平気そうなの!?」
絶叫に近い叫び声を上げたクレイは、地面に座り込んでいる。
「……まぁまぁ、少々レベル差があった方が経験値加算が多く入るし良いじゃねぇか。何かあったら助けるって俺と約束したろ?」
俺は笑いながら言うと、しゃがんでクレイに言う。
「さて、此処には片手剣用のクエスト«森の秘薬»が起動出来る。俺のメインは刀取得の為の曲刀で、サブは片手剣。即ち此処でこのクエストの報酬である«アニールブレード»が欲しい訳だ。«始まりの街»周辺はレベル1が多く存在していたが、このクエストで討伐する«リトルネペント»はレベル3。少々危ない橋を渡った俺達のレベルは2、数を狩れば今日中にでも後2程上げられるだろう」
俺は言うと、クレイは言う。
「え、それって……とんでもないレアドロップアイテム?」
「ピンポーン、さっすが」
俺は立ち上がると、ニヤリと笑う。
「«アニールブレード»は汎用性で言えばこの村から手に入れられる«ブロンズソード»より高い。強化すれば第四層まで持つかな」
「……因みに、短剣クエストは?」
「存在すらしてないな。自力ドロップしかないね」
「……ええー」
クレイは落胆すると、渋々立ち上がる。
「……仕方無い。少し、頑張って見ますか」
「あ、因みに、«リトルネペントの胚珠»だがな、この村で売ればかなりコルが手に入る。裏データだが、恐らく機能してる筈だ」
俺はそう言うと、クレイに言う。
「じゃ、いっちょ行きますか。«森の秘薬»クエスト、起動しに!」
「おー!」
拳を空に向けて、俺たちはクエスト起動のNPCの待つ民家へと足を進めた。



«リトルネペント»は、花付きと実付きの二つに別れている。このクエストのアイテムである«リトルネペントの胚珠»をドロップするのは花付きの方。出現率は驚くことに当時1パーセント以下。改変されていないならば、そのままだろう。
と言う絶望的数字を敢えて言わなかった俺は、後に打ち明ける事で彼女の怒りを買うのだが、それはまたの機械に。
「ゼリャァッ!!」
曲刀剣技«リーバー»を放ち、鬼神が如く«リトルネペント»を狩っていく俺に対し。
「い、いやぁああああああっ!!!」
クレイは«リトルネペント»を前にして逃げ回っていた。
「おーい、狩らないといつまでたっても終わらねぇぞー?」
「そんなこと言ったってー!!!」
ヤレヤレと思いながら、俺はクレイに指示する。
「クレイ、此方に来い!」
俺は叫ぶと、此方に走ってきたクレイは必死になって叫んでいる。敢えて聞こえない振りをした俺は、クレイが通りすぎたのを切っ掛けに、曲刀を«リトルネペント»達の車線上に真横に構えて力を込める。そして数秒後。
『ギギィッ!?』
曲刀を通りすぎたネペント達は次々に切り裂かれていき、HPを全損していく。ネペント達は共通として、縦から茎に攻撃して切り裂く他、横からの斬撃に弱い。データ通りで助かったと思いながら、俺はクレイの方を見ると。
「……もぅやだかえりたい」
泣きながら地面に座り込んでいた。



パーティープレイ続行中だが、クレイが白旗を上げたために俺は一人黙々と伐採作業を行っていた。パーティーは解散していないため、クレイにも経験値加算がなされるものの、俺の方は疲労が溜まりまくっていた。とは言え、クレイに手伝わせるのも非常に厳しいため、早く終わらせる為にも伐採作業を続ける。しかし、既に小一時間が経過しており、花付きは出現せず、総伐採個数は百を軽く越えている。こういう«リアルラック依存»クエストでは、如何に粘れるかが鍵となる。
「ドリャアッ!!」
何百回目の叫びと共に、«リトルネペント»を切り裂くと、俺の聴覚に軽やかなファンファーレが響き、金色の光が体を包む。俗に言うレベルアップだ。百を軽く越えている«リトルネペント»を伐採していれば、嫌と言うほど経験値が溜まり、レベルアップするのも当然と思えるようになる。
ともあれ、既に規定のレベル4まで上がっているので、火力は上がっている。とは言え、ステータスタブは一切開かずに討伐しているため、未だレベル2火力のままなのだが。
と、するとクレイが言う。
「クウトー、大丈夫ー?」
「平気だ。まだ無理だったら参加しなくていいぞ」
「ううん、此処まで長い時間見てたら平気になってきたから。行こう?」
「よし、行くか」
曲刀を構え直し、再湧出したネペント狩りを始めた。



十五分程立つと、クレイもかなり立ち回りが変わり、ヒットアンドアウェイが上手くなってきていた。俺も俺で慣れが必要だったこの世界に対応できてきたらしく、自分がしたいと思う行動が出来る様になっている。
そして遂に。
「クウト!」
クレイが叫ぶと、背後にモンスターの湧出が確認できる。«乱獲»で経験値は相当加算されて二人とも既に5。周りが見たならばβテスターに間違えられるだろう。それは置いとくとして、敵対していたネペントを葬り、背後を向くと、«花付き»が出現していた。
「«花付き»!」
クレイがとびかかろうとしたとき、俺はクレイの腕を掴む。
「待て、«実付き»も居んぞ」
木々に隠れていて見にくいが、ネペントの影が存在していた。気付けたのはスロットに何気なく入れて熟練度が上がった索敵スキルのお陰だ。程なくしてクレイも視認したらしく、どうする?と行った表情を見せる。クエスト用と売り用で2つ手に入れて置きたいので、普通なら«実付き»は無視する所だがーーーー。
「«花付き»を頼む。俺は«実付き»を」
「ん、了解」
此処は敢えて死地に体を渡して活路を見出だす。二つ目を手に入れる為にも。
「カウント3で行くぞ。3……2……1……!」
カウントゼロで走り出し、俺は«実付き»を、クレイは«花付き»を倒しにいく。但し、俺のは少々死亡率が高いが。
「消えとけっ!!」
ネペントが俺を感知し、ツタを放ってくるが、それらを木々を蹴って避け、正面に移動する。
「オオオオオッ!!」
曲刀を構え、剣技を発動する。
曲刀単発垂直斬り、«リーバー»。
猛然と地面を蹴り、発光する刀身をネペントの捕食器の上で揺れる丸い«実»に叩き付ける。
パアァァン!
と、凄まじい破裂音と共に«実付き»も死んだが、俺の回りに煙と臭気が漂う。
そしてすぐに、このエリアにポップしていたネペント個体が煙に引き寄せられ現れた。総勢約三十。
「……」
曲刀を構え、ネペントを見据える。そしてーーーー。
「ハアッ!」
地面を猛然と蹴り、ネペント達に突進する。俺の全神経を、目の前のネペント達に集中した。



それから約五分後、«花付き»を狩ったクレイがアシストに来てくれたお陰で、残りHPが二割を切っていた俺は事なきを得た。しかも、多少無茶したお陰で、二つ目を手に入れる事が出来た。ただ、クレイが俺に正座させて説教たれたのは痛い思い出だ。
それから俺達はクエストの民家へと足を運び、胚珠と引き換えに«アニールブレード»を、そしてもうひとつの胚珠をかなりのコルへと変換した。暫くはこれで食いしのげる筈だ。
「それにしても……」
道具屋の建物から離れて宿屋に入った俺はクレイに言う。
「プレイヤー達がかなり苦労していると言うことを理解した日だったな……」
「当然だよ。手に入れたいものは自分で手に入れる。これがプレイヤーの共通理念だからねー」
フフン、と得意気にクレイが言う。
「何でも創造出来るGMとは訳が違うの。その苦労を得て手に入れる武器は愛着が沸くものよ。でも、GMはその苦労を知らないから愛着が沸かない。つまり、私達とGMで違うところは、武器を愛せるか愛せないかの違いで、武器の使い方を上手くするのよ。貴方も、今回ので«アニールブレード»に愛着が沸くと思うよ」
「……そうだと良いな」
俺は微笑むと、クレイに言う。
「明日からは迷宮区画の近くの街に移動する。レベル的にも問題無いだろうし、構わないだろう?」
「うん。でも、今日みたいな無茶は禁止だよ、クウト。約束は守ってよ?」
「分かってる。無茶はしないさ」
俺は言うと、装備を外して言う。
「それじゃ、お休み」
「うん、お休みなさい」
こうして、俺達はデスゲーム初日を生き延びた。 
 

 
後書き
«森の秘薬»クエです。
今回、多少危険な道でレベルをひとつ上げ、更にネペント狩りでレベルをあげる。……レベル5だよ二話で。ネペント狩り怖いな。因みにコペル死亡確定。
さて、今回のヒロインのクレイは、狩黒で言うミザールの立ち位置なんですが、彼女の場合根本から設定がはっちゃけています。ロリやら色々と。有り得ない事になっていますので設定公開を楽しみにしててください。
では次回は時間を飛ばしてプログレ一巻の話に移ります。お楽しみに。 
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