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黒魔術師松本沙耶香 天使篇

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24部分:第二十四章


第二十四章

「貴女とここでね」
「それで来られたのですか?私の夢の中に」
「第一の目的はそうよ」
 こう妖しい微笑みのまま述べるのであった。
「最初はね」
「ではこれから」
「さあ、いいかしら」
 さらに囁いてみせる。
「貴女としては」
「御願いします」
 そしてこれが亜由美の返答であった。
「私を。夢の中でもまた」
「現実に愛するのもいいけれど」
 亜由美を後ろからゆっくりと抱きながらの言葉である。
「夢の中で愛し合うのもね。これもまた」
「いいのですか」
「心で味わう快楽よ」
 それであるというのだ。
「まさにね」
「心で味わう快楽」
「さあ、楽しみなさい」
 沙耶香はまた言ってみせた。
「このまま。好きなだけね」
「はい・・・・・・」
 亜由美はこくりと頷いて沙耶香のその言葉を受ける。そうして夢の中でその快楽を浴びるのであった。
 彼女が夢の中で服を脱ぎ捨て恍惚となっている時。沙耶香はその横で既に服を着ている。そうしてその黒い服の姿で満ち足りた顔で身体を起こしていた。
 そうしながら言う言葉は。
「素敵だったわ」
「私がですか」
「ええ、そうよ」
 彼女に対する言葉であった。
「とてもね。素敵だったわ」
「そうですか。そんなに」
「肌を合わせるごとに素敵になっていくわ」
 そしてこうも彼女に言うのであった。
「その度にね」
「そうでしょうか」
「自分ではわからないのよ」
 それはだというのだ。
「自分ではね。ただ」
「ただ?」
「その上気した顔は」
 今の亜由美の顔を見てである。そのうえでの言葉であった。
「何よりの証拠なのよ」
「私の顔が」
「その紅に染まった顔がね」
 それがだというのだ。
「それじゃあ明日はね」
「はい、明日は」
「全てを終わらせるわ」
 こう言って夢の中から姿を消した。亜由美はその中に眠っていく。彼女が目覚めた時沙耶香はいなかった。そして最後の日になった。
 沙耶香はその日ずっと忍の中にいた。そこから待っていた。相手をである。
 やがて一人の男が来た。長い黒髪を後ろで束ねており剣の如く鋭く細い目をしている。顔は痩せ何か剣めいた鋭く刺々しい印象を与える顔をしている。服は灰色でありそのスーツがまるで死霊の服に見える。背は中背である。その男が忍に近付いてきたのである。
「昨日見ていたわ」
「わかっている」
 それはもうわかっているというのである。相手もだ。
「もうな」
「目の中にいてそこからずっと見ていたのね」
「あの者達は使える」
 彼はまずその異形の者達の話をした。
「充分にな。しかしだ」
「私の相手はできなかったわね」
「貴殿の力はそこまでだというのだな」
「私の名前は知っているかしら」
「その姿と顔だけで充分だ」
 男はこう沙耶香に告げてみせた。
 
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