八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第四十二話 決勝戦その四
「それで何人も殺されたっていう」
「とんでもない事件よ」
「確か羆嵐っていう」
「そんな名前だったわね」
「冬眠し損ねた大きな羆だったね」
「身体が大き過ぎて穴に入られなかったのよ」
冬眠のその穴にだ。
「それで冬眠出来なくて」
「冬でも出ていて」
「村を襲ったのよ」
「それで何人も殺されたって」
「北海道じゃ知らない人いないらしいわよ」
そこまで有名な事件だというのだ。
「あそこじゃそういう話もあるのよ」
「羆って怖いね」
「ええ、ツキノワグマと違うのよ」
「ツキノワグマでそんな話聞かないね」
「そうでしょ、絶対にね」
ツキノワグマはとても羆程大きくない、八条動物園にどちらもいるけれど双方を見比べるとよくわかることだ。
「だって小さいから、ツキノワグマって」
「そうだよね」
「確かに強いけれど」
「羆程じゃないんだよね」
「そう、それで羆が有名だから」
それでというのだ。
「あの人の仇名にもなったのよ」
「羆みたいに強い?」
「そのことからね」
「荒熊なんだ」
「ご本人嫌らしいけれど」
「そうだろうね」
流石に熊と仇名されてはだ。
「熊なんてね」
「ええ、けれど本当にその強さは」
「熊なんだ」
「羆みたいなのよ」
「じゃあ今までの相手の人で」
「一番かもね」
さっきの準決勝の娘よりもというのだ。
「最強かも知れないわ」
「決勝の相手に相応しいんだ」
「そう言っていいわね、だから」
「決勝だけあって」
「一番激しい試合になるわ」
これが池田さんの見立てだった。
「絶対にね」
「ええ、私達もネ」
「そう思うあるよ」
ここであらたにだ、二人の声がした。僕はその独特の喋り方を聞いて聞いたその瞬間に声の主が誰かわかった。
それで声の方を見るとだ、予想通りだった。
ジューンさんと水蓮さんがいた、その二人がさらに言って来た。
「あの相手強いヨ」
「これまでで最強あるな」
「それで近くで観ようと思って来たけれド」
「激しい闘いになるあるよ」
「そうだね、それで二人も」
僕はジューンさんと水蓮さんにも言った。
「来たんだね、近くで観に」
「そウ、いよいよって思っテ」
「来たあるよ」
また僕に答えてくれた。
「決勝だからここで勝てば優勝ネ」
「そうなるあるな」
二人もこのことはわかっていた。
「けれど相手は強イ」
「観る方も白熱するあるよ」
「そうね、それにしても二人は」
池田さんはジューンさんと水蓮さんの姿を認めて言った。
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