ドリトル先生と森の狼達
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第七幕その九
「プライドがあるからね」
「誇り高いっていうんだね」
「そうだよ」
その通りとです、狼さんはトミーに答えました。
「だって『おおかみ』っていうんだよ」
「大きい神だね」
「僕達の語源はそれだからね」
「神様と言われるだけの誇りがある」
「そう、それでね」
それでだというのです。
「僕達は自分達のプライドを汚す様なことはしないよ」
「そうだね」
「そう、嘘を吐くことは狼にも劣る行為」
プライドを汚す行為に他ならないというのです。
「そんなことは絶対にしないよ」
「誇り高い狼」
「それはどの狼でもそうだね」
王子もトミーもお話するのでした。
「プライドが高くてそれを大事にする」
「言うならば騎士か武士だよね」
「武士、いいものだよね」
武士と聞くとです、狼さんはさらに言いました。
「ああなりたいよ」
「本当に君達は誇り高いんだね」
「それもいい意味で」
「それで嘘も言わないのなら」
「いいことだね」
「そう、嘘を言わないことは絶対だから」
狼さんのこの言葉は変わりません。
「君達を襲うことは絶対にないから」
「それはわかるよ、君のその目を見てもね」
先生も言うのでした。
「わかるよ」
「信じてくれるんだね」
「うん、目がきらきらしているからね」
「嘘を吐く動物じゃないっていうんだね」
「そのことがわかるよ、だから君の言葉を信じさせてもらうよ」
「有り難う、あと先生もね」
狼さんはここで先生にも言うのでした。
「そうだよね」
「僕も?」
「そう、先生も嘘を吐かないよね」
狼さんは先生も嘘を言わないと指摘するのでした。
「そうしたことは」
「そう、先生は正直だよ」
「とても正直で誠実な人だよ」
「約束は絶対に守ってくれるし」
「いい人だよ、とてもね」
動物達がまた狼さんにお話します。
「絶対に嘘を言わないから」
「人を騙すことをしない」
「そうした意味でも紳士だよ」
「本当のね」
「スポーツはしないけれどね」
紳士の嗜みであるそれは先生には縁がありません。お散歩や登下校に馬に乗ること位しかスポーツ的なことはしません。
「こうしたフィールドワークはするけれど」
「それでもね」
「スポーツはしないんだよ」
「そうしたこととは無縁でね」
「動きも鈍いけれどね」
「ははは、そのことはもう言われるまでもないよ」
一目でわかるとです、狼さんも笑って答えます。
「先生は身体を動かすことは苦手だね」
「子供の頃からね」
先生は少し苦笑いになって答えました。
「何をやってもね、ビリだったよ」
「走っても跳んでもだね」
「投げたりしてもね、だから子供の頃から本ばかり読んでいたよ」
それが先生の少年時代であり学生時代でした、とかく本ばかり読んでいて身体を動かすこととは縁がありませんでした。
「今もだけれどね」
「じゃあ先生は今も青春なんだね」
「読書ばかりしているからかな」
「うん、そう思うけれどどうかな」
「そうなるかな」
先生は狼さんの言葉を受けて首を少し傾げさせて応えました。
「もうそんな歳じゃないけれど」
「いやいや、青春は年齢じゃないじゃない」
「そういう問題じゃなくてだね」
「自分が青春だと思うからこそね」
それ故にというのです。
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