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DIGIMONSTORY CYBERSLEUTH ~我が身は誰かの為に~

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オープニング
  Story3:“EDENの黒い怪物”

 
前書き
 
大変遅くなってしまい、本当に申し訳ありません。
これも全て、大学のテストが予想以上に難しかったからで……はいすいません、自業自得ですね、はい。
  

 
 





 白服を着た幽霊にそっくりな少年―――ユーゴと別れ、テリアモンを連れて白峰の元へと戻っていると、


「き、キャアアアアァァァァァァァァッ!?」


 突如彼女の叫び声が響き渡った。ガラクタ公園には少し距離がある筈だが、これだけ大きく聞こえると言うことは…彼女がしびれを切らして奥に進んでしまったのだろう。
 もしかしたら、俺達を誘い込んだ『ナビットくん』が白峰の方に? いや、最悪先程のクリサリモンのようなデジモンが襲いかかっているのかも……!?


「い、今のって…!」

「俺の知り合いの声だ、急ぐぞテリアモン!」


 そんな考えが頭の中に浮かんだ俺は、テリアモンと一緒に元来た道を走り出した。
 そして、なんだか騒がしい声が聞こえてきた。目の前の角を曲がり、俺の視界に入った物は……


「きゃあきゃあ! なになに、君達!?」


 なんだか嬉しそうな表情を浮かべる白峰と、その周りを円を描くように走る二体のデジモンだった。


「ねぇねぇ、君だぁれ?」

「しゃ、喋ったーーー!? きゃ、きゃ、きゃ、きゃわうぃぃいー♡」


 白峰の周りを走っていた二体の内の一体―――黄色い体の、恐竜とも爬虫類ともとれる、はたまた見方によればカエルにも見えかねないデジモン、“アグモン”が白峰に話しかけた。
 その後ろで、何かの獣の皮を被った一本角のデジモン、“ガブモン”が怖がってる様子で白峰を見ていた。

 白峰はよくわからないが、どうやら二体の姿が可愛いと思えるらしい。いや、可愛いとわちょっと違うだろ、アグモンは“黄色いカエル”って呼ばれるぐらいなんだから。


「あたたたたた、あた、あたしノキア♡ きみの名前は?」

「ボク、『アグモン』っていうんだ!」

「オ…オレは『ガブモン』…」

「アグモンくんにガブモンくんかぁ~。ふふ、へんてこな名前だね~♡」

「へ、ヘンじゃないもん…!」

「キミこそ、ヘンな名前だ!」

「ふ~んだ、ヘンじゃないも~ん! ふふ ♡」


 ………なに、この状況。白峰、あの二体がデジモンだってわかってないのか? なんかナチュラルに自己紹介して、仲良くなってるんだけど。


「ねぇタクミ、あの子がタクミの友達?」

「ん? どうだろう、友達とはまだ言えないかな。とりあえず知り合いではある」


 ふ~ん、と俺の頭の上で納得するテリアモン。ってあれ、いつの間に頭の上に?
 まぁいいや。とりあえず、白峰のところへ行こう。和んでるとこ悪いが、こちらも用があるんだ。


「白峰!」

「あ、タクミ!? もー、どこ行ってたの!?」

「わぁ!? ま、またこわい人?」

「追いかけまわされるのはこりごりだ…逃げろー!」


 俺が白峰に声をかけながら近づくと、アグモンとガブモンは表情を曇らせて後退りし始めた。


「はい? ってちょッ!」

「ちょ、ちょっと落ち着いて! このコ、友ダチだから…!」


 俺と白峰は二体を止めようとするが、制止の声を振り切って二体はその場から逃げるように走り去っていった。


「あ~あ、いっちゃった…きみが来なければ、あのカワイイ物体Xを愛でてられたのに!」

「俺のせいかよ!?」

「そうよ、きみが急にあらわれたからあのコたちはコワがって―――…ん…?」


 ……? ど、どうしたんだ…? 急に嵐(しらみね)が止まったぞ?


「か…か…―――」

「か…?」


「カワイイィィィーーーッッ!!」


「わッ!?」

「うおッ!?」


 白峰は叫びだすと、俺の頭の上に乗っかっていたテリアモンを抱き上げ、キラキラした瞳をしてくるくる回りだした。
 そして回るのを止めると、今度はテリアモンの頬をスリスリと頬擦りし始めた。


「なにこのカワイイこ! ぬいぐるみみたいでカワイイし、ぷにぷにしてる~~♡」

「わッ、ちょッ、ま―――」


 ………い、いやね白峰さん、テリアモンが可愛いのは認めるけれど、だからと言って遠慮なしにそういうことするのはどうかと。それに……


「白峰、テリアモンはデジモンだぞ?」

「へぇ、テリアモンっていうのか~。しかもデジモンだったとは……―――って、デジモン!? こんなカワイイ生き物が!?」


 白峰は俺の言葉を聞くと、ガバッとテリアモンから頬を離した。テリアモンはその隙に白峰の手から脱出し、俺の足下まで逃げてきた。


「因みに、さっきの二体もデジモンだぞ?」

「そ、そうなの!? けど…そのデジモンもあのコたちも…悪そうなプログラムには見えないよね…?」

「まぁ、そうだな」

「デジモン、かぁ…あの子達と一緒にいられるならいいかも、デジモン・キャプチャー…」


 ……うん、まぁそう思ってくれるのは嬉しいんだけど、


「ここら辺にはいないが、人や他のデジモンを襲うデジモンもいるみたいだけどな」

「えぇ!? 何それ、超怖いじゃん! そういうの早く言ってよ!」

「とにかく、奥にいる真田と合流しよう。どうやら真田が脱出の術を知ってるらしいからな」

「そ、そうなの!? じゃ、じゃあ早く合流しよ!」


 白峰はそういうと俺の手をとり、奥の方へと歩を進める。白峰から逃れたテリアモンも、引っ張られる俺に置いてかれないように、テトテトと歩き始める。


「わかったから引っ張るな、白峰。急がば回れって言うだろ?」

「そうだけど……っていうか、“白峰”?」

「? お前の名前は白峰だろ?」


 俺がそう言うと、白峰は不機嫌そうな表情を浮かべた。というより頬を膨らませているから、怒っているんだろう。丁度EDENで出会った時のように。


「俺、名前間違えたか?」

「そうじゃないけど……友ダチなんだから、下の名前で呼んで欲しい」

「え? 誰と誰が友達だって?」

「キミとあたしでしょ? 当然じゃん!」

「え…?」

「え…?」


 なにこの噛み合わない感じ、ツイッ○ーじゃないんだから勘弁してくれ。


「ま、まぁ今はその話はいい。とにかく真田と合流しよう」

「あ、ちょっ、ちょっと~!!」


 なんか気まずい感じになったので、俺は話題を変えて奥へと進む。白峰は慌てて俺の後を追うように走ってくる。テリアモン? 今は俺の肩に抱きついてるよ。
 とにかく今は真田との合流だ、そう心に固く誓い、俺は白峰やテリアモンと一緒に奥へと進み始めた。

























 さて、とりあえずかなり奥の方までやってきたんだが……まだ真田の姿は見当たらないな。


「う~ん……」

「…? どうかしたか、白峰?」

「だからノキアだってば! いや、何だかフシギなカンジだなぁ、って思って」

「不思議な感じ?」


 後ろを歩いていた白峰立ち止まって、そう言ってきた。っていうか、名字呼んで怒られるとか初めてだぞ?


「子供の頃に、こんなことあったような気がするんだよね…。きみとアラタとも、会ったことがあるような……」

「それは単にチャットで会ってた、てだけなんじゃねぇのか?」

「ううん、そういイミじゃなくって……あれ? でもそっか…そうかも……」


 おい、結局どっちなんだよ。とツッコもうとしたが、白峰は「なんか、ヘン…」と言って難しい顔をする。
 俺も何か言おうと思い口を開こうとした―――

 次の瞬間、またも視界にノイズが走り、一瞬何かの映像が見えた。


「な、なな、なに今の…!? き、きみも…見た…!?」

「あ、あぁ……」

「ま、またハッキング…!? もう…ホント、なんなの…!?」


 今のが…ハッキング? いや、違う…どっちかというと、あのとき---あの“白い少年”のときと同じ感じがする。
 一瞬だったが……子供が、五人いる映像だった。一瞬だったから、どんな顔をしていたかまではわからなかったが……


「い、行こッ! この先にアラタがいるんだよねッ!? ほら、ねッ!?」

「あ、あぁ……そうだな…」


 少し袖を引かれ、意識を現実に戻す。何故か白峰も同じ物を見たみたいだが…それすら可笑しいよな。電脳世界とはいえ、同じ映像を見るとか。白峰が言ってた通り、ハッキングの類か?
 ……って、白峰が先に行ってしまう。追いかけなければ。そう思って歩を進める。





 ―――この時、俺達は気づかなかった。

 一瞬、EDENのブロックの上に―――あの“白い少年”が立っていたことを。


























「あ~~~!! いたいた~~~~!! ちょっと、も~!?ひとり勝手にいくとか!? どんだけジコチューカマせばよかですか!?」

「ノキア、タクミ…」

「よう、どうかしたか?」

「いや、なんか変な映像見ちまって」

「ん? お前もか?」

「"も"って事は、お前らも?」

「ちょ、ちょっと! 私なしで話進めんなぁー!」


 どういう事だ? 真田まで同じ映像を見るなんて…これは何か―――


「だ~か~ら~! 勝手に話進めんなぁー!」


 地の文まで手を出してくるツッコミスキルとは……!
 俺にツッコミを入れた白峰はそのまま真田の方へと歩いて行く。それに合わせ俺も真田の方へ。


 ―――が、 またもノイズ。しかし…今までと事の大きさが違った。

 空間に、模様が浮かぶ。今まで見たことのない、独特な紋様(エフェクト)。そこから…這い出るような―――白い触手。
 そして全体部分が露わになる。何処かイカのような―――いや、どちらかと言うと…オウムガイのような容姿に、煌めく赤い瞳。うごめくその体は…はっきり言って何処か気持ち悪い。


「…な、なに……これ……」

「何だ、ありゃ…あれもデジモン…?」

「………」


 急に現れたそれを見て、二人が呟く。その表情は、恐怖と驚愕に染まっていた。

 ―――いや、違う。何か、直観でわかった。あれは…デジモンじゃない。
 真田の呟きに、俺はそう思った。あんなデジモンを知らないというのもあるが…何か、質感がまったく違う。

 それと―――この肌で感じる、変な感覚がする。テリアモンやアグモン達とは、全く違う感じだ。


「…まさか、ウワサで聞いた“EDENの黒い怪物”か? データを食い漁ってる、とか言う…?」

「あれが、か…?」


 真田が言ったのは、聞き覚えがある。確かEDENエントランスで、誰か言ってた話だな。
 ……ってことは、マズいんじゃないか? なんか嫌な予感もする。


「お前ら、こっちへ走れ!! 何だかわかんねぇが、相当ヤバそうだ…!“ログアウトゾーン(こいつ)”のロックを解除する! ログアウトして、とっとと逃げるぞ!!」

「あ、あぁ…!」


 モニターを展開して、何やら操作を始める真田。俺は真田の言う通り、急いでそちらに向かう。
 ……が、後ろにいた白峰は、何故かその怪物を見たまま固まってしまっていた。―――まさか…!


「おい、走れっつってんだろ!? グズグズしてんじゃねぇ!!」

「……っ、う…あ………」

「おい!?」

「ダメだ、あいつ腰が抜けてるッ!」


 急いで戻って白峰を助けようと踵を返すが、ヤバい…この距離は、間に合わない!
 そう思ったその時、白峰と怪物の間に―――アグモンとガブモンが現れた。


「き、きみ…たち……!」

「ボクたちが、ノキアを守る!」

「に、逃げて…ノキア!」


 そう言って白峰を庇う二体。その後ろ姿は、必死に守ろうとする気概に溢れたものだった。
 彼らだけに任せる訳にはいかない。ようやく白峰の側まで来ると、頭に乗っていたテリアモンが飛び、床に着地した。


「タクミ!」

「あぁ、あいつらとあのバケモノを頼む!」

「え、ちょッ!? タクミなに言って…! それじゃ、あのコたちが……!」

「今はお前の安全が最優先だ、早く行けッ!」

「で、でも……ッ!」

「とにかく行けッ!」


 そう言って俺は白峰を、倒れない程度に突き飛ばし、あのバケモノに向き直る。後は真田がなんとかしてくれる筈だ。
 ―――とりあえず今は、あのバケモノを止めて真田がロックを解除するまでの時間を稼ぐ!


「アグモン、ガブモン! あいつを止めて白峰を助ける、手伝ってくれ!」

「え…?」

「でも君は…」

「白峰(あいつ)曰く…友達だ。信じてほしい」


 俺がそういうと、二体は俺の顔をじっ……と見つめた後、同時に頷いて前を向いた。


「どういった攻撃をして来るかわからないし、データを食い漁るっていう噂が本当かもしれない。まずは遠距離から仕掛けろ!」

「うんッ! “ブレイジングファイア”!」

「これでも食らえ! “ベビーフレイム”!」

「“プチファイア”!」


 俺の指示で三体が一斉に攻撃を仕掛ける。3つの攻撃全てがバケモノに当たる。

 ―――が、バケモノはまったく怯む気配を見せない。それどころか、ゆっくりとしたスピードで、ジリジリとこちらに詰め寄ってくるではないか。


「き、効いてない!?」

「この、これならどうだ! “プチツイスター”!」


 バケモノの様子に驚くガブモン、少しムキになったテリアモンは更に攻撃を仕掛ける。が、はやり効果は見られない。
 そう思った瞬間、バケモノの目が怪しく光った。


「ヤバい、みんな避けろッ!!」


 俺は反射的にそう叫んだ。三体はすぐさま回避行動をとるが、バケモノから一直線に伸びてきた触手の勢いに負け、吹き飛ばされた。


「テリアモン、アグモン、ガブモン!」

「ど、どうしよう…強すぎるよ…!」

「ボク…なんでこんなに弱いんだ…! ノキアを…みんなを守りたいのに…ッ!」


 吹き飛ばされたガブモンとアグモンが、悔しそうにそう嘆いた。
 確かに、奴は強すぎる。少なくとも、今の実力の彼らでは勝てない…! どうすれば……


「―――よしッ! ロックを解除した、ログアウトできるぞッ! おいノキア、早くッ!」

「で、でも、あのコたちがまだ…!?」

「わかんねぇのか、足手まといはお前なんだよッ! タクミが言ってたろ、今はお前が逃げる方が最優先なんだよ! そうすりゃ、あいつらはどうにでもなるんだ…!」

「……ッ!!」


 必死に頭を働かせていると、突然後ろからそんなやり取りが聞こえてきた。
 振り替えるとちょうど、白峰がログアウトゾーンからログアウトするのが見えた。


「タクミ! ノキアはログアウトした、俺も続く! お前も急げッ、いいなッ!?」

「あぁ! また後で必ず会おう!」

「その言葉、忘れんなよ!」


そう言うと真田はすぐにログアウトゾーンに乗り、ログアウトした。俺も急がなくては…!


「アグモン、ガブモン。タクミが逃げる隙を作るよ、さっきのもう一回!」

「「うんッ!」」

「行って、タクミ…早くッ!」

「ッ……頼むぞ、みんな!」


 起き上がったテリアモンが、アグモンとガブモンに指示を出す。その間に俺はログアウトゾーンに向かって走り始める。これなら逃げきれるか…!?


「いくよ、せーのッ!」


 テリアモンの掛け声と共に、爆発音が響き渡る。振り替える余裕はない、すぐに出なくては…あいつらの苦労が水の泡だ!
 後数メートル、後もう少し……!


「―――タクミッ!」

「ッ!!」


 後少しで届く、そう思った瞬間、テリアモンの声が耳に届いた。そして思わず、顔を振り向けてしまった。
 そこにあったのは、白と黒の配色の触手。それが奴のだとわかるのに、数瞬とかからなかった。

 捕まる、いや捕まってたまるか! あいつらと…テリアモンとまた会うんだ…!
 その思いで、俺は必死にログアウトゾーンへと手を伸ばした。


 しかしそんな努力も虚しく、俺の視界はノイズと共にブラックアウトした―――





『“記憶(ぼくたち)”を……見つけて…!』

























【―警告】

【相原タクミさんの ログアウト処理中 に 予期せぬ エラーが発生 しました】


【ログアウト 処理を続行 できません… … …】

【ログアウト 処理を続行 できません… … …】

【ログアウト 処理を続行 できません… … …】



【… … …ログアウト処理 続行します】



【―――ログアウト 成功しました】

【次回のログインで お会いしましょう】


【EDENは 世界をつなぎ未来をつなぐヒューマンネットワーク『カミシロ・エンタープライズ』が 運営しております】




  
 

 
後書き
 
黄色いカエル:またも彼のネタ。あのサイズでカエルと思える辺り、流石かの喧嘩番長である。

テリアモンは可愛い:異論は認めん、以上。

「え…?」「え…?」:噛み合わない会話、よくあるよね。

ノキアのツッコミスキル:この小説だとノキアは基本ツッコミになってしまう。

デジヴァイスの警告:あれ初見の頃は背中に寒気がしました、マジで。



という感じです。思ったより少ないですね、文字数。
今回の話で、ようやくプロローグが終了します。次回から第1章です。お楽しみに。

?「ようやく私の出番か、長過ぎやしないかい作者くん?」

本当もう、頭が上がらないです。ほんとすいませんでした。でも次回から存分に暴れてください。

?「そうか、それは楽しみだ。早く読者(君たち)にも会いたいしな、フフフ…」

それではまた次回、お会いしましょう。さよなら~
 
  
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