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4.神無異がクトゥルフ神話舞台に行くよ!

作者:クシャル
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過去

 
前書き
「いやはや驚きだよ、あんな深い傷を負ったにもかかわらず••••、傷が閉じかけている。

この調子で治ればすぐに退院できそうだ。」

原「本当ですか⁉︎」

「安静にしていればの話だけどね、昔っからやんちゃしてるからねぇ。

いつだったっけなぁ、前も重傷でね、その時は正直助からないと思ってたんだけど••••、生命力が尋常じゃないレベルだ。

人間とは比べられないくらいの回復力。」

関「失礼する。」

病室の扉を開けて関崎が入ってくる。

原「あっ、関崎さん!」

関「••••今回もまた派手に怪我を負ったな、さてお前たちは仕事に戻れ、俺はちょっと大事な話がある。」

原「は、はぁ••••。」

原木とその他二人の警官は渋々納得し病室を出た。

「••••まあ腰でもかけてくださいな、どこから話しましょうかねぇ••••。」

関「あんたの知っていることを話してくれないか?本人はどうも話したがらないようでね、何時もはぐらかされて終わる。」

前「まず私は彼女の担当医師の前原 千羽(まえはら せんば)といいます。」

関「警視総監の関崎 五郎(せきざき ごろう)です。」

二人は自己紹介を済ませる。

前「彼女に初めてあったのは確か••••14年前、白夜くんが三歳の頃でした。

その頃に幼稚園でね、他の子はみんなそれぞれ楽しく遊んでいるのに彼女だけずっと空を見つめたまま。

遊ぶこともせずたたじっと空を見ていました。

保育士が何度も遊びに誘ってくれていたのですが••••、笑顔を貼り付けてやんわり断るだけ、そしてまた空を見る。

私は気になって週一回その幼稚園に通うようになりました。

そのときは別の仕事をしていたので今ほどは大変ではなかったのですよ。」 

 
ー前原視点ー

前「君は他の子供たちと遊ばないのかい?」

白「遊ぶ必要なんてある?くだらない、つまらない、面倒臭い、だから遊ばない。」

3歳児とは思えない言葉だったね。

私を見るその眼は、光なんてない死んだ眼だった。

白「アンタは俺にかまってて暇じゃないの?それともアンタは時間に余裕のある人間か?

どっちでもいいけれど、俺にかまって時間を無駄にすることもないと思うぞ。」

前「時間か••••、今日はもう仕事が終わったから余裕はあるし、無駄になんてしてないよ。」

白「あっそ、••••アンタ、俺なんかと話していて楽しいのか?」

前「楽しいよ、私はお喋りが好きだからね。」

白「ふーん、アンタは面白い人間だな、くだらないけど。」

前「そうかい?」

白「くだらない、生きてることすら、ここに存在(い)ることすらくだらなくてつまらない。」

その言葉を聞いたときは驚きに満ちていたよ、一体どんな仕打ちを受ければ••••生活をしていればこんな悲しい言葉が出てくるのか、とね。

白「どこに行っても変わらない、満たされることはない。

弱いくせに絶対強者だと思っている馬鹿ばかりはびこる汚れた世界、つまらない世界。

それを嘲笑いながら見下しているあいつら、何が楽しいのかわからない。

満たされることがないのなら何をやっても無意味だ、くだらない。

そんなものだろう?この世は。」

いやはや体が強張ったね、なんと言うか••••カリスマみたいな?人を惹きつける魅力があったんだ。

白「アンタ、時間大丈夫か?夕飯の支度とかいろいろあるんじゃないか?」

前「しまった••••すっかり忘れてた!」

白「••••帰り道には気をつけなよ。」

前「それではまた今度!」

白「来るのかよ、まあ••••いいけれど。」

私は彼女の忠告をあんまり意識していなくて••••。

それよりも夕飯の支度のことで頭がいっぱいでね、とくに気にしていなかったんだ。

その日の帰り道ー

前「ああもう7時だ••••!一人暮らしだから良いけど、暗くなる前には帰りたかったなぁ••••。」

私がもともと一人暮らしをしていたアパートに行くには、必ず旧トンネルの前を横切らなきゃいけない。

その旧トンネルっていうのは、なんやかんや怖い噂が立っている場所でだった。

実際旧トンネルでは血痕も見つかっていたんだ、あとは行方不明になった人も••••。

前「通りたくないなぁ、でも通らなきゃ帰れないし••••ん?」

音が聞こえたんだ、肉を食べるような音が、それに続いてゴリゴリと骨を食べる音も。

次の瞬間、悲鳴とも言えない叫び声がこだましたんだ。

人間のものではない叫び声に、私は驚き半分と好奇心半分で見に行った。

そこにいたのは、食人鬼と呼ばれる怪物が倒れていて、血に塗れた白夜くんが立っていた。

そのときの白夜くんは昼間とはまた違う、冷たい眼をしていた。

まるで死体を物として見るような眼だった。

さっきの叫び声に気がついたのか食人鬼たちがわらわらと出てきたんだ。

数は軽く100は超えていた。

食人鬼は普通の一般人じゃ敵うような相手ではない、世界チャンピオンでも100体の食人鬼を相手に勝てるとは思えない。

それどころか10数体倒せれば良いところだろうね。

食人鬼の姿は本当に恐ろしいもので、屈強な男でも目の当たりにしたら膝が笑って動けないだろう。

それに殺気を放つものだから何もせずに食われるのがオチ。

それでも白夜くんは恐れずにただひたすら食人鬼たちを殺していった、何も持っていない、素手の状態でね。

しばらく放心していた私は我にかえった。

そこには食人鬼の死体と、やはり疲れたのか呼吸を整える白夜くんがいた。

私は怖くなって逃げ出そうとした、けど遅かった。

私の背後には、生き残っていた食人鬼がいたんだ。

前「ひっ••••うわああああああああッッッ‼︎」

何かを切り裂く音が聞こえて、生暖かい何かが顔にかかって鉄臭い臭いがした。

不自然な重みがきて、尻餅をついた。

目を開けて見てみると、肩をバッサリと切り裂かれた白夜くんがいた。

食人鬼の追撃が再び繰り出されると思ったそのとき、痛みをこらえて立ち上がった白夜くんが食人鬼を殺した。

そのおかげで助かったんだけど、何故か悲しかった。

痛いと泣くこともなければ、苦しいと助けを求めることもない。

ただずっと独りでいるような感じだった。

白夜くんの怪我は徐々に回復していた、人間ではあり得ない光景だったよ。

そこでようやく気がついたんだ、白夜くんが人間ではないことに。

それに白く輝く銀色の髪に、血のような紅い眼、おそらく白夜くんは気味悪がられていたんだろう。

あんなの人間じゃない、まるで化物のようだ、とね。

完全に傷がふさがった白夜くんは気を失って倒れた、私は急いで救急車を呼んだ。

その病院っていうのがここで、元は父が働いていたんだ。

父が白夜くんを診てくれたよ、怪我の痕は何もなかったとは言っていたよ。

ただ••••、不可思議な模様が白夜くんにあったんだ。

腹の中心あたりには大きく円があって、まるで閉ざされた眼、その円の周りには禍々しい模様。

入れ墨でも何でもないそうだ。

白夜くんは次の日から何事もなかったかのように、また幼稚園へといつも通り通い始めた。

助けてくれたお礼も言い出せないまま時間が過ぎた。

ある日、父から電話があったんだ、白夜くんが病院へ運ばれてきたと。

私は急いで病院へと向かった。

やっと病室前に着き入ってみると、たくさんのチューブにつながれ呼吸器をつけられて眠っている白夜くんがいた。

父から聞いた話では、黒い髪の少年が泣いていたところをサラリーマンが発見して通報したそうだ。

そこで血だらけの白夜くんが瀕死の状態で倒れていたらしい。

その少年が、神崎 ケイくんだ。

ケイくんもなかなかハードな人生を送っていてね、中学を卒業するまで虐待やいじめを受けていたようだ。

高校生になってからその親が交通事故で死に、そのお金で一人暮らしを始めたそうだ。

ただ、その金を奪おうとしている親戚たちがケイくんに取り入ろうとしたそうだよ。

結局ケイくんは一人ぼっち、そんなとき白夜くんと再会したそうだ。

でも、白夜くんはもちろんのこと、ケイくんまで再会だということが分からなかった。

そりゃそうだろうね、白夜くんがあのとき入院して以来会っていないから。

私はそんな二人に出会って変わったよ、二人は陰で人々を支えてくれていた。

白夜くんなんて何度死にかけたのかわからないほどね。

だから聞いてみたんだ、どうしてそんなことをするのか、とね。

彼女は少し難しそうな、困った顔をして答えてくれたよ。

白『笑っていて欲しい人がいるから、そいつらの悲しそうな顔はもう見たくないんだ。

俺は死なないから••••、ちょっとの間痛いのを我慢すれば、そいつらは毎日笑っていてくれる。

そいつらが笑っていてくれるなら、俺の命なんて喜んでくれてやるよ。

あいつらの笑顔は、俺にとっての幸せだから。

守りたいもんできたから、今度こそ守りたいんだ。

そいつら守れるなら、俺は消えたっていいよ。』

とても優しいけど、それ以上に悲しい言葉だった。

陰で誰よりも頑張ってきた白夜くんが、どうして報われないんだろうと思ったよ。

どうしてこんな幼い子がそんな重いことを、悲しそうな笑顔で言うのか、ともね。




白夜くんは生まれつきあの容姿だから、親やいとこ、親戚までも化物だと恐れたそうだよ。

本人から聞いた話だと、生まれてすぐにコインロッカーに閉じ込められて殺されたらしい。

何度も何度も死んで、今度は別の人に拾われたそうだ。

でもすぐに川に流されたんだって。

また何度も溺死して、やっと岸に這い上がれたそうだ。

そのときは確か••••1歳だったかな?

そこからは自給自足、最初のうちは木の実や虫を取って食べていたそうだ。

走ったりできるようになってからは森のあちこちを巡って、木の実を食べ、ときには森を荒らす動物を狩って過ごしていた。

そのときが2歳、一年が過ぎて3歳になったすぐの頃、猟師に打たれてついに人間の肉体が滅びたそうだ。

そこからは別の肉体に乗り移り、今の状態というわけだ。

しかしその肉体は、本来成長することがない、だから身長もそのままだし老いることも自然に汚れることもない。

それに睡眠も必要としない。

だが成長しているということは、何かあるはずなんだ。 
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