EFFECT
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友人 4-2
魔法薬学の授業が終了し、退席しようと席を立つと背後から「待て」と声を掛けられた。
俺の隣に座っていた少年だ。
「何か用か?」
「ふんっ。用件がなければ声など掛けはしない」
まあ、それはそうだ。俺とてそんな無駄な事はしないだろう。
「貴様、オルフェウスと言ったな。さっきの話だと、薬を処方中らしいが誰に許可を取っている。薬によっては魔法省も出てくる問題になり兼ねないぞ」
「...ふむ。最もな意見だな。訳あって処方中の薬品は明かせないが、危険な物では無い。許可なら爺様にもらっている」
「爺様...?」
「おっと、すまない。普段の癖でな...。ダンブルドア校長に許可をもらっている」
爺様が校長であると話したのは随分と久しぶりだな。リーマスに紹介した以来になるだろうか。
目の前の少年も、あの時のリーマスと同じように青ざめた顔で固まっている。
リーマスと違うのは気絶しなかったくらいか。
「あまり他言してくれないと助かる。いずれは知れ渡るとはいえ、大袈裟にはしたくないのでな。...名前を聞いても差し支えないか?」
「............セブルス・スネイプ」
何だ、今の“間”は。
名乗りたくなかったのなら、名乗らなくともどうこうする気は無かったのだが。それ程まで自分の名が嫌いなのか、それとも、俺に名を知られるのが嫌だったのか...。
授業中の視線とも何か関係があるのだろうか?
スネイプは「他言はしない」と呟いた後、俺より先に教室から出て行った。
さて、次は何の授業だったか...。
次の授業が変身術だと思い出し、別の棟へ移動する途中で彼と鉢合わせになった。
「勝負だ!」
「......」
「こら、無視するな!」
眼鏡の少年。お前は暇なのか?
因みに俺は移動中だと、声を大にして言いたい。
「次の授業、グリフィンドールとスリザリンの混合体制だろう? そこで、お前と勝負だ! どちらが上手く変身術を使えるかどうか!」
「先生が良いと言えば考えてやる」
よくもまあ飽きないものだと関心してしまう。
眼鏡の少年。その変身術の授業があと5分程で始まってしまうと気付いているだろうか? 今から行けばギリギリアウトになる時間だ。
それを知ってか知らずか、少年はそのまま走り去って行ってしまう。
変身術の先生はマクゴナガルだったな。
彼女はどの寮の生徒も平等に扱う事で多くの生徒からも評判だ。その代わり、平等であるが故にとても厳しい事でも有名だ。
遅刻などすれば少なくとも五5点は減点される。
まあ、それは然程問題ではない。問題は、減点分を取り戻すだけの行動を起こさなければならないという事だ。
「...なんとかなるだろう」
「Mr.オルフェウス。遅刻した罰として5点の減点です」
「了承した」
「何か言いたい事はありますか?」
「いいや。先生の授業に遅れたのは事実であるし、それについての言い訳になるような事実も無い。ならばスリザリンの皆には悪いが、その減点を受け入れるしかあるまい」
「よろしい。...では、授業に戻ります」
マクゴナガルは背にしていた黒板に向きを変え、途中であったであろう記述の説明に戻った。
本日の授業は物体の変化。物体を別の物体に変化させるというものだ。
黒板には、それぞれの物体の違いと、それをしっかりと把握する事の大切さが記されていた。
まずはマクゴナガル自らが手本を見せる。
呪文を唱え、傍らのガラス細工の鳥をみるみる間にゴブレットに変えてしまった。
「それでは皆さんもやってみましょう。ゴブレットでなくとも、自分が想像(創造)しやすいと思える物なら何でもよろしい。出来た者には5点を差し上げましょう」
それを聞いて勢い良く立ち上がったのは、他でもない眼鏡の少年だ。
「先生! オルフェウスとの勝負の許可をください!」
「急に何です、Mr.ポッター。そんな事をして何の意味があると言うのです?」
「少なくとも、僕のやる気が出ます!」
ああ...。この少年がジェームズ・ポッターだったのか。ならば、その近くにいる黒髪の少年がシリウス・ブラック。気の弱そうな少年がピーター・ぺティグリューか。すぐ後ろにリーマスの姿もある。
なるほど。噂通り、傲慢な性格をしている。
「Mr.オルフェウス。彼はこう言っていますが、どうしますか?」
「先生が許可すると言うのなら考えてやると既に告げてある」
「では、この結晶の欠片を使って何かを創ってごらんなさい。優れている方に10点をあげましょう」
そう言って教卓に結晶を山になる程ジャラジャラと落とす。
結晶の色は無色透明。欠片と言うだけあって、小指の第一関節程度の大きさしかない。
ポッターが杖を構える。
呪文を大声で唱え杖をリズムよく振ってみせると、沢山の結晶の欠片は白鳥の形に様変わりした。
結晶にはくすみも濁りも無く、蝋燭の灯りを反射させて綺麗に輝く。
ほう...。なかなかだな。
「次はあなたです。準備はよろしいですか?」
残った結晶の欠片を手に取る。無色透明なのは不純物が一切含まれていないからであると分かる。なら、アレを創造しておけばいいだろう。
懐から銀色の杖を取り出し、円を描くように振るう。
欠片は宙を舞い、俺の手の中で渦を巻く。欠片同士を繋ぎ合わせて一つにする。そこに現れたのは赤から青へのグラデーションがかかった結晶の玉。
マクゴナガルが拍手をする中、生徒だけがポカンとしていた。
ふむ。...彼らにはまだコレの価値が分からなかったらしい。
「では、勝負の結果を発表します。ーースリザリンに10点!」
マクゴナガルの結果発表に、グリフィンドールからは溜め息。スリザリンからは歓喜の声が上がった。それを掻き消すような鐘の音が授業の終了を告げた。
...さて、こちらを睨み付けているポッターに説明してやるとしようか。
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