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第三章
「何だ、清原」
「全然打たないじゃないか」
「内角に弱いことは知ってたけれどな」
「徹底的に内角攻めにしたら楽勝だな」
「普通に三振取れるじゃないか」
「扇風機だ、扇風機」
「高い金払って勝った扇風機だ」
巨人ファン以外の野球ファン達も清原をこう評した。
「守備もな」
「ああ、守れなくなったしな」
西武時代はむしろ普通以上の守備だった、だがそれがだ。
「足も遅くなった」
「地蔵だぜ、あれは」
「しかもまだ遊びまくっててな」
「夜の首位打者様は健在だぜ」
「タイトル持ってなくてもな」
それでもだというのだ。
「夜のタイトルは独占だな」
「怪我もしやすくなったしな」
「何で野球選手が格闘選手の筋肉つけるんだよ」
何故か清原は急にそうなりだしたのだ、トレーニングもそうしたものになり筋肉のつき方も格闘選手のそれになっていた。
「鶏のササミとかゆで卵の白身食ってもな」
「それは格闘家だろ」
「野球選手には野球選手の筋肉があるんだよ」
「トレーニングだってな」
「マスコミは何故か褒めてるけれどな」
「パワーを身に着けたとか書いてな」
何故かマスコミ、特に巨人の地元の関東の彼等はだ。
「そんなのまともじゃないだろ」
「野球選手が格闘家になってどうするんだよ」
「筋肉のつき方違うから怪我が余計多くなるぞ」
「それなら夜の遊び止めろよ」
「まずはな」
「桑田はな」
その清原に対して彼はというと。
「ちゃんと野球選手としてな」
「ちゃんと考えてトレーニングしてな」
「そのやり方も考慮して」
「ピッチャーとして」
「煙草なんか絶対に吸わなくて」
特にだ、桑田は喫煙を嫌っていた。その煙を吸うことさえ。それはスポーツ選手としてよくないからと言ってだ。
「酒だってな」
「殆ど飲まないんだよな」
「ワインを多少飲む位で」
「肉類もあまり食べない」
「考えてるな」
「考えて真剣に野球してるよ」
彼はそうだというのだ。
「練習も真面目で」
「それで後の選手も皆桑田見てるな」
「ドラゴンズの立浪とかな」
PL学園での後輩だ、彼は桑田と同じ部屋だった。そのPL学園野球部での頃は。
「色々教えてもらったらしいな」
「みたいだな、それが立浪に大きかったみたいだな」
「野球は何か」
「本当に考えてるんだな」
「それで練習もしている」
「やっぱり違うよ」
桑田への評価はそうなっていた、そして。
あらためてだ、ファン達は彼の野球を総合的に考えてみた。そのうえでわかってきた彼の野球、ピッチャーとしてのそれはというと。
「投げることもいいがな」
「守備いいんだよな、桑田って」
「ピッチャーは五人目の内野手」
「投げ終わった瞬間にそうなるからな」
その五人目の内野手としても、というのだ。
「ちゃんと野球してるな」
「清原なんて守れないからな」
最早そうなってしまっていたのだ、こちらは。
「定位置にいるだけで」
「ボール受けるだけだよ、あいつは」
「ファーストでも守れよ」
「川上かよ」
古い野球ファンが忌々しげにこの名前を出した、何でも打撃の神様とかいうらしい。
「川上は打つだけで守備はやる気もなかったがな」
「ああ、何でもあいつも定位置だけで」
「ちょっとボールがそれたらキャッチしない」
「打球が来てもセカンドに任せて自分はすぐベースに入る」
「そんなふざけた守備だったんですね」
「今の清原がそれだよ」
そうした意味で川上哲治の再来だったというのだ。
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