リリカルアドベンチャーGT~奇跡と優しさの軌跡~
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Another22 鉄拳制裁
恨めしいまでに照りつけじりじりと首筋を灼く、燦々たる日射し。
足下に広がる細かな砂は踏みしめる度にずぶりと沈み込み、一足ごとに体力を奪う。
下降知らずの気温。
ふわりとも吹かない風。
コロッセオを脱出した子供達は、再び地獄の炎天下の中、砂漠地帯を歩き続けていた。
大輔「暑いな…」
アインス「すまない、水はもうないんだ」
大輔「いや、もしあってもタケル達にやれよ。一番体力ねえんだからな」
チラリと見遣れば、太一の手の中で浅く呼吸するコロモン。
スカルグレイモンに進化したせいでコロモンはエネルギーを使い果たしてしまっている。
早く休ませてやらなければ。
空「あっ…っ、太一、あれ!!」
空が太一の服をひっぱり前を向かせる。
その先には何と、巨大なサボテンがそびえ立っていた。
パルモン[私もあんな大きなサボテンになりたい!!]
パルモンがうっとりとサボテンに見とれる。
あれだけ大きければ、さぞや広い日陰が出来るだろう。
涼を得ようと、子供達は一目散にサボテンの根元を目指して走った。
大輔とアインス、そして2人に止められたタケルを除いて。
タケル「何で行かないの?」
アインス「よく見ろ高石。あれに影がないだろう?」
タケル「あ、本当だ」
大輔「ちゃーんと確認しないとな…」
合流すると力尽きたように砂地に腰を落とす子供達。
そんな子供達を呼ぶ声がした。
ゲンナイ『選ばれし子供達よ』
全員【ん?】
聞き覚えのある声がした方を見遣る。
サボテンが消えた場所、砂が取り払われた下から見覚えのあるレンズ。
そして見覚えのある赤い服が現れた。
ゲンナイ。
タグと紋章の存在を教え、子供達をサーバ大陸へ導いた存在。
全員の目つきが鋭くなった…が、それは一瞬。
ズタボロのゲンナイに全員が目を見開いた。
大輔「…取り敢えず久しぶりと言っておくよゲンナイさん。」
アインス「何故そんなにズタボロなんだ?」
ゲンナイ『あー、それはじゃな。』
はやて『大輔さーん』
グシャ。
ゲンナイを踏み潰しながら現れたのは、はやてであった。
大輔「はやて!!」
アインス「主…」
はやて『ヤッホー!!大輔さん!!アインス!!滅茶苦茶久しぶりやな!!』
ルカ『お久しぶりです大輔さん。はやてさん、ゲンナイさん踏んづけてますよ。』
一輝『別に構わねえだろうが』
大輔「うわあああ…懐かしいメンバーが一杯。それにしてもお前達がいるってことは…」
ブイモン[ゲンナイさんフルボッコしたのはお前等か]
フェイト『ううん、私達じゃなくてやったのはなのはとユーノ。ゲンナイさん、また仕事サボろうとしたから天誅を下したんだって』
大輔「またか、懲りねえ爺だ」
アインス「恥を知れ」
絶対零度の視線をやる。
しばらくしてユーノが口を開いた。
ユーノ『大輔さん。こちらの準備はあらかた完了しました。今から僕達と合流しませんか?』
ブイモン[それがよ、駄目なんだ]
アルフ『駄目だってえええええええええっ!!?』
ブイモン[い゙い゙っ!!?]
アルフ『何でだい!!?ブイモーン!!あんたまたフラフラするつもりなのかい!!?』
ブイモン[あ、いや…そうじゃなくて…というか何でお前がここに?]
アルフ『あんたが異様に遅いから心配したんだよ!!合流したくないってことは、あたしよりずっと若くて可愛い使い魔の娘かデジモンと浮気しようってんだろ!!うわああああああああんっ!!!!』
ブイモン[い、いや…そうじゃなくて…]
アルフ『離婚だよ離婚!!』
ブイモン[いいっ!!?]
ヤマト「離婚って…ブイモンは妻帯者だったのか…意外だな……」
ゴマモン[妻帯者って何だ?]
丈「ええ!!?知らないのかい!!?」
大輔「俺とアインスの紋章手には入ってないんだよ」
アリサ『はあ!!?』
太一「と、とにかく!!やい爺、お前の言った通りタグに紋章をはめて敵と戦ったけど、ちゃんと進化しなかったじゃねえか!!それどころかこいつは可哀想に、コロモンに退化しちゃったんだぞ!!!!」
太一が怒りを露わにする。
他の子供達もゲンナイを睨みつけたり不安げな顔をしたり、とにかく彼への不信感を隠さなかった。
ゲンナイ『落ち着きなさい、選ばれし子供達。望むと望まざるとに関わらず、いずれ紋章はお前達の物となる。タグと紋章はお互い引かれ合う性質を持っておるのじゃ』
アインス「一種の呪いのアイテムだな」
空「アインスさん、それ冗談に聞こえないから止めて」
ゲンナイ『アグモンがスカルグレイモンになってしまったわけを話そう……』
太一「わ…け?」
含みのある口調に、太一達が沈黙。
ゲンナイ『例えタグと紋章を手に入れても正しい育て方をしないとデジモンは正しい進化をしないのじゃ…子供達よ正しい育て…げふっ!!?』
賢『それだけじゃあ分からんだろうが。』
ちゃんと具体的な説明をしないゲンナイを賢は踏み潰した。
賢『スカルグレイモンの一件についてはこちらも知っています。正しい育て方についてですが、それぞれ個人差がありますから正確な答えがないというのが現実です。紋章による進化は、デリケートなんですよ。紋章の意味とかけ離れたことをしたりするとか。』
ヤマト「紋章の意味?」
スバル『これから言うこと、皆覚えといてね~。ゴーグルのお兄さんが勇気、金髪のお兄さんが友情、オレンジ色の髪のお姉さんが愛情、小さいお兄さんが知識、テンガロンハットのお姉さんが純真、眼鏡のお兄さんが誠実、そこの小さい人が希望、大輔さんが奇跡、アインスさんが祝福らしいよ』
アインス「祝福…それが私の紋章…」
ティアナ『私達から言えるのは、紋章の意味に合った行動、それからパートナーとの絆や経験値、それらを守ってくれればいずれ進化出来ますよ』
出来るだけ分かりやすく説明してくれたためか、太一達も理解してくれたのだろう。
戸惑いながらも頷いてくれた。
ゲンナイ『こりゃ賢!!お前はいつまでわしの頭を踏んづけとるんじゃ!!わしはお前をそんな冷酷に育てた覚えは…げぼおあ!!?』
ズドオオオンッ!!
抗議するゲンナイを容赦なくぶっ飛ばす賢。
賢『あんたに育てられた覚えはないし、いい加減黙れこの元凶が!!他人に一々災いを齎すな!!!!』
ぶっ飛ばされるゲンナイを見て、何故か太一達は胸がすっとなる感覚を覚えた。
ルカ『まあ、とにかく。迎えを寄越しましたから、太一さん達は3つ目の紋章の入手をお願いします』
大輔「迎えって?トレイルモンか?」
ギンガ『惜しい!!近い!!答えは…ロコモン!!』
全員【!!?】
ロコモン[待たせたな!!]
凄まじいスピードで現れ、砂埃を撒き散らしながら現れたのは何とロコモンであった。
因みに近くにいた太一達は砂を盛大に浴びた。
ブイモン[ゲホゲホ!!ロコモン!!?]
ロコモン[ゲンナイの爺からの指示でな。お前達を紋章のある場所まで案内してやる。乗りな]
大輔「おお、助かる。じゃあお言葉に甘えて…」
全員がロコモンに乗り込む。
乗り込んだことを確認するとロコモンは凄まじいスピードで移動を開始する。
丈「わわっ!!もっと安全運転で…」
タケル「速い速~い!!」
凄まじい勢いで過ぎていく景色に全員が感嘆する。
太一「凄え…」
グウウ…。
全員【ん?】
ブイモン[腹減ったな…]
大輔「お前なあ…」
脳天気なブイモンに大輔は頭痛を覚え始めた。
ロコモン[腹が減ったなら、奥に食堂車があるぜ]
大輔「マジか、んじゃあお言葉に甘えて」
食堂車に向かう大輔達。
食堂車にて料理を頬張る子供達とデジモン達。
アインス「出来たぞ。さあ、食べるといい」
コロモンには消化のいいリゾットを用意し、手が使えないコロモンに食べさせてやる。
食欲はあるのか、コロモンはリゾットをペロリと完食した。
そして食事でエネルギーが溜まったのか、アグモンに進化した。
太一「…アグモン…」
アグモン[アグモンに進化出来たよ太一。]
アインス「よかったな」
太一「ああ…」
ヤマト「それにしてもゲンナイさんと一緒にいたのはお前の知り合いか?」
大輔「はい、信頼出来る仲間です。」
即答である。
大輔達と賢達の間には、強い信頼関係があるのをヤマトは感じた。
これからの戦いは更に過酷になるだろう。
いつまでも大輔達に頼っているわけにはいかない。
早く自分も紋章を手に入れなければと思う。
ロコモンが猛スピードで走っているとまたも巨大サボテンが熱気に揺らいだ。
その根元には影…今度は本物だ。
ロコモン[確かゲンナイの爺から言われたポイントはここだな…お前等降りろ]
子供達がロコモンから降りると、サボテンの頭に鮮やかな桃色の花が咲き始めた。
愛らしいそれがゆっくりと開くにつれ、ミミのタグがちかちかと明滅する。
ミミ「あ…っ」
開ききった花の中から、石盤が光を放ちながら浮かび上がる。
ミミの純真の紋章がタグに収まったのだった。
大輔「純真の紋章ゲットですねミミさん」
ミミ「んー?でも私の正しい育て方って何かしら?」
大輔「変に気負わず、自分らしくしていればいいと思いますよ。」
ミミの紋章を手にした子供達は、新たな紋章を探すべく行動を開始するのであった。
因みに本来の歴史において、太一達の前に現れるはずのコカトリモンの豪華客船は子供達を迎えに猛スピードで突っ走ってきたロコモンから轢き逃げアタックを喰らって星になったのであった。
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