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歌集「春雪花」

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 悩みしも

  聞きてや雨の

   蝉時雨

 愁うや君に

    想い届かじ



 どれだけ悩みに喘いでも、夏の雲間から降る雨の音や、その中に響く蝉の鳴き声は否応なしに耳に入ってくるものだ。

 そんなことさえ悲しく思い、そんな想いを彼へ伝えることすら出来ない今を嘆くのだ…。

 それしか出来ない自分が…惨めになる…。



 流れゆく

  雨雲の下の

   鏡草

 侘しき時に

    色を差しけり



 流れてゆく薄い雨雲…そんな憂鬱な空の下、色取りどりの朝顔が咲き誇っていた。

 彼に会えない寂しさを埋めてくれるような朝顔…今は、この鮮やかな花だけで良いではないか…。

 どれだけ願っても…会えはしないのだから…。



 
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