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魔法科高校~黒衣の人間主神~

作者:黒鐡
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九校戦編〈下〉
  九校戦八日目(7)×決勝戦前のミーティング

無頭竜を潰す為のミーティングを終わってから、蒼太と沙紀による荷物をもらってからトランクを引っ張ってテントに戻ってきた俺。ちなみに先程ホテル屋上にいた連中は、空間切断により真由美達幹部らはテントに行かせて深雪以外の一年女子らを観客席付近に戻した。なので、残っていたスタッフ全員から向けられた興味津々の視線をスルーしてから、トランクに入っている中身を取り出した。

「・・・・コート?」

先程神々しい光景を目の当たりにしたのに、普通に接してくる会長だった。遠慮のない態度でわざわざ俺の脇に来て、手元を覗き込んできたので質問に答えようとした。

「違います。これはマントです」

俺は黒い布地を持ち上げてから、広げて見せた。俺の身長でも地面に引きずられそうな、洋風の長いマントだった。

「そっちも?」

「こっちはローブです」

黒いマントを机に置いてから、今度は灰色の布地を広げて見せたがこちらも引きずりそうなフード付きのローブ。これは元々拠点D×Dにいた魔法使いが、よく使うモノをこちらで使えるように改良したモノだ。それと小さなトランクを開けると、金属で出来たホルスターが二つ出て来た。

「この小さなのは何なの?」

「これは元々IS用武装であるビット系統の武装を入れる為のホルスターです」

「ビット系統?何の武装なのかしら」

会長らや他のスタッフもビット系統と言われても、何の武装か分からなかったので沙紀に見本を見せてもらった。そんでサバーニャになった事で、ホルスターからシールドビットやライフルビットなどが浮いて出て来た。

「ここにホルスターがありますが、ビット系統の武装というのはこういうのなのですよ。防御専門のビットはシールドビットで、攻撃専門はライフルビットやソードビットなどがあります」

「なるほどね、でも魔法じゃないんだからこれは使えないんじゃないの?それとローブにマントは何に使うの?」

沙紀が展開し終えた所で、早速疑問が飛んできたので答えたがこれを魔法のように使用目的のために小型化させたモノ。なので魔法師が念じれば、魔法のように使える事ともしまた試合途中にドウターが現れた時に攻撃が出来るからだ。テントの中を疑問符一杯だったが、深雪と蒼太に沙紀は訳知りな顔で笑うのを我慢していた。

「決勝戦で使うモノですが、間に合ってよかった」

「お兄様、ルール違反にはなりませんか?」

俺らの話について行けない真由美達をスルーして、深雪らは真面目な顔で俺のそう問い掛ける。

「大丈夫さ、無能な大会委員会ではなく蒼い翼がデバイスチェックをすると言っていたから問題無い。それにルールブックには、魔法陣を織り込んだ衣類を着用してはならない、とはどこにも書かれていない。それに試合中、俺は防護服ではなく戦闘服であり防弾防刃防熱に対魔法師用の戦闘服だ。何も問題はないだろう」

深雪らに対する回答を聞いた真由美が頭上に疑問符を追加しながら、俺に訊ねてきたが先程のは見なかった事にしているので、関係ないスタッフらにバレナいように話していた。

「魔法陣を織り込む?」

「古式の術式媒体で、刻印魔法と同じ原理で作動するように出来ています。マントとローブには、着用者の魔法が掛かるような補助効果が組み込まれています」

『ホントはメモリの力をフル活用する為ですよね?お兄様』

『ああ。マントには魔法以外だとホルスターを隠す事で、ローブにはメタルメモリの効果を持つ衣類だ』

「補助効果か・・・・それ自体に特定の術式が組み込まれているのでなければ問題ないかな・・・・」

真由美の視線を受けて、鈴音もさっき見た事を忘れたかのような態度で頷いた。

「ルール上の問題はありません。ルールはそこまで想定していない、というのが正確な所ですが蒼い翼がチェックしても問題はないかと」

「これ以上事故やら問題を増やしたら、大会本部全体の人間を入れ替える事でしょうから。俺は無能な輩だけは嫌いなんでね」

試合中だからまだお祭り騒ぎが出来ないでいるが、決勝戦に進むだけで既に任務完了で新人戦優勝は決まったも同然だ。無理をするなと言われても無理をするし、本気を出すなと言うのなら、力をセーブしておくが果たして三高は俺らのルール通りな人数となるのかな?ルールはモノリスに隠された鍵を受信させる事と、全選手を戦闘不能にさせる事だ。

五十里先輩にマントとローブのチェックを依頼して、俺は最終チェックというより武装チェックをしていた。身体のストレッチもいいが、今回使うのはエレメンツだが飛んでもいいと言った烈だったので、いつ頃空を飛ぼうか悩んでいた。

飛行魔法を使ってはいけないとは書かれていないが、それだとデバイスを何個か使うので風術で飛ぶ事にした。それと五十里家は、刻印魔法の権威として知られているからか、五十里先輩本人も興味を隠そうという事はしてなかった。

「お兄様、タオルをどうぞ」

「お、ありがとう深雪。もしかして魔法でも使ったのか?」

「その辺りはお察しの通りですが、ホルスタービットを魔法として取り扱う事はアイディアとしてはとても良かったと思います」

「ま、アレはエレメンツビットを使うレオだからこそ使えるようにしたブツだ。前方だけなら、マントだけでいいが横は空いているからな」

怪我はした事ないが、もしも怪我をしたとしてもすぐに回復魔法で回復してしまう。自己修復能力ではなく、神の力の一つと言っていい程にすぐ回復してしまう。デメリットが一切ないけど、九校戦は映像を記録されているので例え肉眼では見えない事態や一瞬の出来事があっても、映像記録を分析する事は可能だ。

「それにしても真夏に雪を降らせる事が、もう異常気象なんですよお兄様」

「最近神召喚使ってないからなー、だから少しでも出番を待っているから天空神にお願いして降らせている」

「真夏に雪がパラパラぐらいならですが、余り使われるといつかバレてしまいます」

「分かってるよ、積雪はしないように言っとくから大丈夫。もうすぐ決勝戦だが、地面を滑らせる程積もらせるつもりはない。力も技も制限されていると表ではそうなっているが、俺は手抜きだけはしたくないから今回は少し本気を出す」

そう告げた事で、念話から烈や他の者達からも多少の本気は構わないからと言われた。そして深雪がここにいると何かと不自然なので、沙紀と共に行かせた後ろ姿を見た俺と蒼太。誰にも負けた事はあったとしても、外見人間で中身が神な場合は負けた所を好いている神仏達には見せたくない光景。

だから少しだけでも本気が出せるように、無能な大会委員会は口出し無用とさせた。一方三位決定戦が終わり、決勝戦の使用ステージが「草原ステージ」と発表された。それを聞いた両校の反応は対照的で、三高天幕では歓声を上げる者もいた。

「お前の言う通りになったな、ジョージ」

「ついてるね、将輝」

浮かれて声を上げていたような真似は自制しているが、二人とも笑顔を隠せずにいたがそれについては運勢最悪だと言っておこう。

「後は奴が誘いに乗ってくればの話だが、既に挑発返しを受けたからな。奴の逆鱗に触れたのか?天候を変えるぐらいの力を持っている事など知らない情報だ」

「彼は挑発されて舐められたと思ったんだと思うよ。間違いなく乗るけど、まだまだ彼の本来の力を隠しているかもしれないから要注意だ。遮蔽物がないステージであっても、正面から一対一の撃ち合いが果たしてこちらに運があるかだね」

「後はお前が後衛と遊撃の二人を制圧さえすれば問題はない」

「後衛の方も遊撃も問題はないと思うけど、警戒はするよ。硬化魔法の腕もそうだけど、あの見た事の無いデバイスで様々なエレメンツを使っているからね。エレメンツ使いが、二人もいるとは思えないね。遊撃の選手は・・・・古式魔法を得意としているみたいだけど、名前から見て多分あの『吉田家』の術者じゃないかな。何をしてくるかは不気味過ぎて分からないけど、古式魔法と現代魔法ならスピードの面で現代魔法に分があるからね。遮蔽物が無い草原ステージのメリットがここでも効いているよ」

「特にお前の『基本コード』を使えるというアドバンテージがあるからな」

「残念だけど、新人戦の優勝は向こうに持って行かれちゃったから・・・・せめて、モノリス・コードの優勝は勝ち取らないと」

「ああ、やってやるさ」

と小型偵察機で全てを聞いていた事で、早速データを保存してからメールにしてから織斑一真が持っている携帯端末に送られた。吉祥寺の言葉に、一条は力強く頷いた。一方一高テントでは、激励に来た者達の代表として言った深雪の言葉を聞いた事で、メール画面から視線を戻した。

「障害物がない『草原ステージ』ですか・・・・恐らく相手は厳しくないと思ってますねお兄様」

「渓谷ステージでは、本来の力を少しだけ解放したからなのか。ま、遮蔽物がないからあちらは勝つ気満々なんだろうな」

「何でそんな事まで分かっちまうんだ一真」

「三高テントにて、一条と吉祥寺が小型偵察機がいる中で話していた様子だと報告をもらったからな」

何時の間にとでも思ったらしいが、あちらにないモノを揃えたのがここにある技術でもある。一条家の爆裂は、液体を気体に変化させて膨張力を破壊力として利用する術式である。一条家の人間なら、水蒸気爆発を利用した攻撃はお手の物で、一条にとって渓谷ステージは大量の爆薬がフィールド全域に用意されたとでも思えばいいし、市街地ステージだと水道管が張り巡らせている。

「草原ステージは『爆薬』となる液体がないので、いくら『クリムゾン・プリンス』でも地下水を汲み上げて『爆薬』にする事は出来ない。森林ステージでも岩場ステージでも同じ事だが、草原ステージとなったからこちらに運が向いているとでも思えばいいさ」

一年生が納得するような表情をしていたが、上級生の顔色は曇ったままだった。

「・・・・でも遮蔽物の無いフィールドで砲撃戦が得意な魔法師と対戦しなければならない、っていう不利が無くなる訳じゃないわ」

「織斑、策はあるのか?」

真由美の指摘に続いて、服部が訪ねてきた。副会長から俺に話し掛けてくる事自体が、とてもレアな光景だが俺はあくまで冷静になって返事をした。

「もちろん。目には目を、砲撃には砲撃とね。接近戦となれば、更に勝率が上がります」

「格闘戦は禁止されてるぜ?」

「触れなければ問題ないんで、手はありますよ」

桐原の疑問に俺は少し自信があるかのように、笑ってからレオと幹比古に使い方をマスターしてもらった。特に人間用のホルスターを創ったのは俺だが、本来なら男性隊員が使うヘッドギアを使う事だが生憎とヘルメットを使うのでわざわざホルスターを創造してみた。

いつものメモリを差すが、専用メモリであるホルスタービットメモリを腰周り付近にスロットルがあるので差した状態でマントを羽織った。幹比古には最初からローブにメタルメモリの特性を持つように出来ているので、普通に立っていても魔法攻撃なら加重だろうと動かないようにした。 
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